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東京メトロ日比谷線03系を改造した上毛電気鉄道の新型車両「800形」、2月29日より営業運転を開始!

清水要鉄道ライター
試運転中の800形(撮影:青木諒)

2月29日(木)、群馬県の中央前橋駅と西桐生駅を結ぶ上毛電気鉄道で、四半世紀ぶりとなる新型車両800形が営業運転を開始した。一か月程は朝の一往復(大胡7:55発中央前橋行き、中央前橋9:00発大胡行き)にのみ使用され、乗務員の習熟に合わせて運行区間を拡大する予定だ。

大胡に停車中の800形(撮影:青木諒)
大胡に停車中の800形(撮影:青木諒)

今回デビューした800形第一編成は大胡方から811+821の2両編成で、電動車の811にパンタグラフを2基搭載している。800形は東京メトロ日比谷線で活躍していた03系を譲り受けたもので、令和8(2026)年までに今後2編成が導入される予定だ。03系のうち03‐136+03‐836と03‐141+03‐841の先頭車4両が東京メトロ側で改造を待っており、この4両が800形の残り2本になるのは確実だろう。

中央前橋に停車中の700形(左)と800形(撮影:青木諒)
中央前橋に停車中の700形(左)と800形(撮影:青木諒)

上毛電鉄の現在の主力は、かつて京王井の頭線で活躍していた3000系を譲り受けた700形で、8編成16両が活躍している。いずれも昭和39(1964)年から昭和47(1972)年までの間に製造された車齢50年越えの古い車両で、老朽化が進んでいる。令和元(2019)年頃には自社発注の新型車両で置き換えるという話も出ていたが、立消えとなり、東京メトロからの中古車両で3編成を置き換える方針に変更された。ただし、残り5編成の置き換えの目途は立っておらず、当分は廃車となる3編成の部品を活用して延命が図られることになる。

東京メトロで活躍していたころの03‐835(撮影:青木諒)
東京メトロで活躍していたころの03‐835(撮影:青木諒)

東京メトロ03系は、営団地下鉄時代の昭和63(1988)年から平成6(1994)年にかけて42編成336編成が導入された車両で、新型車両13000系への置き換えに伴い、令和2(2020)年2月28日に引退した。車体の大きさが18mとJRなどの車両(20m)と比べて小さく、入線できる車両に制限のある地方私鉄にとっては手頃であることから、熊本電気鉄道(03形)・長野電鉄(3000系)・北陸鉄道(03系)にも譲渡されている。このうち北陸鉄道では置き換えられる旧型車両(8000系)も上毛700形と同じ井の頭線の中古車だ。

引退後、改造を待つ03‐135(撮影:青木諒)
引退後、改造を待つ03‐135(撮影:青木諒)

今回、上毛電鉄811+821として再出発したのは東京メトロで03‐135と03‐835だった2両で、令和元(2019)年4月22日の運用を最後に東京メトロからは引退。26日に北館林の留置線まで廃車回送された。8両編成のうち中間車4両はそのまま北館林で解体されたものの、両先頭車を含む03‐135+03‐235+03‐635+03‐835の4両は5月9日と11日の未明に東京メトロ東西線の車両基地である深川検車区行徳分室にトレーラーで陸送された。

改造を待つ03‐135F、手前は北陸鉄道に譲渡された03-130F(撮影:青木諒)
改造を待つ03‐135F、手前は北陸鉄道に譲渡された03-130F(撮影:青木諒)

その後は長らく行徳で4両編成を組んで留置されていたが、令和5(2023)年4月18日未明に先頭車のみが日比谷線の車両基地・千住検車区に陸送され、4年ぶりに古巣に帰ることになった。その後、千住で改造工事を受け、再び姿を現したのが11月27日未明のこと。先頭車にパンタグラフを搭載した2両編成となって、終電後の日比谷線で試運転を行っている。12月10日未明には東武伊勢崎線を北越谷まで自走回送され、北越谷からは東武801Fに牽引されて館林まで回送。翌11日、801Fの牽引で東武桐生線を赤城まで回送され、赤城で上毛電鉄側に引き渡された。赤城からは大胡まで713Fに牽引され、デハ101の牽引で大胡駅から車庫へと移動し、ようやく新天地に到着したのであった。11日には「到着式」が開かれ、県や沿線自治体の関係者や報道陣に公開された。営業運転開始前の2月17日には鉄道ファンや沿線住民向けのお披露目会が行われている。

車内の銘板(撮影:青木諒)
車内の銘板(撮影:青木諒)

2両は平成5(1993)年7月29日に東急車輛で新製されたもので、5年もの空白期間を経て、車齢30年での新天地での出発となった。車内の銘板には「メトロ車両 2024」の文字があるが、改造自体が行われたのは昨年のことだ。

811の車内(撮影:青木諒)
811の車内(撮影:青木諒)

車内の雰囲気自体は大きく変わっていないが、ワンマン運転に対応するために運賃箱や整理券発行機、運賃表示器などが設置された。合わせて、ドアの半自動化も行われており、ドア横に開閉ボタンが設置された他、車内に防犯カメラや車いすスペースも導入され、従来の車両と比べて安全性や利便性も向上している。

上毛電気鉄道に新たな活躍の場を見出したかつての日比谷線車両のさらなる活躍に期待したい。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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