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残りわずか3本!3月で引退する地下鉄初のVVVF車 大阪メトロ(旧:大阪市営地下鉄)中央線20系

清水要鉄道ライター
2605Fと2632F

令和7(2025)年大阪万博へのアクセス路線としてコスモスクエア~夢洲間の延伸が計画される大阪メトロ中央線。新型車両・30000A系と400系の導入が進められる一方で、大阪市交通局の時代から活躍する最古参の20系は淘汰が進んでおり、3月に全廃となることが発表されている。

2605 昭和60(1985)年12月16日竣工
2605 昭和60(1985)年12月16日竣工

20系は昭和59(1984)年から平成元(1989)年にかけて6両編成16本、計96両が製造された形式で、中央線と谷町線に導入されたが、後に全編成が中央線に集められて活躍した。現在残るのはわずか3本で、2606F・2632F・2633Fが中央線で最後の活躍を続けている。

2905 昭和60(1985)年12月16日竣工
2905 昭和60(1985)年12月16日竣工

20系はまず昭和59(1984)年3月28日に試作車の2601Fが竣工し、同年12月24日から営業運転を開始。さらに、翌60(1985)年10月から12月にかけて2602F~2605Fの4本が竣工。昭和60(1985)年4月5日の中央線深江橋~長田間延伸や非冷房の旧型車両の置き換えを目的とした導入で、いずれも中央線に導入された。中央線用としては平成元(1989)年6月に2606Fと2607Fが増備されている。

御堂筋線で活躍していた10系 そのデザインは20系にも一部引き継がれた
御堂筋線で活躍していた10系 そのデザインは20系にも一部引き継がれた

2606 平成元(1989)年6月15日竣工
2606 平成元(1989)年6月15日竣工

車体は御堂筋線で活躍していた10系(令和4年7月4日引退)と同様のアルミ合金製で、二段上昇窓を備えた側面はよく似ている。前面デザインについても額縁スタイルを踏襲しているが、角形ユニットを採用したライト周りなどについては一新され、10系よりも新しさを感じさせるものになっている。40年前の電車だけあって側面のスタイルには古さを感じさせるが、一方で正面の顔は今でも通用するデザインだと筆者は思う。

2906 平成元(1989)年6月15日竣工
2906 平成元(1989)年6月15日竣工

一方、機器面に関しては当時最新のVVVFインバータ制御を導入。当時、国内の営業用車両でVVVFを導入していたのは熊本市電8200形のみであり、国内の高速鉄道としては初の実用化であった。しかし、新しい技術ゆえに試験が長引いたこともあって、竣工から営業開始まで9か月かかってしまい、営業開始日では東急6000系改造車と近鉄1250系に先を越されることになった。とはいえ、現代の新型車両のほぼ全てで採用されるVVVFを他に先がけて採用した進取の精神はいつまでも鉄道車両開発史に刻まれるべきものだろう。

2632 平成元(1989)年5月26日竣工
2632 平成元(1989)年5月26日竣工

平成元(1989)年5月から6月にかけては2631F~2639Fが竣工、谷町線に導入された。谷町線では初めての冷房車両であり、旧型車両を置き換えて近代化に貢献した。余談だが、地下鉄で初めて冷房車が導入されたのは昭和52(1977)年開業の神戸市営地下鉄でのことで、大阪市営地下鉄では同年に試作冷房装置を御堂筋線10系の一両に搭載、昭和54(1979)年製造の10系量産車から本格的に導入された。各線の冷房化率100%達成は御堂筋線が平成5(1993)年、谷町線と四つ橋線、中央線、千日前線、堺筋線が平成7(1995)年である。ちなみに営団地下鉄(東京メトロ)が冷房化率100%を達成したのは平成8(1996)年だった。

2932 平成元(1989)年5月26日竣工
2932 平成元(1989)年5月26日竣工

中央線に続き、谷町線の近代化・冷房化にも貢献した20系だったが、平成18(2006)年3月27日に相互直通運転先の近鉄けいはんな線生駒~学研奈良登美ヶ丘間の延伸に合わせて全車が中央線に集められることになり、2631F~2639Fが谷町線から中央線に転属した。これと入れ替わりに中央線の24系9編成が谷町線に転属している。これは主要機器更新に合わせてけいはんな線乗入れ対応改造を施すことで効率化を図るためのものだった。この改造でけいはんな線内の最高速度時速95キロメートルに対応できるようになり、あわせて近鉄線内でのワンマン運転にも対応している。

2633 平成元(1989)年6月12日竣工
2633 平成元(1989)年6月12日竣工

以降、中央線では最大勢力の16編成で主力車両として活躍を続けてきた20系だが、まず試作車両である2601Fが平成26(2014)年8月21日に営業運転を終了。同月25日付で廃車となり、20系に初の廃車が発生した。その後、しばらくは動きがなかったものの中央線への30000A系と400系導入に伴い、令和4(2022)年より本格的な置き換えが始まった。廃車の順番は以下の通りだ。

令和4(2022)年8月1日 2631F

令和4(2022)年9月20日 2602F

令和4(2022)年10月3日 2607F

令和4(2022)年12月8日 2634F

令和4(2022)年12月19日 2635F

令和5(2023)年1月10日 2603F

令和5(2023)年1月23日 2636F

令和5(2023)年6月1日 2638F

令和5(2023)年7月26日 2637F

令和5(2023)年9月19日 2639F

令和5(2023)年9月21日 2604F

また、昭和生まれの20系では最後まで残っていた2605Fも昨年12月28日に緑木検車場に回送されており、このまま廃車となる公算が高い。当編成が廃車となれば、大阪メトロから昭和生まれの車両は消滅し、平成以降に製造された車両で統一されることになる。

2933 平成元(1989)年6月12日竣工
2933 平成元(1989)年6月12日竣工

13編成が廃車となり、現存するのは2606F・2632F・2633Fの3本のみ。中央線生え抜きが1本と谷町線からの転属車が2本残った形である。この3本についても3月までの引退が公表されており、大阪メトロでは2月12日(月・振替休日)と3月20日(水・祝)にラストランイベント・撮影会の実施を予定している。泊車(車両の電源を落とす)体験付きが各回1人、泊車体験なしが各回100人募集で、募集多数の場合は抽選となる。詳細は大阪メトロ公式サイトの方で確認してほしい。

ありがとう20系!中央線20系の引退を記念したさよならイベントを開催します(Osaka Metoro)

大阪の地下鉄の近代化に貢献した20系の活躍もあと2ヶ月と少し、マナーを守った上でお名残乗車や日々の記録をしつつ、名車との別れを惜しみたいものだ。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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