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【英会話】I may be wrong.って言ったら、不自然だね っていわれた。どこがおかしい?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 仕事で英語を話し始めて20年ほどになりますが、英語を話し始めた時、意外に修正されたのは主語でした。I をIt に、It をI にされたりする。
 そんな私の失敗談や、今も私のまわりで起こっている失敗英語を多少脚色もくわえて、ご披露したいと思います。今回は、読むとNative English Speakerとケンカせずに済むお得なエッセイです。

間違ってるかもしれない のは、なに?

 英会話のレッスンというのは、初めの何回かは自己紹介をしあったり、そのとき面白かった本や映画、スポーツの話をしたりして、けっこう話題があるものなんですが、これがひと段落すると意外に話題がなくなってしまうということがあります。いつもいつも、面白いことが転がってるわけじゃないですからね。
 で、こういう時に便利なのはあらかじめ共通の趣味や好きなことを見つけておくこと。私の場合は、大学で専攻した現代思想(哲学)でした。哲学は第一の学(プローテー・フィロソフィア)と言われるだけあって、教育を受けたNative English Speakerはかなりの確率で勉強しています。私の困った質問も愉しんで一緒に考えてくれたものです。

 そういう流れで、ある時ふとNative English Speaker講師のRichにこんなことをたずねたことがあります。
「どうして、西洋って最果てに興味があるんだろうね」
「どういうこと?」
「おれは天文少年だったんだけど、変わり者あつかいされてねぇ。遥か彼方のこと考えるより、足元を見ろってよく言われたんだよ。でも、日本と違って西洋って、宇宙の渚だの、月だのに興味津々じゃん? 外惑星にも探査機を飛ばしてるし。なんでかな? とおもってさ」
「ああ、そういうことか」
 と、Richは納得。でも、ちょっと答えに困る。まぁ、普通困ります。
 そこで私が考えていた仮説を振ってみる。
「やっぱり、西洋は世界のすべてを知り尽くして、自分のものにしたいのかねぇ」
 哲学には万物(タ・パンタ)を利用して理想にいたるという考え方があるんです。それを念頭に振って見たんですが、ちょっときついい方になったんで、

Please let me know your opinion because I may be wrong. (おれが間違ってるかもしれないんで、君の意見教えてよ)

 って、付け加えてみた。お前の文明は世界(宇宙)征服を企んでるんだろう? って言ったも同然ですからね。ちょっと退(ひい)いてみたんです。
 そしたら、Richがにやり。その言い方でもいいけど、ちょっと変だよとのこと。
 みなさん、私が言った英語、どこがおかしいがお気づきでしょうか?

わたしは足元を見ろと言われても、登山家マロリーの名言をもじって答える小賢しいガキでした。
わたしは足元を見ろと言われても、登山家マロリーの名言をもじって答える小賢しいガキでした。

 Richのヒントは、間違ってるかもしれないのは、なに? とのこと。
 え? 間違ってるかもしれないのはおれだろ? と私は首を傾げてぜんぜんわからない。
 しばらくしても私が答えないんで、Richが仕方なさそうに答えを教えてくれました。
「間違えてるかもしれないのは、徳さんじゃなくて、徳さんの意見でしょ?」
 ですって。なので、
Please let me know your opinion because my opinion may be wrong.
と、するのが自然なのだそうです。
 ちょっと納得がいかなかった当時の私は、Richにどうして自然なのかと食い下がったんですが、Richいわく、
「だって、意見と人格は別のものじゃん」
 と、あっさりのたまう。
 ちょっと冷静に考えてみれば、それはそうなんですが、われわれNative Japanese Speakerはそのあたりが切り分けられてないことを思い知らされた一件でした。

 でも、もっと後になって気づくんですが、この自分の人格と自分の意見は別のものという感覚はNative English Speakerと議論するときに非常に大切です。会社の会議などで、Native English Speakerは率直に反論や批判をしてきますが、それはあくまであなたの意見に対して言っています。むしろ、あなたの意見を良くしようとぐらいに考えている。ぜんぜん、あなたの人格を批判してるわけではないんです。そこを取り違えると、不愉快になったり、怒ったりしちゃう。感覚の違いから人間関係がギクシャクするのはもったいないところです。

 どうぞ、英語を話すときは、自分と自分の意見を切り分けて、相手の批判を聞いてみてください。ネガティヴな感情に引きづられなくなりますよ。おためしを。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。
 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ日本語を英語にする方法で英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任。Native English Speakerのマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されるという経験を多々する。現在は独立し、英会話スキルだけではなく、Native English Speakerとうまく交渉できるスキル習得を目指した英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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