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【元・美容クリニックナース解説】ボトックス注射!費用差の秘密は?効果などに違いはあるの?

繁和泉看護師・予防医学士・薬機法管理者

手軽に受けられるプチ整形として人気のボトックス。いろいろなクリニックで

  • 韓国製
  • ヨーロッパ製
  • アラガン社

など、いくつか種類もあり費用にも差があるのはご存じでしょうか?

今回は同じボトックス注射でも「受ける種類により費用に違いがあるけどなぜ?」「実際に何が違うの?」という疑問にお答えします。

ボトックス注射「アラガン社製・韓国製・ヨーロッパ製」の違いは何?

実は「ボトックス」と呼べるものはアラガン社製のボツリヌストキシン製剤だけ。アラガン社から発売しているボツリヌストキシン製剤は「ボトックス」として商標登録しており、その名前がいまやボツリヌストキシン製剤の代名詞として認知されています。では、アラガン社製のボトックスと海外製のボトックスはどのような違いがあるのでしょうか?

アラガン社製のボトックスは厚生労働省の認可がある

アラガン社製のボトックスはFDA(アメリカ食品医薬品局)だけではなく、日本の厚生労働省にも認可されています。美容目的で使用するボツリヌストキシン製剤としては国内唯一です。

ゆえに、使用する医師に対しても使用資格の取得を推奨しており、多くの美容外科医がアラガン社の「ボトックスビスタ認定医」の資格取得を目指し、実際に取得しています。

国内で唯一製造販売承認されているので、輸送にともなう温度管理を容易にし、安定した効果の発揮が期待できます。

ボトックスビスタは、私が働いていたころ導入した際に販売メーカーから「注射した場所にとどまりやすく、狙った場所への効果の発揮がしやすいんですよ!」との説明も受けました。

  • 医師の資格取得の推奨
  • 国内製造販売の認可による保証制度がある
  • 狙った場所への効果がピンポイントで期待できるので症状の管理がしやすい

といった事情も、アラガン社製ボトックスが同じクリニック内でも金額がお高めになる要因でしょう。

ヨーロッパ製のボトックスは?

ボツリヌストキシン製剤の中にはヨーロッパ製のものも多くあります。おもにドイツやイギリスで製造され、クリニックが輸入し処置に利用しています。

中にはFDAが認可しているものもあり、国内ではボトックスビスタが普及する前にも広く使用されていました。

製剤により特性は異なりますが、ボトックスビスタよりも注射部位より薬剤が広がりやすいなどの性質があるものもあります。

韓国製のボトックスは?

クリニックにより、安めの費用でボトックス注射を提供しているところもあります。その多くが韓国製ボトックス。

とはいえ、韓国製ボトックスでも国内で使用されているものはKFDA(韓国食品医薬品安全庁)で認可されているものでしょう。(少なくとも見たことがあるものは、すべてKFDA認可のものでした)

中には浸透圧の違いからか「注射のときに痛い!」といった声も聞きます。

韓国製ボトックスも、ボトックスビスタ以前より使われている製剤も多く、安さゆえに根強いファンがいるのも確かです。

アラガン社製とその他のボトックス。実際の違いは?

クリニックにより「ボトックス注射」にアラガン社製、韓国製、ヨーロッパ製など複数の商品を導入しています。

では実際に効果の違いなどはあるのでしょうか?

筋肉の動きを弱める効果に着目すれば大きな違いはない

美容外科ではボトックス注射はかなりポピュラーな処置。毎日何人ものお客様が注射されますが、アラガン社製の注射も海外製ボトックス注射を受ける方もどちらも多くいます。

正直なところ効果の出方に有意差はあるの?と聞かれると私個人の感想としては「はっきり違いがあるようには見えない」ということ(※あくまでも個人の感想です)

ただ、これはあくまでもボトックスの「筋肉を動かす力を弱められているかどうか」です。筋肉の動きを弱めているかどうかにフォーカスすれば、アラガン社製も海外製のボツリヌストキシン製剤もはっきりとした違いはわかりませんでした。

表情しわは表情筋が動くことで生じますが、しわの要因になっている筋肉の動きを弱め、しわをできにくくします。

その際に期待する効果を

  • このしわだけピンポイントで何とかしたい
  • 他の部位や表情に違和感が生じるのは嫌

などの場合には、製剤の選択を吟味したほうが良いかもしれませんね。

ボトックス製剤の費用による一番の違いはサービスや保証の質

私が美容外科に努めていて、一番感じたのが「保証や処置時のサービスの質」です。

例としてアラガン社製のボトックスを注射した患者様Aと、海外製の数千円のボツリヌストキシン製剤の注射をした患者様B、担当医師Cのお話を紹介します。

【アラガン社製の注射をしたお客様Aの事例】
・注射ぎりぎりまで処置予定部位をクーリングして
 内出血予防
・注射針も極細のものを使用
・処置中も声をかけながらこまめに表情筋を 
 動かしてもらい注入部位をチェック
・注射後も医師が出血はないかどうか確認し退出

一方でB様は??

【海外製ボツリヌストキシン製剤の注射をしたお客様Bの事例】
・クーリングなし
・注射針はまあまあ細いものを使用
・医師が入室後、特に確認することもなく
 「行きますよー」と声掛けをして
 「どす、どす、どす」と注射
・微出血があったものの、Bさんに
 「おさえておいてください」とガーゼを渡し退出

この事例は出張医のC先生が対応した事例ですが、明らかに対応に差がありました。あまりの差に当時の私は「ワイルドでしたね…」とだけ声をかけたのですが……。

C先生の答えは

「だって、客単価が低いのに同じ時間と手間はかけていられないでしょ?同じ処置をするならやっぱりサービスの質だって差をつけないと。」
「内出血や痛みが嫌で今後高単価の処置を選んでくれるかもしれないしね…」

とのコメント...。営利志向が強い医師ならではの見解とも言えますが「同じ処置で支払額に差が生じれば、サービスの面で違いが生じるのか」と感じた事例のひとつでした。

もちろん、この事例はあくまでも私が経験した一部です。しかし、スタッフの心情的には多少なりとも有意差ができてしまうこともあるのかもしれません。ボトックス注射をどれにするか選ぶ際の検討事項のひとつにはなりそうですね。

まとめ

今回は「ボトックス注射の費用と効果の違いについて」解説しました。

【費用差が出ている理由】

  • 日本の厚生労働省に認められているかどうかの違いと製剤に対する保証の差
  • 医師の認定資格の有無
  • 製造、輸送環境における製剤の安定性への影響

【製剤による違いは】

  • ピンポイントで狙った効果が得られるかどうか
  • 筋肉の動きを弱める働きに関しては大きな有意差は感じない
  • 客単価の違いによりサービスの質に影響が生じる可能性

などが考えられます。実際に私が美容外科で働き始めたときにはアラガン社製のボトックスはまだ使用していませんでしたが、それでもボトックス注射による大きなトラブルは経験したことはありませんでした。

アラガン社製のボトックスは日本人の安心と安全を追求する傾向から近年急速に普及しています。しかし、もともとあった安価で長く続けやすい海外製のボツリヌストキシン製剤に根強いファンがいるのも事実。

自分の求める効果や予算との兼ね合いも考え、今回の記事が検討事項の参考になれば幸いです。

よろしければ「クリニックごとのボトックス注射の費用の違いについて」の記事もご覧ください。

看護師・予防医学士・薬機法管理者

【医療・美容・健康・ヘルスケア・子育てに関するリアルな情報を発信】兄妹の子育てをしながら働くワーママ。保有資格を活かしながら実際の現場で得た自身の知識や経験をもとに「誇大表現にならないリアルな情報をユーザーに届け、ユーザーが自分にとって適切な判断ができる」情報発信を追求。Well-beingな社会を目指す。

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