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県境の駅に残る木造駅舎と屋根付き階段 因美線 那岐駅【前編】(鳥取県八頭郡智頭町)

清水要鉄道ライター
那岐駅

鳥取県の県都・鳥取市と岡山県美作地方の中心都市・津山市とを結ぶ因美線。かつては山陽と山陰を結ぶ「陰陽連絡線」の一つとして重要な路線だったが、智頭急行線の開業後、智頭以南の県境区間は普通列車が一日数往復するだけのローカル線に転落した。令和4(2022)年度の智頭~東津山間の輸送密度(平均通過人員)はわずか130人と、いつ廃止になってもおかしくないくらい利用者が少ない。そんな区間のうち、県境の鳥取県側に位置するのが那岐(なぎ)駅だ。

駅全景
駅全景

那岐駅は昭和7(1932)年7月1日、因美線智頭~美作河井間が開業して全通した際に開設された。駅名の由来は当時の所在地・八頭郡那岐村(なぎそん)で、昭和10(1935)年2月20日に智頭町に編入されている。鳥取岡山県境には標高1255mの那岐山があり、岡山県側には読みが同じで表記の違う勝田郡奈義町(なぎちょう)がある。那岐山には伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)の降臨伝説があり、古来から山そのものが信仰の対象だった。

駅舎内
駅舎内

駅舎は開業時に建てられたもので、旧事務室部分は改装されて「那岐診療所」になっている。上写真左の引き戸が診療所の入口で、月2回診療が行われる。改札口には有人駅時代に使われていた木製のラッチがそのまま残されている。

ホームへの階段
ホームへの階段

ホームは駅舎よりも高いところにあり、改札口を抜けて階段を上がれば1番ホームだ。豪雪地帯の駅だけあって、階段には木製の上屋が設けられ、乗客を雨や雪から守っている。このような上屋付きの階段は五能線八森駅(秋田県山本郡八峰町)や山田線松草駅(岩手県宮古市)、只見線塔寺駅(福島県河沼郡会津坂下町)、上越線上牧駅(群馬県利根郡みなかみ町)、高山本線楡原駅(富山県富山市)、岩徳線柱野駅(山口県岩国市)などでも見られる。

駅構内
駅構内

ホームは相対式2面2線。駅舎側(左)の1番線が津山方面、反対側の2番線が智頭・鳥取方面だ。ホーム間は構内踏切で結ばれている。早朝には当駅始発の列車が設定されているが、こちらは1番線から発車する。

ホーム
ホーム

高台にある長くカーブしたホームは風格を感じさせる。長編成の急行列車が行き交った時代は遠く過ぎ去り、今は単行の小さなローカル列車が一日7.5往復やってくるだけだ。後編では駅周辺を紹介する。

廃校を転用した宿泊施設がある県境の集落 因美線 那岐駅【後編】(鳥取県八頭郡智頭町)

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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