Yahoo!ニュース

【戦時の献立】バタを使わずに美味しく作る『三色白和へサンドヰッチ』(昭和14年10月1日)

Sake Drinker Diary映像をつくる人

「もし戦時中に料理ブログがあったら?」というテーマでお送りします。

日中戦争から太平洋戦争にかけての“戦時中”と言われる時期も、出版され続けた婦人雑誌がありました。

そこに掲載されたレシピを忠実に調理し、ちょうどその頃に起きた出来事や些細な日常を交えながら、戦争中の食事について深掘りします。

料理を作るのは、暇な日曜日に夕めしを作ることにした「私」です。

今回選んだ献立は「三色白和へサンドヰッチ」

当時の雑誌にはこう書かれています。

バタを使わずに美味しく頂けるサンドヰッチです。豆腐と胡麻でマヨネーズソース代わりのものを作り、野菜や果物を和へてパンにはさみます。栄養が充分にあって、子供にも大人にも向きます(昭和14年10月号・婦人之友より)

肉や魚、卵はなるべく我慢して、安価な豆腐でタンパク質を補おうという献立のようです。

ちなみに昭和14年10月頃の主な出来事は?

  • 9月1日〜 日本政府は戦争が続く限り、毎月1日を興亜奉公日とした。この日は戦場の兵士の苦労をしのび、食事を質素にすることや、国旗掲揚などを国民に求めた。
  • 9月1日 ドイツ軍がポーランドに侵攻開始。第二次世界大戦勃発

などがあり、日本は長く続く日中戦争の真っ只中です。

ではここから先は、昭和14年10月1日のブログだと思って、ご覧ください。

昭和14年10月1日(日曜日)

晴れて過ごしやすい日だったが、気分はそれほど晴れやかではない。

ドイツはとうとうポーランドのワルソー(ワルシャワ)を陥落させ、今度はイギリスと戦火を交えている。

日本も戦争、欧州でも戦争。もう、あっちもこっちも戦争である。

こんな暗澹(あんたん)とした気持ちを如何にすべきか。考えてもろくに浮かばない。

子供もおらぬし、ちょっと油断すると日曜は無為に過ごしてしまう。

無為に過ごすと夕めしを作るのも億劫になる。

溜まった新聞整理をしてのらりくらりとしながら、やっとのことで家内の婦人雑誌を手に取る。

今日は三色白和へサンドヰッチにする。

子供じみた料理だが、いかんせん他の料理には食指が動かなかった。

夕めしにパン。そんな日があってもいいじゃないか。

ではこしらえていこう。

材料

【五人前の材料】

  • パン…2斤
  • にんじん…5〜6センチ
  • りんご…1個半
  • いんげん…刻んだ物を大さじ5杯
  • 豆腐…半丁
  • 白胡麻…大さじ山盛り2〜3杯
  • 西洋酢…小さじ2〜3杯(日本酢なら煮て冷ましたものを小さじ4〜5杯)
  • 砂糖…小さじ山盛り2〜3杯と、小さじ山盛り1杯
  • みりん…大さじ2〜3杯(入れなくても良い)
  • 塩…小さじ2/3
  • 味噌…小さじ2杯

まずは下ごしらえから

豆腐を五人前で半丁。細かく切ってざるにあげ、充分水気を切っておく。

決して絞ってはいけない。絞るとせっかくの豆腐の味が損なわれるとのこと。

豆腐を水切りしている間に、野菜を切る。

ニンジンは五糎(センチ)ほど使う。塩茹でしてから細かく切る。

インゲンも塩茹でして細かく切る。細かく切ったものが大さじ5杯分あれば良いようである。

リンゴは1個半と献立に書かれているが、大きめのものが手に入ったので1個にしておく。

これも細かく切るのだが、くし形に切ってからさいの目にすると、はなはだ効率悪し。

もっと良い切り方はないものか。家内に聞いておこうと思う。

マヨネーズの代わりになる白酢をこしらえる

白胡麻を大さじで2〜3杯。フライパンで空炒りする。

この胡麻の炒り方ひとつでおいしくなるというから、丁寧に煎ろう。

パチパチと跳ね、充分に膨らんだらすり鉢ですり潰す

すったら先ほど水切りしておいた豆腐を入れて、する

みりん大さじ2〜3杯と砂糖を小さじ山盛り2〜3杯加え、またする

西洋酢を小さじ2〜3杯を落として、またまたする

最後に塩小さじ3分の2を加え、味を整える。

塩がきつすぎたり、酢がきつすぎたりしないよう、よく調和した薄味に仕上げなければならないとのこと。

調和とは難しい注文なり。

出来上がった白酢はすり鉢から別の器に移しておく。

この白酢はマヨネーズの代用であるとのこと。

つまりこれは、マヨネーズの材料である貴重な卵の節約にもなっているのだ。

野菜やリンゴを和へる

今度は味噌小さじ2杯をすり鉢で、またまたする

すり鉢、大活躍である。

すったら、先ほど作った白酢の3分の2だけ戻し、味噌とすり合わせる。(3分の1はよけておく)

どれだけすれば気が済むのか…

この味噌と合わせた白酢をニンジン、インゲンそれぞれに和えれば、三色のうち二色が完成する。

残りの一色はリンゴであるが、こっちにはさっき味噌と合わせる時によけておいた白酢を使う。

砂糖小さじ山盛り1杯を加えてリンゴと和える。

甘いリンゴには味噌の入っていない白酢を、インゲンとニンジンには味噌の入った白酢を使うということである。

白和へを一種類ずつパンに挟む

パンは1人につき6枚。
ニンジン、インゲン、リンゴの白和えを一種類ずつ、パンに挟んでいく。

三色白和へサンドヰッチの完成なり

インゲンの緑、ニンジンの赤がなかなか綺麗である。

味は如何に?

味は思っていたより悪くない。充分やれる。

マヨネーズを使わなくても、豆腐と酢でそれらしくなるものだと感心した。

それぞれ歯応えも違っていて面白い。

しかし、リンゴの白和えは改善の余地ありといったところである。

リンゴと胡麻がどうも噛み合わない。

この後食べた家内はというと、思いのほか気に入ったようだ。作った甲斐があった。

ちなみに付け合わせにはフルーツサラダを作った。こちらも白酢を使っている。

フルーツサラダの作り方を知りたい方は下の動画をご覧いただきたい。

ごちそうさま。またうまい物を作ろうと思う。

Sake Drinker Diary では毎週、戦時中の献立の動画を配信しています。
動画に興味を持った方、なぜ Sake Drinker という名前なのか気になった方、Youtubeチャンネルを覗いて下さると有難し!
書き込みなども頂けると今後も存分にやれるので、よろしくお願いします。
Youtube : Sake Drinker Diary

映像をつくる人

左利きの映像製作者。気分転換は料理です。「左利き」とGoogle翻訳に入力してみたところ「Sake Drinker」と出てきたため、それに日々の記録という意味での「Diary」を足しました。お酒は好きですが、浴びるほどは飲みません。

Sake Drinker Diaryの最近の記事