ショートフィルム

こども食堂のカタチ

重江良樹

映画監督

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「子どもの貧困支援とは何か」~こども食堂のような「場」が根源的に持つ役割とは~

子どもの貧困をはじめ、虐待・いじめ・自死など、子どもに関する悲しい報道が絶えない昨今、2016年時点で全国約300か所だった「こども食堂」は、2018年には約2300か所にまで広がりをみせている。子どもの7人に1人が相対的貧困状態、その数約280万人とされる中、こども食堂は「子どもの貧困支援」という側面が多く報道されてきたが、果たしてそれだけなのか。高い子どもの貧困率を示す大阪市西成区で、三者三様のこども食堂を取材すると、様々な役割・一面が見えてきた。

各こども食堂の特色や違いなどは映像にて感じて頂けると思うが、取材を通して感じた事は、家庭環境や学校生活などが不安定な子どもが、自分が居てもいいんだと安心して思える場で、食事をしたり遊んだり、誰かに受け入れられたりする経験が心の安定に繋がっているよう見受けられた事。また、幅広い年齢層の中、様々な人が集う場では、多様な価値観を共有する事が出来るのではないかとも感じた。幼い頃から多様な人に出会い、コニュニケーションがとれれば、育ちの中で自分とは異なるモノ(所得・障がい・国籍などの差異)を持つ人に出会っても、未知への恐怖心や無用な差別意識を持たずに済むことは多い。

利用する保護者からは、「経済的に助かっている」という声から、「忙しい毎日の中、食事のことを考えなくていい日があるのはありがたい」、「普段はゆっくり話せない保護者とも、こども食堂だと話すことが出来る」という声など、多数の意見を聞くことが出来た。保護者にとってもこども食堂で束の間の休息を取ることは、育児や仕事に向き合うモチベーションともなっているようだ。地縁が薄れ、核家族化が進み、共働きやひとり親世帯が増える中、こうした休息の場は、保護者の孤立や心の安定といった面でも有用だ。保護者が心身ともに安定を崩せば、その影響はそのまま子どもに向かう。

子どもの貧困とは親の貧困、すなわちその家族が抱える困りごとである。子どもの貧困問題が社会認識され、こども食堂や学習支援などへの補助金も出始めているが、空腹を満たし、学力をつけるといった直接的で可視化されやすい経済的・教育的な支援と並行しつつ、可視化され難い安心安全な人材や場づくりにも注力すれば、よりきめ細やかに子ども達をサポートすることが可能となる。そして、こども食堂のような民間の居場所や学習支援と共に、学校や自治体といった公的機関も横に繋がりあえれば、子どもやその家族を見守る体制はより強固なものとなる。各自やり方や理念、制度などの違いはあると思うが、常に子どもを中心に置いて考え繋がっていくことは、上述した悲しい報道を無くしていく力となるだろう。

こども食堂有識者で、今回の取材に応じてくれた湯浅誠さんは、「こども食堂は民間が持つ強みである自発性と多様性を失うことなく、社会のインフラ(あたり前にあるもの)となっていく事が望ましい」と言った。そして、「バラつきはある中、こども食堂に補助金を出す自治体は増えてきているが、行政が出てきて制度化してしまえば、様々な条件も付いてくる」と指摘した。例えば、「就学援助を受ける世帯の子の利用が何人以上とか、広さは人数に対しこれだけなど。そうなってくると、今の自発性と多様性は、お金と引き換えに失われていくだろう。しかし、こども食堂の多くが不安定な財政で運営される中、閉める食堂があると聞けば、何とかした方がよいとも考える。そのためには、自発性と多様性を失わず、あたり前にこども食堂のような場があればいいという社会の合意形成が必要」と語った。

育児・教育関連予算の低さや経済的・教育的な貧困の連鎖、非正規雇用の拡大やひとり親家庭の貧困率の高さなど、社会構造より起因する問題も多々あるが、子どもを取り巻く問題の根源にあるものの一つは、信頼関係に基づく繋がりの欠如であると私は考える。自分の話しに耳を傾け、気持ちを理解し、受け入れてくれる、出会う意味のある安心安全な大人と、地域の中にあり、家庭や学校とはまた別の第三の居場所であるこども食堂のような場で出会えるという事が、子ども達にとってどれだけ有用か。そして社会の一員である子ども達が安心して生きられるという事が、どれだけ尊い命の犠牲を無くし、この社会を豊かにするかはぜひ想像してみてほしい。

※本記事は2018年、ヤフーニュース個人にて配信されたものに、「こども食堂はどのような場であることが望ましいか」という論考を加え再配信したもので、映像に登場する個人・団体の名称・肩書は2018年取材当時のものです。

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