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あなたの睡眠は足りていないかも?睡眠の質を高めるための秘訣を心療内科医が解説

睡眠は、私たちの心や体にとって非常に重要な役割を果たしています。
睡眠中には、体や脳を回復させるプロセスが起こっています。
でも、現代社会では、睡眠不足や睡眠の質の低下が深刻な問題になっています。
睡眠不足が続いて、記憶力や集中力や思考力が低下したり、イライラしたり、気分が落ち込んだり、疲れや痛みが出てきたりすることがあります。
そのため、勉強や仕事のパフォーマンスが落ちて、ミスをしやすくなり、事故を起こしやすくなります。
また、眠れていると思っていても、実際には睡眠時間が足りていないことも少なくありません。
そこで、この記事では、適切な睡眠時間を把握して、睡眠の質を高めるための秘訣を紹介します。

適切な睡眠時間を把握しましょう!

300以上の研究を統合して調べた研究では、年齢別の理想的な睡眠時間は以下のように報告されています(https://www.everydayhealth.com/sleep/101/how-much-sleep-do-you-need.aspx)。

  • 3〜5歳:10〜13時間
  • 6〜13歳:9〜11時間
  • 14〜17歳:8〜10時間
  • 18歳~64歳:7時間~9時間
  • 65歳以上:7~8時間

人によって必要な睡眠時間は違いますが、睡眠時間が7時間もない人も多いのではないでしょうか?
例えば、必要な睡眠時間が7時間の人が、6時間しか眠れていない場合は、30日間で30時間の睡眠負債(必要な睡眠時間と実際の睡眠時間の差が蓄積されたもの)になります。
このように睡眠負債にある状態を回復させるためには、少なくても3週間はかかるため、週末の寝だめだけでは回復しません。
特に平日と休日の睡眠時間の差が2時間以上ある人は要注意です。
理想的には平日と休日の睡眠時間の差を30分以内にすることが望ましいのですが、難しい人でも1時間以内になるようにしましょう!

睡眠の質を高めるための秘訣

睡眠による体や脳の回復には、睡眠時間だけでなく、睡眠の質も重要です。
そのためには、以下のようなポイントを意識してみましょう。

規則正しい生活リズム を心がける

できるだけ同じ時間に寝て、起きることで、自然な睡眠リズムを作りましょう。
遅く寝てしまうと起床時間が遅くなり、起床時間が遅くなると就寝時間も遅くなるということが繰り返されてしまいます。
そのため、遅く寝てしまっても、なるべく起床時間は変えないようにすることが大切です。

日中に十分な光を浴びる

光は睡眠のリズムに重要な役割を果たします。
特に朝の光は、覚醒を促し、夜の睡眠の質を高めます。
朝起きたい人は、起きたい時間にカーテンを開けて、できれば日の光を浴びるようにしましょう!
日の光を浴びるのが難しいようであれば、部屋の電気をつけて明るくしましょう!
起床したい時間に30分~1時間、明るい光を浴びることで、睡眠のリズムを改善させることが報告されています(Sleep medicine reviews 29: 52–62, 2015)。
また、日中はできるだけ明るい場所にいるようにしましょう。

適度な運動をする

運動は、体や脳に影響を与え、睡眠の質を改善することがわかっています。
でも、激しい運動や運動のしすぎは逆効果です。
散歩などでも大丈夫です。
就寝の3時間前までに軽めの運動をするのがおすすめです。

カフェイン、アルコール、ニコチンの摂取を控える

カフェインやアルコールやニコチンは、睡眠の質や量に影響を与えます。
実際の診療でもカフェインを減らしたり、やめたりするだけで、不眠が改善することが多くあります。
カフェインは、コーヒーや紅茶や緑茶に入っていることは有名ですが、ココアやコーラやチョコレートにもカフェインが含まれていますので注意しましょう!

お酒を飲むことで、寝つきがよくなることがありますが、その後の眠りが浅くなるため、睡眠の質が落ちてしまいます。
お酒も減らせるようであれば、徐々に減らしたり、やめたりしてみましょう!

たばこに含まれるニコチンは、覚醒作用があり、不眠になりやすいことが示されています。
たばこをやめることは難しいかもしれませんが、たばこの本数を徐々に減らしたり、可能であれば医療機関で禁煙治療を受けてみましょう!

快適な睡眠環境を整える

睡眠環境も睡眠の質に影響します。
部屋の温度や湿度を調整して、部屋を暗くして、うるさくないようにして、寝るために快適な環境を作るようにしましょう。
寝具の肌触りや枕の高さやかたさなども良好な睡眠が得られるようなものを選ぶようにしましょう。

昼寝をする場合には、20~30分以内にする

30分以上昼寝をしてしまうと深い睡眠になるため、夜に眠れなかったり、夜間の睡眠が浅くなったりするため、睡眠の質が悪くなってしまいます。
昼寝は、昼食後から15時までの間で、20~30分以内にしてください。

でも、体調が悪い場合や睡眠負債が多い場合には、長時間の昼寝もした方がいい場合がありますので、その場合には無理をしないで時間を気にしないで昼寝をするようにしましょう!
体と脳が回復すれば、昼寝は徐々に減ってきますので安心してください。

また、20~30分以内の昼寝をすることで午後のパフォーマンスを上げることができるので、昼寝ができる環境であれば、積極的に昼寝をしてみることもおすすめです。

寝る前にテレビ、パソコン、スマホを見るのは避ける

寝る前のテレビやパソコンやスマホを見る時間が長くなると、就寝時間が遅くなり、起きる時間も遅くなって、睡眠の質が低下することが報告されています(Sleep. 2021;44:zsab080)。
そのため、寝る1~2時間前からは、テレビ、パソコン、スマホを見るのは避けるように注意しましょう!
夜間に途中で目が覚めた場合もテレビ、パソコン、スマホを見るのもやめておきましょう!

リラクセーション法、ヨガ、マインドフルネスなどを試してみる

以下に示す方法は、不眠を改善させる効果が報告されているので、自分に合ったものを試してみましょう!

  • 自律訓練法などのリラクセーション法 ⇒ 自律訓練法についての詳しく知りたい方はこちら(外部リンク)(Appl Psychophysiol Biofeedback. 2002;27:45-98)。
  • ヨガ ⇒ ヨガについての詳しく知りたい方はこちら(外部リンク)(BMC Psychiatry. 2020;20:195)。
  • マインドフルネス ⇒ マインドフルネスについての詳しく知りたい方はこちら(外部リンク)(Ann N Y Acad Sci. 2019;1445:5-16)
  • アロマセラピー(J Altern Complement Med. 2015;21:61-8)。

まとめ

適切な睡眠時間を確保して、睡眠の質を高めるために知っておきたいことを解説しました。
以下の項目を参考にして、しっかりと睡眠をとって、睡眠のリズムを整えるようにしてください。

  • 適切な睡眠時間を把握する
  • 規則正しい生活リズム を心がける
  • 日中に十分な光を浴びる
  • 適度な運動をする
  • カフェイン、アルコール、ニコチンの摂取を控える
  • 快適な睡眠環境を整える
  • 昼寝をする場合には、20~30分以内にする
  • 寝る前にテレビ、パソコン、スマホを見るのは避ける
  • 自律訓練法、ヨガ、マインドフルネスなどを試してみる

睡眠は私たちの健康や生活の質を向上させるために欠かせないものです。
毎日しっかりと睡眠をとって、体や脳をしっかりと回復さて体調を崩さないようにしましょう。
不眠が続くようであれば、睡眠に関する病気がないか必ず医療機関を受診してください。

自律訓練法、ヨガ、マインドフルネス以外のセラピーについては、体や脳を回復させるためには、しっかりと睡眠をとる必要があります(外部リンク)の関連記事を読んでみてください。

心療内科専門医・総合内科専門医のよっしーです。心療内科医として20年以上、大学病院で15年以上患者さんを診察してきました。大学では教授として研究や学生の教育も行っています。より多くの人たちのお役に立てるような心と身体の情報を発信しています。健康な人にとっても病気の予防にも役に立つ効果的な治療法(セラピー)の情報やその実践法についてもわかりやすく解説しています。

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