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【戦時の献立】ウォスターソースに二宮さんまで?戦時下に流行した『代用品』(昭和15年5月19日)

Sake Drinker Diary映像をつくる人

「もし戦時中に料理ブログがあったら?」

今日の献立は昭和15年5月号の主婦之友から、『代用ウォスターソース』である。

ウォスターソースとは、ウスターソースのことだ。
どうやらこの当時は『ウォスター』と呼んでいたようで、婦人雑誌の献立に材料として登場するときは『ウォスターソース』と表記されている。
こっちの方がもともとの英語の発音(Worcestershire sauce)に近い気がして、個人的には好感が持てる。

さて『代用』と名前がついているからには、ウスターソースではない物を使って、ウスターソースらしき物を作ろうということである。

メインとして使うのは醤油だ。
「え?醤油をウスターソースっぽく作り変える?」
「普通にウスターソース買えばいいんじゃない?」
「他の材料費もかかるし、手間もかかるし、コスパ悪すぎない?」

しかし当時の婦人雑誌を読む限り、実に様々なものが手に入りづらくなっていたようだ。

◇手作りするほど、物資は不足していた?

今回の『ウォスターソース』は

統制下の調味料と食料品の作り方(主婦之友・昭和15年5月号)

という特集の中で紹介されている。
ウォスターソースの他には代用の味の素、バター、マヨネーズ、お酢など、およそ25種類の作り方が説明されている。

また、同じ時期の婦人倶楽部でも

道具なしで簡単にできる 美味しい自家用味噌の作り方(婦人倶楽部・昭和15年5月号)

といった特集が組まれ、赤味噌や白味噌を自宅で、しかも大豆から作る方法が紹介されている。

もう一誌、婦人之友では砂糖や卵が手に入りづらくなっている状況について触れ、少ない物資をどう活かすかということが語られている。

日中戦争が想定していたよりも長期化し、徐々にジリ貧になっていくのを誰もが感じている頃である。
作れるものは自分で作る。
これまでよりも使う量を減らす。
代わりの物でうまく乗り切る。
なんとかして不足を補おうとする、当時の人々の努力が垣間見える。

そして『代用品』は調味料分野だけにとどまらなかった。
学校の校庭にあったあの銅像にも『代用品』が使われていたのである。

◇当時はさながら代用品ブーム?

政府の広報誌だった『写真週報』にこのような記事を発見した。
題して『二宮さんも代用品』である。

写真週報・昭和15年5月8日号
写真週報・昭和15年5月8日号

記事の右上を見やすく拡大すると…

中央に「二宮さんも代用品」の文字が
中央に「二宮さんも代用品」の文字が

記事によると、これは岡山県のとある小学校に建てられた二宮金次郎の像らしい。
この小学校で銅像を建てようとなった時、校長先生の発案でこの地方特産の備前焼で作ろうということになったようだ。
当初は銅像の『代用品』として作ろうと思った訳ではない。備前焼の色や光沢を生かして像を作れば、誰も陶器だとは気づかないだろうし、郷土の誇りにもなると考えたからだった。

しかし実際に作ってみると、銅像とは比べ物にならないくらい安く出来上がった。
その評判が隣の町や県に伝わり、『代用品の二宮さん』は各地の小学校から注文が入るほどに人気になったという。

磨き上げられる二宮さん
磨き上げられる二宮さん

もし私が、陶器で二宮さんを作ろうなどという話を聞いたとしたら。
野球やってて、ボールが当たったら割れちゃうんじゃないかな…
安くても耐久性がないんじゃ、ダメじゃないかな…
そんな心配が頭をよぎる。

しかし当時の記事は、陶器を使うという代用アイデアを思いついたことが、ただただ素晴らしい!といった雰囲気である。

この記事は政府の広報誌だから、こういったネタを積極的に取り上げるのは分かる。
お金の節約だけでなく、銅など金属を節約してくれれば、兵器や武器を作る材料に回すことができるからだ。

このように、当時の人々の身の回りには様々な『代用品』が生まれていた。
しかし、こうしたブームも長くは続かない。
醤油や備前焼の陶器など、代用として使っていた物さえも不足する事態になれば『代用品』だって作れなくなってしまうのである。

というわけで、代用ウォスターソースである。
果たしてどんな作り方をするのか…?味はうまいのか…?

◆ここから先は、昭和15年5月19日だと思ってご覧いただきたい。

昭和15年5月19日、日曜日。
朝は晴れたが、午後から曇り。
きょうは代用ウォスターソースを作る。
ウォスターソースは私の大好物である。
目玉焼きにかけるなら醤油がいいか?ソースがいいか?たまにそんな質問をしてくる輩がいる。
なんの迷いもなくソースだ。
なんなら卵かけご飯だって、ソースで作ることがあるくらいだ。
それくらいにソースは大好物なのである。
しかしウォスターソースなんて、家で手作りできるのか?
にわかには信じがたいが、家内の婦人雑誌をみると、統制下の調味料の作り方が色々と載っている。
思ったよりも簡単そうであるから、こしらえてみることにした。

◇材料

  • しょうゆ 180cc
  • お酢 90-180cc
  • 玉ねぎのみじん切り 大さじ1
  • 七味唐辛子 少々
  • 塩 少々
  • 砂糖 少々

◇では、こしらえていこう

まずは玉ねぎから。

ごく少量をみじん切りにする。大さじ1杯分あればよいようである。
香味野菜を使うとなんとなく本格的な印象でこちらもその気になる。
しかしここから雰囲気は一変する。急に和風になるのだ。

醤油を1合

お酢を半合から1合

七味唐辛子を少々

そして先ほどみじん切りにした玉ねぎ大さじ1杯分と、塩と砂糖を少々加え、混ぜ合わせる。

西欧風であればコショウを入れたくなるところだが、七味唐辛子を入れるというのが面白い。
そしてこれを倍の量になるまで水でうすめ、火にかける。

これは砂糖や塩が溶けて、全体を混ぜ合わせるためだから、長時間煮立てる必要はないとのこと。

以上。滅法界簡単である。

◇代用ウォスターソースの完成なり

ウォスターソースの味をわかりやすく味わうならこれであろう。
目玉焼きだ。
冷めないうちに、早速いただきます。

醤油の塩気と酢の酸味に、七味と玉ねぎの辛味が良い仕事をしている。
おかげで、やや西欧の香りを演出できている。が、やはり口の中を支配するのは和の香り
主役は醤油である。
つまりこれはウォスターソースではない。和ォスターソースなり!
和風ゆえに。

とはいえ、決して味は悪くないのだ。
ウォスターソースのような熟成した深みはないが、さっぱりとしてうまい。

案外、お浸しなどにも合いそうである。

それにしても代用品作りは楽しいが、費用も手間も一層かかるからおかしなことである。
ごちそうさま。

◇さらに味の素も作ってみた

今回の代用調味料から、ウォスターソースだけでなく味の素も作った。作り方や味について詳しく知りたい方はこちらをご覧いただけると有難し!

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動画に興味を持った方、なぜ Sake Drinker という名前なのか気になった方、Youtubeチャンネルを覗いて下さると有難し!
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映像をつくる人

左利きの映像製作者。気分転換は料理です。「左利き」とGoogle翻訳に入力してみたところ「Sake Drinker」と出てきたため、それに日々の記録という意味での「Diary」を足しました。お酒は好きですが、浴びるほどは飲みません。

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