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「花山天皇の出家」は高校で習っていた? 今も京都に残る出家の元慶寺

とらべるじゃーな!穴場ずらし旅、愛好家
元慶寺

関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな!です。以前に古文を教えていたことがあります。百人一首を初め古文の世界は、少しかじっておくと、旅行の世界が広がります。

大河ドラマ公式(外部サイト)

花山天皇が調略で出家

引用 大河ドラマ公式サイト
引用 大河ドラマ公式サイト

大河ドラマ『光る君へ』では、花山天皇(本郷奏多)が、謀略にかけられ退位・出家するという、史実に基づくストーリーがありました(986年、寛和の変)。

現在で言えば、例えば米大統領が、側近にそそのかされ、突然南の島の教会で神父に就き、ホワイトハウスに出入り禁止になるようなもの。歴史上大きな事件です。

花山天皇が出家した元慶寺(京都市山科区)
花山天皇が出家した元慶寺(京都市山科区)

この花山天皇の出家。実は、多くの方が高校時代の古文学習で触れてきています。『大鏡』という歴史書に「花山院の出家」という一節があります。

人にも知らせさせ給はで、みそかに花山寺におはしまして、御出家入道せさせ給へりしこそ。御年十九。

ひそかに花山寺(京都市山科区にある元慶寺の別名)へいらっしゃって、という内容です。年齢は19。

「みそかに」は、ひそかにという意味です。平安末期には、ひそかに、しのびて等の言い回しの方が支持を得て、死語となります。現在で言えば、ヤング、ミーハーのように、徐々に使われなくなっている語と同じ運命を辿りました。

「おはしまし」は、水戸黄門のドラマで「ここにおわすお方をどなたと心得る? 恐れ多くも先の副将軍……」でおなじみの、いらっしゃるという意味の古語の仲間です。

「こそ」は、中学高校時代に、ぞ・なむ・や・か・こそと覚えた方も多いはず。何かを強調したい場合に使う古語で、天皇の出家がいかに異例であるか、書き手の驚きが伝わってきます。今でも、継続こそ大切!のように強調に使います。

躊躇(ちゅうしょ)する花山天皇を急かす藤原道兼

引用 大河ドラマ公式サイト
引用 大河ドラマ公式サイト

「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。神璽・宝剣渡り給ひぬるには」と、粟田殿の騒がし申し給ひけるは、

粟田殿は、藤原道兼の通称です。建物を出ると月明かりがまぶしく、躊躇(ちゅうちょ)を見せた花山天皇に対し、もう後には引けませぬ。天皇の地位の証である宝物はすでに手元にないので、とまくし立てます。

神璽(しんじ)・宝剣は、大河ドラマでは、白い布に包まれ運ばれていた2つの箱です。

ドラマでは、花山天皇は「外が明るいのう。これでは誰かに見られそうじゃ。別の日にいたそうか」と言い、道兼は、宝物のことには触れず「さあ!」とだけ促していました。

いまも残る晴明神社

晴明神社
晴明神社

花山天皇と藤原道兼は、闇夜に包まれた、安倍晴明の自邸付近を通ります。

大鏡では「読み通り退位したようだ。新しい天皇に挨拶に行かねば」という内容の晴明の声が牛車の花山天皇にも聞こえ、大鏡の著者は花山天皇に同情しています。

朝の京都御所
朝の京都御所

現在の晴明神社(京都市上京区晴明町)は、自邸の跡という説もありますが、神社の南東にあたる現在の京都御所の西など諸説あります。

このあと、現在は銀閣で知られる東山を経て、京都の東に位置する山科の元慶寺へと向かいます。

実は穏やかに裏切った?藤原道兼

花山天皇が出家した元慶寺(京都市山科区)
花山天皇が出家した元慶寺(京都市山科区)

粟田殿は、「まかり出でて、大臣(おとど)にも、変はらぬ姿、いま一度見え、かくと案内申して、必ず参り侍らむ」と申し給ひければ、「朕をば謀るなりけり」とてこそ泣かせ給ひけれ。

大鏡によると、藤原道兼(粟田殿)は、いったん父(大臣)に剃髪前の姿で会い事情を申し上げ必ず参りますと、無難に言い訳をしつつ退出します。

一方、大河ドラマでは「私はこれにて失礼いたします。お側にお仕え出来て楽しゅうございました」と、無礼に言い放ちます。ドラマでの道兼像に合わせたようです。

このように古文の原典を、少しだけ知っておくと、もっと大河ドラマが楽しめます。

花山院の出家の全文と現代語訳は、下のページをご確認ください(もくじ91番から飛べます)。

古文テスト対策問題100題|東大卒古文講師が作成(受験ネット)

元慶寺
京都市山科区北花山河原町13
地下鉄東西線「御陵駅」より徒歩20分
拝観時間 8時00分~17時00分
清明神社
京都市上京区晴明町806
地下鉄烏丸線「今出川駅」より徒歩約12分
拝観時間 9時00分~16時30分
※拝観時間は2024年度3月現在

穴場ずらし旅、愛好家

関東周辺の穴場★ずらし旅スポットを紹介。日本テレビに旅の専門家として出演(2023年4月)。Yahoo!ニュースエキスパート公式旅行ライター(2023年7月企画賞)。JTB運営・地理旅行検定取得済み。東京都在住、旅行歴500泊以上。

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