火災で焼失した木造駅舎を地元で再建した河原城の最寄駅 因美線 河原駅 (鳥取県八頭郡八頭町)
鳥取県の県都・鳥取市と岡山県美作地方の中心都市・津山市とを結ぶ因美線。鳥取寄りの鳥取~智頭間は智頭急行線を経由する特急「スーパーはくと」や「スーパーいなば」も走行する本数の多い区間で、すっかりローカル線に落ちぶれてしまった智頭以南と比べると今でも活気を保っている。そんな区間にある駅の一つが「河原(かわはら)」駅だ。
駅舎は一見、古い木造駅舎のように見えるが、昭和52(1977)年の火災で焼失して再建されたもので、築40数年と木造駅舎にしては比較的新しい。時期的にはコンクリートの簡易駅舎も各地に建てられはじめていた頃だが、古くからの木造駅舎に似せて再建したあたり、焼失した駅舎はよっぽど地元から愛される駅舎だったのだろう。しかしながら、壁の造りなどは駅舎よりも昭和後期の住宅や公民館のようで、国鉄が建てた規格型駅舎とは雰囲気を異にしている。
河原駅は大正8(1919)年12月20日、因美軽便線が鳥取から用瀬まで開通した際に開設された。「軽便線」とは通常の国鉄線よりも簡略な手続きで建設することができると明治時代に定められた路線のことで、大正11(1922)年4月11日の鉄道敷設法で制度が廃止され、因美軽便線も同年9月2日に「軽便」の二文字を外して因美線となっている。
ホームは単式一面一線。元は島式一面二線だったが、駅舎側のホームを廃止して片面使用となっている。ホーム上の待合室は大正8年の開業以来100年以上に渡って使われてきた古いものだ。
列車はだいたい一時間に一本とローカル線にしては多い方で、列車での訪問もそれほど難しくない。因美線の普通列車には専らキハ47やキハ120が用いられるが、智頭急行から乗り入れてくるHOT3500形も河原駅にやってくる。
駅があるのは八頭郡八頭町で、駅開業時は八頭郡国中村だった。国中村の村名は因幡国の中央に位置することに因んだものだ。ただし、駅名は千代川対岸の八頭郡河原町から取られている。河原町は平成16(2004)年11月1日に鳥取市に編入された。
河原は千代川と八東川が合流する地点に栄えた町で、戦国時代には河原城(丸山城)が築かれた。この城は羽柴秀吉の鳥取城攻めの際に陣が置かれたとされているが、詳しいことはあまりわかっていない。平成6(1994)年9月に模擬天守が建てられて町のランドマークとなっているが、この天守は愛知県の犬山城を模したものなので歴史的な裏付けはないそうだ。駅から河原城までは約3キロ、歩いて40分以上かかるので鉄道で観光する人はあまりいないだろう。
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