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明治の木造駅舎が残る「カニカニはまかぜ」の停車駅 山陰本線 佐津駅(兵庫県美方郡香美町)

清水要鉄道ライター
佐津駅

日本海で水揚げされる兵庫県但馬地方及び鳥取県の冬の味覚「松葉ガニ」。そのシーズンに合わせて11月から3月にかけて運転される臨時特急がある。その名も「カニカニはまかぜ」。定期運行の特急「はまかぜ」と同じく、大阪と但馬の浜坂を播但線経由で結んでいるが、停車駅が違う。「カニカニはまかぜ」だけは通常の「はまかぜ」が停まらない香美町の佐津(さつ)駅に停車するのだ。

駅舎内のカニ
駅舎内のカニ

佐津は松葉ガニで知られる漁村の一つで、駅から数百メートル離れた佐津集落の中心には20軒近くもの民宿がある。駅舎内にも大きなカニが掲げられていて、カニの名所をアピールしている。佐津には海水浴場もあって、夏も海水浴客の利用があるが、夏季は特急の停車はない。余談だが、佐津駅と隣の竹野駅の間にはかつて「きりはまビーチ」という臨時駅があり、「はまかぜ」の臨時停車もあったが、利用客低迷によって短命に終わっている。

駅舎(ホーム側)
駅舎(ホーム側)

駅舎のホーム側に掲げられた「ようこそ佐津へ」の文字はちょっと懐かしい雰囲気だ。その下には「カニカニはまかぜ」などのヘッドマークに掲げられていたカニのキャラクターの暖簾が垂れ下がっている。

木造の上屋
木造の上屋

佐津駅は明治44(1911)年10月25日開業。当時、山陰本線の和田山~香住間は播但線の一部で、翌年3月1日に山陰本線に編入されている。駅舎は開業時のもので、築112年4か月とかなり古いものだ。北近畿でも近年は駅舎の改築が進んでいるため、佐津駅もいつ建て替えられてもおかしくないだろう。無人化は昭和59(1984)年10月1日のことだった。

ホーム
ホーム

ホームは島式1面2線で、駅舎とは屋根付き跨線橋で結ばれている。跨線橋は昭和55(1980)年11月20日着工、昭和56(1981)年3月17日竣工。跨線橋につながる形で上屋も設けられているが、柱一間隔分で極めて短い。上写真右端に写っているのはかつての貨物ホームの跡だ。

待合室
待合室

ホーム上には木造の待合室が設置されている。建物財産標によれば昭和40(1965)年9月に建てられたもので、駅舎に比べれば新しいがそれでも築60年近い。入口上に掲げられた方面表示も懐かしい雰囲気だ。

口佐津村道路元標
口佐津村道路元標

駅前の片隅には「口佐津村道路元標」がひっそりと残っていた。駅周辺はかつて美含郡(みくみぐん)無南垣村(むながいむら)で、明治の町村制で美含郡口佐津村(くちさづむら)となった。口佐津村は佐津川の河口付近にあることからその名が付いた村で、明治29(1896)年4月1日に城崎郡に所属が変更されている。川の上流は奥佐津村で対をなしていた。城崎郡口佐津村は昭和30(1955)年3月25日の合併で城崎郡香住町となり、平成17(2005)年4月1日の合併で美方郡香美町となっている。「佐津」の読み方だが、駅名は「さつ」と濁らないものの、地元住民は「さづ」と発音し、旧村名も「さづ」だ。佐津川流域を指す広域地名で、住所表記だと「香住区無南垣」や「香住区訓谷」となる。

キハ181時代のカニカニはまかぜ(平成20年3月2日 加古川駅にて)
キハ181時代のカニカニはまかぜ(平成20年3月2日 加古川駅にて)

この冬、松葉ガニを味わいたいなら、冬しか乗れない「カニカニはまかぜ」で佐津へ行ってみるのもいいだろう。

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鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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