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血液検査・点滴を1回で終わらせたい!患者さんにもできる対策を解説

繁和泉看護師・予防医学士・薬機法管理者

病院でする血液検査や点滴。

針を刺す「穿刺」が付きまといますよね…

毎回問題なく終わらせられる方もいれば、なかなかうまく行かない方もいるはず…

「一回で終わりたい!」

のは、患者さん共通の思いでしょう。

血液検査や点滴の針の穿刺の際、患者さんからできる成功率アップへ導く対策もあるのです。

今回は、患者さん側でもアプローチできる「穿刺成功率アップにつながる対策」を解説します!

採血・点滴が失敗する理由は?

まずは採血や点滴の穿刺がうまく行かない理由についてみていきましょう。

失敗につながる要因は複数あり…

その時々によりいくつかの要素が複雑に絡み合っています。

患者さん側の要因

ズバリ言うと「血管が見えない、わからない」から入らないのです。

血管が見えなかったり、触ってもわからない要因はいくつかあります。

・脱水などによる水分不足

摂取する水分量により血管のコンディションが良くないと血管がわかりにくくなります。

  • 検査や受診内容によっては朝ごはんを抜いた
  • もともと朝ご飯を食べる習慣がない
  • 飲水を積極的にしない

など、体内が水分不足の傾向になれば必然的に血管内のボリュームも減り、血管を触ったときに感じられる「ハリ感」が低減します。

血管がわかりにくくなれば、穿刺しようとしてもうまく見つけられず、仮に見つかったとしても血管内に「入った」という手応えを感じにくくなります。

・冬など気温が寒い日

外来受診時の採血などは、夏よりも冬の方が成功率は下がります。

理由は「気温の低下により体温保持するために血管が細くなるから」です。

・体調不良により血管のコンディションが良くない

体調不良の方全てに当てはまるわけではありませんが、体調が芳しくなく血圧が低めの時などは血管のコンディションが整っていません。

血管のハリ感を感じにくくなったり、血管が見えにくくなります。

・血管の走行が蛇行している

患者さんによりますが、血管の走行がひどく蛇行している場合も、入りにくい要素のひとつです。

特に点滴を投与する場合に使用する「留置針」は血管内にプラスティック製の柔らかい針を入れ込みます。

留置針は種類により3−4cmほどの長さがあります。

この長さをすべて入れられるような、まっすぐな血管があるのが望ましいですが、患者さんによって血管の走行がまっすぐではない場合も…。

蛇行していると針の刺入がうまくいかず、点滴失敗の要因になります。

・そもそも見えにくい

患者さんにより、血管が見えにくかったり、触っても血管の手ごたえを感じられないケースもあります。

一般的に「血管がある」と言われている部分でも見えなかったり皮下脂肪などに埋もれている場合もあります。

・緊張などにより血管が細くなる

患者さんの中には、採血や点滴などに伴う「穿刺」に恐怖や不安を感じられる方もいます。(痛いので無理もないのですが…。)

過度な緊張や不安は、交感神経を優位にします。交感神経は血管を収縮させる働きがあるので、より穿刺が難しくなる要因に…。

スタッフ側の要因

穿刺が失敗するのにはスタッフ側の要因もあります。

・技術不足

最大の要因とも言えるかもしれません。スタッフ側の技術不足です。

技術内容としては

  • 「穿刺の角度」
  • 「血管に入ったときの手応えの感じ方」
  • 「血管を見つけるセンス」

など、技術といってもさまざま要素はあります。

経験により磨き上げられる部分です。

経験が少ないスタッフは、スキルが未熟なのでどうしても

  • 「良い血管を見つけられない」
  • 「血管に入った手応えがわからない」

などの理由により、穿刺に失敗してしまうケースも少なくありません。

・メンタル的なブレ

スタッフ側のメンタルも、穿刺の成功率につながる要素です。

針仕事は非常に繊細な仕事です。

「指先のちょっとした感覚」や「血管の走行をイメージして針を刺入する技術」など、さまざまな感覚を研ぎ澄まして仕事をします。

スタッフが

  • 「今日はなんか調子が悪いな」
  • 「この人の血管、入らなそう…」

など、メンタルコンディションが良くなければ微細な感覚をキャッチするアンテナも鈍りがちになってしまいます。

・疲労

疲労も針仕事における感覚を鈍らせる要因のひとつです。疲れていると感覚を研ぎ澄ませることも難しくなります。

労働環境も針仕事に影響を及ぼす要素ともいえるでしょう。

・加齢による老眼や感覚が鈍くなることで成功率に影響を及ぼすこともある

患者さんは割と「若いから点滴が下手だ」「年配の人を連れてきて」とおっしゃる方もいます。

しかし、年齢を重ねると

  • 老眼
  • 指先の感覚が鈍くなる

など、若い頃に比べると繊細な感覚をキャッチしにくくなることもあります。

もちろんスタッフにより、年齢によるハンデを長年の経験や勘など、他の技術でカバーする人もたくさんいます。

しかし、「純粋な感覚のアンテナ感度は年齢とともに衰えることもある」と言うのはひとつの事実とも言えるでしょう。

穿刺を成功につなげるための対策

では反対に、数々の失敗要因をできるだけ少なくして、成功率アップのためにできることは何でしょうか?

患者さんができることを解説します。

水分をしっかりと取っておく

水分不足や栄養不足は血管のコンディションに影響を及ぼします。

検査時の注意事項として飲水制限や食事制限の説明されていない限りは、しっかりと水分補給をして栄養摂取しておくのが理想的です。

体を冷やさない

体が冷え切っていたり、四肢末端が冷たいと体熱の放散を防ごうとして血管は収縮します。

すると、血管も見つかりにくく、針も入りにくい状況に。

特に冬などは、寒い中外来受診される患者さんもいらっしゃいます。

待ち時間だけでは温まりきらずに、血管が収縮した状態になり、穿刺失敗につながってしまうこともあります。

寒い日の受診では、しっかりと防寒対策をして体を冷やさないように意識しましょう。

カイロなどを持参して、穿刺予定部位を温めておくことも有効な対策のひとつです。(低温火傷には十分注意しましょう)

駆血(くけつ)時のグーパー運動

採血や点滴の時に、駆血用のベルトを巻かれたあと、「グーパーしてください」と言われた経験、ありませんか?

この動作、実は血流を促し、血管にハリを持たせるための対策のひとつです。

この時、一度手の台から腕を下ろし、下に向かって拳を向けてグーパーするとさらに効果的。

血管にハリが出て、スタッフが血管を見つけやすくなります。

※駆血が強すぎたり、長すぎたりすると血球成分が壊れる「溶血」という反応が起きますが、まずは「穿刺に成功する」ことを前提として記述しています。

リラックスする

過度な緊張や不安は交感神経を優位にし、血管のコンディションに影響を及ぼします。

リラックスするときに優位になる副交感神経は、血管を拡張させる働きを持ちます。

採血に苦戦しているときに、他のスタッフに話しかけられている様子を見たことはありませんか?

実は「話すことで穿刺行為から意識を逸らし、緊張を解いてもらう」狙いもあるのです。

不安や緊張をしてしまうようなら、担当するスタッフと話をしながら意識を逸らすのも良いでしょう。

最近ではスマホを持参している患者様も多いので、スタッフに確認しスマホを見ても問題ないようであれば、

  • 動画を見て意識を逸らす
  • お気に入りのペットや赤ちゃんの写真を見て癒される

なども効果的です。

知らずにやっていたスタッフ脅しは逆効果!成功率を下げる一因に

採血や点滴をするときにやけに脅してくる患者さん、少なくありません。

「絶対に一回で成功させろよ!」
「あんた、きちんとできるんだろうね??」
「痛いの嫌いだから痛くしないでね!」

こんなセリフ、採血室などで聞いたことがあるかもしれませんね。

年齢を重ねたスタッフや場慣れしたスタッフなら、言われても動じないかもしれません。

しかし、若いスタッフや経験の浅いスタッフであれば、プレッシャーとなり針仕事のコンディションに影響を及ぼします。

もちろん、患者さんの不安な気持ちや1回で終わらせたい気持ちはスタッフも十分わかっています。

スタッフも1回で終わらせたいのです‼

スタッフ側のコンディションを整えるためには、患者さんの協力も必須です。

  • 「苦手だからよろしくね」
  • 「心配だから横になってやりたいです」

などの申し出は、患者さんのコンディションを整えるのに必要な情報でもあります。

あらかじめ申し出てくれることで、スタッフ側もさまざまな配慮ができます。

しかし、脅しにつながる一言は、かえって成功率を下げる要因になりかねないのです。

希望や要望があれば、ぜひ「相談」してみてくださいね!

まとめ

痛みがあるからこそ、1回で終わらせたいのが採血や点滴などの「穿刺」。

スタッフだって同じ気持ちです!

穿刺がうまくいかない要因には、スタッフ側と患者さん側双方の原因が複雑に絡み合っています。

お互いに工夫を凝らし、できるだけ成功率を上げるような対策をとっていきたいですね。

よりよい結果を追求するために、スタッフと「二人三脚」で成功を目指しましょう!

看護師・予防医学士・薬機法管理者

【医療・美容・健康・ヘルスケア・子育てに関するリアルな情報を発信】兄妹の子育てをしながら働くワーママ。保有資格を活かしながら実際の現場で得た自身の知識や経験をもとに「誇大表現にならないリアルな情報をユーザーに届け、ユーザーが自分にとって適切な判断ができる」情報発信を追求。Well-beingな社会を目指す。

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