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JR北海道のキハ40 再来年3月でついに定期運用から引退へ 

清水要鉄道ライター

JR北海道で運用されている気動車「キハ40」が、再来年の令和7(2025)年3月で定期運用から引退することが報じられた。キハ40は国鉄時代の昭和52(1977)年から昭和57(1982)年にかけて888両が製造された車両で、北海道から九州まで全国各地の普通・快速列車を中心に活躍した。分割民営化に際してはJR北海道に157両、JR東日本に219両、JR東海に59両、JR西日本に257両、JR四国に53両、JR九州に142両が継承されている。JR東海では平成28(2016)年3月26日に引退、JR東日本では令和3(2021)年3月12日に普通列車から引退して観光列車で残るのみだ。

函館本線のキハ40(森にて)
函館本線のキハ40(森にて)

北海道においては国鉄時代から多くのローカル線で主力として運用されてきた。北海道に配置された157両はいずれも耐寒仕様で、窓は一段上昇式の小型なもので、二重窓となっている。多くの車両はJRへの移行後にワンマン化と循環式トイレの設置などの改造を行って100番台から700番台に改番され、そのうち84両は屋上水タンク撤去などの延命改造を行って1700番台に再改番された。

キハ40 350番台(長万部にて)
キハ40 350番台(長万部にて)

700番台のうち10両は日高本線用に平成10(1998)年から翌年にかけてエンジン強化などの改造を行って350番台となった。台風による不通で日高本線の一部が運休となると、室蘭本線や石勝線、根室本線などでも運用されたが、老朽化により令和3(2021)年3月12日に引退して廃車となっている。

キハ40 300番台(東室蘭にて)
キハ40 300番台(東室蘭にて)

700番台のうち4両は平成8(1996)年、学園都市線(札沼線)増発のために改造されて300番台となった。改造の内容はエンジン強化や冷房装置搭載、2+2人掛けだったシートの2+1人掛けへの削減、客室とデッキの仕切り壁撤去、ボタン開閉式の半自動ドア化などである。学園都市線が平成24(2012)年6月1日に電化されると運用を失い、301と304はマヤ35形軌道検測車を牽引する動力車、302と303は苗穂運転所の入替車として使われている。

また、平成8(1996)年には札沼線石狩当別~新十津川間のワンマン化用に700番台2両をエンジン強化などの改造を施して400番台とした。他のキハ40と比べると白の色味が違い、扉が萌黄色に塗られるなど外観上の特徴がある。令和2(2020)年4月17日の札沼線北海道医療大学~新十津川間運行終了で引退し、3年間の留置を経て今年4月に解体された。

キハ40 330番台(東室蘭にて)
キハ40 330番台(東室蘭にて)

キハ40の中には宗谷本線の急行「宗谷」「天北」「利尻」で使用するためにエンジン強化やリクライニングシートの設置、冷房化を行ってキハ400形・キハ480形に改造されたものもあった。平成12(2000)年3月11日ダイヤ改正で急行が特急に格上げされると引退し、9両が学園都市線向けに改造されてキハ40 330番台とキハ48 1330番台になった。改造内容は座席のロングシート化、客室とデッキの仕切り壁撤去、ボタン開閉式の半自動ドア化、冷房装置の交換などだ。学園都市線電化後に2両が廃車、5両がミャンマー国鉄に譲渡され、残った331と336が苗穂運転所の入替車として使われている。キハ400の中にはお座敷列車に改造されたものもあったが、こちらは現存しない。

道東 森の恵み(遠矢にて)
道東 森の恵み(遠矢にて)

平成30(2018)年2月には沿線活性化を目的として4両が「北海道の恵み」と称するデザインに改造された。旭川所属の1720が「道北 流氷の恵み」、釧路所属の1779が「道東 森の恵み」、函館所属の1809が「道南 海の恵み」、苫小牧所属の1780が「道央 花の恵み」となっており、普通列車だけでなく観光列車にも使用される。好評であったことから令和元(2019)年9月には苗穂所属の1790が「山明」、旭川所属の1791が「紫水」に改造された。

札沼線で活躍していた700番台(石狩月形にて)
札沼線で活躍していた700番台(石狩月形にて)

北海道のキハ40は平成12(2000)年7月14日の尺別駅脱線事故で750が廃車されたのを除けば、ほとんど欠けることなく近年までローカル線の主力であり続けた。老朽化による廃車は平成30(2018)年から開始され、令和2(2020)年3月14日には後継車となるH100形によって函館本線の長万部~小樽間の全運用が置き換えられてキハ40は撤退した。令和3(2021)年3月12日には宗谷本線旭川~名寄間、石北本線新旭川~上川間、室蘭本線長万部~苫小牧間および室蘭~東室蘭間にもH100形が投入されている。

根室本線で活躍していたキハ40(釧路にて)
根室本線で活躍していたキハ40(釧路にて)

令和4(2022)年3月12日には根室本線新得~釧路間にもH100形が投入され、これによってキハ40は帯広・釧路地区から完全に引退していた。置き換えられたキハ40のうち1700番台で状態の良いものは函館や旭川に転属し、残っていた700番台を置き換えている。これにより700番台は令和4(2022)年3月12日ダイヤ改正で全廃となった。この際、多くの車両が廃車された一方で、首都圏色の1749と1758、国鉄色の1759と1766、「道東 森の恵み」の1799など11両が旭川に転属している。

宗谷色のキハ40 1747(上川にて)
宗谷色のキハ40 1747(上川にて)

H100への置き換えで着実に数を減らしつつあるキハ40だが、現況は以下の通りだ。まず旭川に1700番台が31両配置され、函館本線(滝川~旭川間)、根室本線(滝川~東鹿越間)、石北本線、釧網本線(網走~緑間)で運用されている。また、宗谷本線(旭川~音威子府間)でも代走などで運用されることがあるようだ。所属車両にはキハ400の塗装を復元した宗谷色の1747や釧路から転属してきた首都圏色、国鉄色、「道東 森の恵み」など注目すべき車両が揃っており、引退に向けてこれから熱くなっていきそうだ。

函館本線で活躍するキハ40(札幌にて)
函館本線で活躍するキハ40(札幌にて)

苗穂に300番台が4両、330番台が2両、1700番台が5両配置されている。300番台と330番台は前述のように事業用で、1700番台は函館本線(札幌~旭川間)の普通列車に2両編成で使用される。走行区間は全区間電化されているので、キハ40の強みを生かせているとは言えないが、架線の下を走る気動車という存在も乗ってみる価値はあるだろう。

石勝線運用に入ったキハ40(千歳にて)
石勝線運用に入ったキハ40(千歳にて)

苫小牧には1700番台が6両配置されている。運行範囲は室蘭本線、千歳線、石勝線、日高本線だが、日高本線を除き運用のほぼ全てがH100やキハ150に置き換えられているため、風前の灯火状態だ。これらの線区のうち出会える確率が高いのは日高本線である。

函館本線(右)と道南いさりび鉄道(左)のキハ40
函館本線(右)と道南いさりび鉄道(左)のキハ40

函館には1700番台が15両配置され、函館本線の函館~長万部間および藤城支線、砂原支線で運用されている。H100の配置はないものの、旭川からキハ150が転属してきているため、今後は数を減らしそうだ。江差線を第3セクターに転換した道南いさりび鉄道には9両が配置されているが、カラーバリエーションは全7種類と多彩で、全種コンプリートしても楽しいだろう。道南いさりび鉄道の車両については今のところ置き換え計画がないものの、路線自体の存廃問題が出てきているため、今後が気にかかるところだ。

キハ40(森にて)
キハ40(森にて)

40年に渡って北海道の普通列車において主力として活躍してきたキハ40もあと一年と数カ月で、観光列車を除き引退となる。「北海道の恵み」および「山紫水明」は今後も残ると思われるが、乗車機会はぐっと少なくなるだろう。青いモケットのボックスシートに揺られ、のんびりと北海道を旅することができるのもあと少しだ。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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