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【1kg減量すると3分速くなるってホント?】実は体重やタイムによって全然変わる、体重の増減の影響!

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

マラソンでしっかり結果を残すには、減量が必要になることがあります。その効果は「体重1kgで3分」と言われています。ですが、その真偽や根拠について知っている方はほとんどいないと思います。実際のところはどうなのでしょうか。海外ではそれを調べるサイトがいくつかあるので、調べてみましょう。

ランニングでの減量効果を調べる3つのサイト

・RunReps

RunRepsはもともとアメリカのサイトで、ランニングについて様々な情報やツールを提供しています。そのサイトの中に、体重と100m走からマラソンのタイムについて計算するツールもあります。具体的な数式は示されていませんが、ランニングについての世界的名著の「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」を著したダニエルズ博士の理論を用いて、VO2maxの予測変化と体重の変動を計算して導き出しているとのことです。例えば体重が70kgで、フルマラソンを4時間で走るランナーを想定して計算してみます。

体重が70kgでフルマラソンを4時間で走るランナーの減量・増量効果:RunReps HPより
体重が70kgでフルマラソンを4時間で走るランナーの減量・増量効果:RunReps HPより

体重1kgで3分26秒速くなると結果がでました。おおよそ1kgで3分というのであっているようです。

・SportTracks

SportTracksもアメリカのサイトで、ランニングやバイクなどのトレーニングをサポートするサイトです。その計算根拠は示されていませんが、ここにも体重と100m走からマラソンのタイムについて計算するツールがあります。RunRepsの時と同じように、体重が70kgでフルマラソンを4時間で走るランナーを想定して計算してみます。

体重が70kgでフルマラソンを4時間で走るランナーの減量・増量効果:SportTracks HPより
体重が70kgでフルマラソンを4時間で走るランナーの減量・増量効果:SportTracks HPより

ここでの計算では、体重1kgで2分44秒速くなると結果がでました。RunRepsとは異なりますが、1kgで3分というのと大きな差異はなさそうです。

・runbundle

runbundleはイギリスのサイトで、RunRepsと同じくダニエルズのランニングフォーミュラの考えに基づいて計算しているとありますが、詳細は公開していません。ここにも体重とタイムから減量効果を計算するページがありますが、結果は同じダニエルズ博士の理論から計算したRunRepsと異なるようです。前2つのサイトと同じように、体重が70kgでフルマラソンを4時間で走るランナーを想定して計算してみます。

体重が70kgでフルマラソンを4時間で走るランナーの減量・増量効果:runbundle HPより
体重が70kgでフルマラソンを4時間で走るランナーの減量・増量効果:runbundle HPより

結果は、体重1kgで2分51秒速くなるとのことでした。前2つのサイトでの計算結果の間の数字がでました。

3つのサイトから、体重・タイムごとの減量効果を調べてみる

・フルマラソン

前述したように、体重が70kgでフルマラソンが4時間のランナーの場合は、1kgの減量で3分前後速くなることが分かりました。ですがそれ以外のランナーはどうなのでしょうか。様々な体重や速さで、1kgの減量をみてみます。表の数字は3つのサイトの平均値です。

体重1kgの増減が及ぼすフルマラソンのタイムの変化:前記3つのサイトの平均値
体重1kgの増減が及ぼすフルマラソンのタイムの変化:前記3つのサイトの平均値

調べてみると体重の少ないほど、そしてタイムが遅いほど1kgの減量の効果が高いことがわかります。体重80kgで4時間のランナーが、20kg減量するとサブスリー!というわけではないということです。

・10km、ハーフマラソン

これらのサイトではフルマラソンだけではなく、100m走からフルマラソンまで調べられます。ここでは10kmとハーフマラソンをみてみましょう。

体重1kgの増減が及ぼす10km・ハーフマラソンのタイムの変化:前記3つのサイトの平均値
体重1kgの増減が及ぼす10km・ハーフマラソンのタイムの変化:前記3つのサイトの平均値

体重の少ないほど、そしてタイムが遅いほど1kgの減量の効果が高いことがわかります。計算では丁度フルマラソンの半分がハーフマラソン、約四分の一が10kmとなっているようです。つまりは1kg減量するとフルマラソンで3分速くなるランナーであれば、計算上はハーフは1分30秒で、10kmなら43秒速くなるわけです。

さいごに

程度の差はありますが、正しく減量すればマラソンは速くなります。ですが手段を選ばずに水分やエネルギー不足、必要な筋力を落としてまで体重を軽くすればよいというものではありません。たとえば体脂肪が15%以上あるランナーが、目標を達成するために1~2%絞る、その結果としてタイムを伸ばすのが理想だと思います。
また逆に、直前の調整に失敗して体重が増えてしまった!なんていう方は、この数字を元に目標を下方修正してはいかがでしょうか。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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