喫茶店が入居するとんがり屋根の駅舎 南阿蘇鉄道高森線 阿蘇白川駅(熊本県阿蘇郡南阿蘇村)
阿蘇の入口とも言うべき豊肥本線の立野駅を起点に、南阿蘇の雄大な風景の中を走り、阿蘇郡高森町の玄関口・高森駅とを結ぶ南阿蘇鉄道高森線。起点の立野から数えて6つ目が国鉄時代からの長い歴史を持つ阿蘇白川駅だ。
阿蘇白川駅は昭和3(1928)年2月12日、宮地線支線の立野~高森間開業に合わせて開設。元は長陽駅と似たような木造駅舎があったものの、国鉄末期に解体され、昭和61(1986)年4月1日の南阿蘇鉄道転換に合わせて現在の駅舎が使用開始された。時計台のあるとんがり屋根の洋風駅舎で、バブルの雰囲気が感じられる。時計台には鐘があるものの、うるさいことからすぐに鳴らすのをやめてしまったそうだ。
駅舎内に入ると正面に鏡張りの柱があり、右手に喫茶店「Café 75th st.」が入居している。待合室の壁には地元在住のアーティストの作品が飾られ、ちょっとしたギャラリーといった雰囲気だ。
駅名「阿蘇白川」の由来はかつて存在した阿蘇郡白川村で、東北本線にある同音の「白河駅」と区別するために郡名が冠されたのだろう。ただし駅があるのは隣接する吉田村の旧村域で、本来の白川地区には南阿蘇白川水源駅が後から開業している。白川村と吉田村は明治の町村制で阿蘇郡白水村となり、吉田には白水村役場が置かれた。吉田は白水(はくすい)村の中心地として栄え、かつては映画館もあったそうだ。白水村は平成17(2005)年2月13日の長陽村・久木野村との合併により南阿蘇村となっている。
ホームは単式一面一線。駅裏には田園地帯が広がっており、少し南を一級河川・白川が流れている。白川は根子岳に端を発して南郷谷を流れ、立野で黒川と合流して熊本平野に出て有明海に注ぐ。旧白水村には白川の湧水が数多く存在し、南阿蘇水のうまれる里白水高原駅や南阿蘇白川水源駅の由来にもなった。
阿蘇白川駅は昭和46(1971)年2月20日に無人化されているが、令和2(2020)年10月から令和5(2023)年6月25日まで「名物駅長」が在任していた。菊陽町の男性が飼っている柴犬の雄「ゆう」で、令和元(2019)年9月生まれ。南阿蘇鉄道の復興を後押ししようと、トロッコ列車「ゆうすげ号」の運転日に合わせて出勤していたが、令和5(2023)年7月15日の全線営業再開で一区切りがつくことから、引退して普通の飼い犬に戻った。今頃は菊陽町でひっそりと余生を過ごしていることだろう。
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