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【埼玉県鳩山町】55歳で起業、あっという間の30年。社員も地域も元気に!「おしゃもじ食品」

寺西あゆみライター(鳩山町・東松山市)

「お客さんはもちろん、社員も仕入れ先の農家も。とにかく人に喜ばれる仕事がしたい。あとどれくらい人を喜ばせることができるかな、と常に考えて仕事をしてるの」と、『おしゃもじ食品』の斉藤さんは冗談混じりに元気な笑顔でお話くださいました。

斉藤さん(中央)とスタッフの皆さん
斉藤さん(中央)とスタッフの皆さん

鳩山町を代表する素朴な味「おしゃもじ食品」

鳩山町民なら知らない人はいない、手作りのお弁当や名物「鳩まんじゅう」などでおなじみ『おしゃもじ食品』。

『鳩まんじゅう』も全て手作り。ずっしりとして素朴なおまんじゅう。

粒あんがたっぷり。私は実は粒あんが苦手なのですが、こちらはぺろっと2個も食べられました。自然な甘みで飽きません。

おこわやお餅なども、町内の直売所などに出荷しています。

毎朝スタッフが4時頃から出勤し、全て手作りで作業をしています。取材させていただいたのは鳩山町で気温40度を観測した日でしたが、皆さん元気一杯で活気のある厨房でした。

55歳で起業「地域の子どもたちに手作りで安心なものを」

代表を務める斉藤さんは55歳の時『おしゃもじ食品』を立ち上げました。

『おしゃもじ食品』といえば、鳩山町を中心とする地元の食材を使用し、従業員も地域のかたが中心。よく鳩山町を代表して「鳩まんじゅう」が冊子やメディアで紹介されるいうこともあり、鳩山の町おこしのために始められた事業というイメージのかたも多いのではないでしょうか?

しかし、斉藤さんになぜ町おこしをしようと思ったのか聞くと、「町おこしは結果的にそうなっただけで、全ては子どもたちに手作りの、確かなものを安心して食べて健康でいてほしいと思ったから。当時は他にそういうところがなかったから自分たちで作ろうと思って、『おしゃもじ食品』始めただけ」といいます。

手作りのものを食べることが健康で丈夫な体を作る、という考え方は、産婦人科医のお兄さんの影響でした。私の普段の食生活を怒られるのを覚悟でお伝えしたころ、「適当なものばかり食べているから、味がわからなくなってしまってるんだよ。だめだだめだ」と呆れ顔。

そんな私にも、簡単に作ることのできる栄養たっぷりの冷汁の作り方を熱心に教えてくださるところに、みんな斉藤さんのことが好きになって、またお話がしたくて会いにきてしまう理由がわかった気がします。

「従業員は宝」

斉藤さんは会社の代表としてもとてもかっこよくパワフルな女性。誰に提案されたわけでもないのに、従業員の皆さんにボーナスを出したり、配達に出た社員へのガソリン代をきっちり支給したり、退職金制度も作りました。

『おしゃもじ食品』を立ち上げる前は、「嫁ぎ先が農家だったので、ずっと黙々と同じ作業を繰り返していた」といい、会社に働きに出たことは一度もないそう。大手の会社でもそういった手当を少しでも削減しようとする経営者が多いなか、なぜ斉藤さんがそんな発想に至ったのでしょうか?

「従業員は宝。誰だって気持ちよく働けた方がいい。従業員もこうした制度があると自ら前向きに頑張ろうという気になるし、もっとよくしようと毎日に張り合いも生まれる」とのこと。こんな代表のもとでなら働きたい。勤続20年を超えるかたが多数いるというのも頷けます。

最後に斉藤さんに写真撮影をお願いした際に、「じゃあみんな集まって!写真撮るって!」と、その場にいたスタッフのかた全員を当たり前のように集めていたのが印象的でした。そして、写真を撮り終わった後で配達に出ていたスタッフのかたが戻ると、「全員集合した方がいい」ともう一度撮り直しに。斉藤さんにとって、「自分」よりも、働く仲間があっての『おしゃもじ食品』なんだな、と感じた印象的なシーンでした。

目先の自分の利益より「人を喜ばせる仕事がしたい」

コロナ禍でリモートワークが浸透したこともあり、地域に移住するかたが増えました。その地域に名物や名産を作ろうと、「町おこし」がブームともいえる昨今。でも斉藤さんの『おしゃもじ食品』が30年経ってもこんなに地域の皆さんに愛されているのは、「町おこしをして有名になりたい」ではなく、「目の前の人を喜ばせる仕事がしたい」という純粋な想いがあったからこそ。それが結果的に地域住民をも巻き込んだ町おこしにつながったのだと感じました。

「私が世話焼くから、こうして訪ねてきてくれる人がたくさんいる。農業だけをやっていたら出会えなかった、この仕事を始めたからこそ出会えた人たちに感謝だね」と笑顔で語ってくださいました。

斉藤さんをはじめ、『おしゃもじ食品』の皆さんが心を込めて作った素朴なお弁当や、懐かしいおまんじゅう。久しぶりにランチやおやつに、ご家族の皆さんで召し上がってみてはいかがでしょう。

【店舗情報】
おしゃもじ食品
住所:埼玉県比企郡鳩山町大字今宿505−5
電話:049-296-3502
営業日:月・木曜定休
※店頭販売分は午前中に売り切れる場合が多いので、事前の電話予約をおすすめします

ライター(鳩山町・東松山市)

埼玉県鳩山町で生まれ育ち、東松山市で青春時代を過ごした生粋の埼玉県人。「ぶっついた」が方言だと最近まで知らなかった37歳です。埼玉県人にも県外にお住まいの方にも、埼玉県の魅力を伝えたいと思いライターのお仕事を始めました。「意外に埼玉もいいところじゃん!」とみなさんが改めて埼玉愛に気付いてしまうような記事を書けたらいいなと思っています。

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