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【ランニングの時に考えて欲しいこと】脳内の変化などから

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

読んで頂いてありがとうございます!
たくや/ランナーです。都内で医師&ランニングコーチをしています。

今回はランニングの時の脳内の変化・そして考えて欲しい事についてまとめます。
・短時間で理解・対策ができるようまとめました。
・時間のない方は、黒板だけでもOKです。
・深く知りたい場合は、Noteも読んで下さい(無料)。
では早速いってみましょう!!
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はじめに

朝起きたときジョギングに行くのが面倒だったのに、いざジョギングを始めると気持ちよかったとか、仕事のあとジョギングをしていると、仕事のストレスがいつの間にか吹き飛んでいた経験はありませんか?

ランニングをすると脳内に変化が生じて、気分や思考が変化するんです。ここではその事についてまとめていきます。

ランニングの時の脳の変化①(ランナーズハイ)

まずよく知られているのが、ランナーズハイです。
ランナーズハイの原因は以前、脳内麻薬とも言われるβエンドルフィンという物質が有力とされてきました。ですが最近はカンナビノイドと言われています。

カンナビノイドは100種類以上ある化学物質で、一番有名なのは麻からとれる大麻です。ですが体内で分泌されるカンナビノイドもあり、特に高強度のランニングで分泌されます。抗不安効果や多幸感を生じ、ランニング中に高揚感をもたらします

ランニングの時の脳の変化②

次にウォーキングや軽いジョギングで分泌が高まるセロトニンです。抗うつ効果があり、うつ病患者が運動を勧められる理由はここにあります。

特に時間を決めず、走りたいときにゆっくり走ると効果が高いとされています。逆に強制的時間も決めて高強度で走ると、効果が乏しいとされています(なので通勤ジョグは効果が乏しいかもしれません)。セロトニンの分泌自体は長時間続きませんが、海馬が活性化することで長時間抗うつ効果が得られるとも言われています。

ランニングの時の脳の変化③

ほか、前頭葉の活性化も得られるとされています。
この事は東京マラソン2023を完走された、脳科学者の茂木健一郎先生が著書でも申しています。ランニングにより前頭葉が活性化されると、記憶や思考を整理しやすくなり、精神のメンテナンスが図られると記しています。

文献的には1時間を境に徐々に効果が乏しくなるとも言われれいます。

脳の変化をまとめると

以上をまとめると、
・ウォーキングではセロトニン増加の抗うつ効果
・低強度のランニングではセロトニンの増加・前頭葉が活性化による抗うつ効果と思考力増強効果
・中~高強度のランニングではカンナビノイドの増加・前頭葉が活性化による高揚感と思考力増強効果
ランニングによりこんな効果が期待できるわけです。

どんな状況で考え事をするのがおすすめ?

高強度のトレーニング中は、なかなか考え事をするのが難しくなります。前頭葉が活性化していても、カンナビノイドが出ていても、自分を奮い立たせることで精一杯になってしまうと思います。

おすすめはセロトニンが高くなりやすい朝に、能動的にゆっくりと1時間程度ジョギングすることをおすすめします。セロトニンが高まって、さらに前頭葉が活性化して、思いもよらないアイデアが思いついたり、前向きな決断が出来たりします

考えて欲しいことと、考えないで欲しいこと

そんな状況で考えて欲しいことは、仕事や生活のアイデア(自分はNoteや、このクリエイター記事のことをこの時に考えます)、新しく始めること・決断のつかないこと(前向きな気持ちが後押ししてくれます)などです。

逆に考えないで欲しいのは、食べ物のことや、欲しいもの・旅行のことなどです。贅沢な気持ちや欲望も増してしまいがちです。ランニングの帰りにデザートを食べてしまったり、帰ってから勢いでショッピング・旅行サイトをポチリ!などしないように気を付けて下さい。

以上、最後まで読んで頂いてありがとうございました。

もっと詳しく書いているので、興味があれば自分のNOTEも参照下さい:
ランニング中に考えて欲しいこと~走ることで生まれる脳内の変化から~

今後も「医師・コーチの立場で」役立つことを、分かりやすく発信します。
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<参考文献>
・ランナーズハイの原因物質はβエンドルフィンでなくカンナビノイド
Fuss J et al. A runner's high depends on cannabinoid receptors in mice. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015(Pub-med
・低速でのランニングではセロトニンが増加したが、高速ではなかなか増加しない
Morikawa, R.et al. Interaction between intensity and duration of acute exercise on neuronal activity associated with depression-related behavior in rats. J Physiol Sci 71, 2021(BMC
・時間制限の運動や、強制的な運動ではセロトニンが増加しない
Matsunaga D et al. Difference in the brain serotonin and its metabolite level and anxiety-like behavior between forced and voluntary exercise conditions in rats. Neurosci Lett. 2021(Pub-med
・セロトニンは、脳の海馬の神経新生がなされて抗うつ効果が出る
Kondo M et al. The 5-HT3 receptor is essential for exercise-induced hippocampal neurogenesis and antidepressant effects. Mol Psychiatry. 2015 Nov;20(11):1428-37.(Pub-med
・前頭葉の働きは1時間あたりがピークでその後下がっていく
Wollseiffen P et al. The effect of 6 h of running on brain activity, mood, and cognitive performance. Exp Brain Res. 2016 Jul;234(7):1829-1836. (Pub-med
・ランニングは前頭葉を活性化する
茂木健一郎『最強メンタルをつくる前頭葉トレーニング』(PHP研究所、2020年)(Yahoo!ショッピング

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たくや/ランナーについて
中学・高校・大学と陸上競技部で、そして卒業後もランニングを続けています。フルマラソンのベストは2時間50分。
今は都内の病院で勤務をしつつ、ランステでコーチをしています(日比谷ライドのコーチ紹介)。
発信はおもにNOTEでしています(ビアランニングドクターのNOTE

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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