Yahoo!ニュース

宇宙に果ては存在するのか?最新の解釈を解説

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「宇宙に果ては存在する?現在の解釈を解説」というテーマで動画をお送りしていきます。

●観測可能な宇宙の果て

左Credit:ひっぐすたん 右Credit: Frédéric MICHEL and Azcolvin429, annotated by E. Siegel.
左Credit:ひっぐすたん 右Credit: Frédéric MICHEL and Azcolvin429, annotated by E. Siegel.

一言に宇宙の果てと言っても、その定義の仕方次第で複数の果てが存在します。

まず紹介するのは人間が「観測可能な宇宙の果て」です。

ここからは「現在の地球から見る宇宙の姿(左)」と、「現在の実際の宇宙の姿(右)」の2つの画像を使いながら、観測可能な宇宙とは一体何なのかを説明したいと思います。

まず前提として、光が伝わる速度をもってしても億年単位で到達するのに時間がかかるほど宇宙は果てしなく広すぎるので、現在の地球から見える宇宙の姿と、現在の実際の宇宙の姿が異なっています。

例えば地球から1億光年(光速で進んで1億年かかる距離)離れた場所で放たれた光を地球で観測できるのは、光が放たれた瞬間から1億年後になります。

逆に言うと今地球から見ている1億光年彼方からの光は、今から1億年前にその場所から放たれた光です。

2億光年彼方なら2億年前ですし、もっというと太陽の光も今から8分以上も前に放たれたものです。

つまり「地球から遠い場所を見れば見るほど過去の宇宙を見ている」ということになり、右の画像のような現在の宇宙そのままの全体像を見ることができないんですね!

この性質に加え、さらに遠い宇宙では光の速度を超えるほどの速度で膨張しており、宇宙誕生の瞬間から今までの138億年間でそこからの光が地球に届いていない、現在の地球からは観測不可能な領域が存在しています。

先述の通り、現在の地球で観測できる光の中でも古い光ほど長い年月をかけ遥か遠い宇宙から地球にやってきているので、宇宙最古の光をもしも地球から観測できれば、それが放たれた場所が現在の地球から観測できる宇宙の果てになります。

そして実際に宇宙最古の光は、1964年に観測することに成功していて、「宇宙マイクロ波背景放射」という名前が付けられています!

これは宇宙誕生後わずか38万年後に放たれた光であることが知られています。

この現在の地球から観測できる最古の光を放った宇宙空間は、宇宙の膨張と共にどんどん地球から離れて行って、現在は実に465億光年も彼方に位置していると考えられています。

つまり光で観測可能な宇宙の果ては、現在は地球を中心とした半径465億光年の球面ということになるんですね!

地球から観測できる全ての天体はこの球内に存在することになります。

補足ですが、宇宙最古の「光」は宇宙誕生から38万年後に放たれたものなのですが、それよりも前、宇宙が誕生してから本当に間もない瞬間に、宇宙最古の「重力波」(原始重力波)が放たれていると考えられています。

仮にこの原始重力波を観測できれば宇宙の始まりの瞬間の直後にまで遡ることができ、観測可能な宇宙も光で観測可能な限界から、さらに拡大されることが期待されています!

●空間的な宇宙の果て

○全宇宙の広さ

左Credit:ひっぐすたん 右Credit: Frédéric MICHEL and Azcolvin429, annotated by E. Siegel.
左Credit:ひっぐすたん 右Credit: Frédéric MICHEL and Azcolvin429, annotated by E. Siegel.

地球から光で観測できる宇宙の果ては、現在の距離で地球から465億光年彼方ということでしたが、これはあくまで地球から見た姿の限界であり、最初に述べた通り現在の実際の宇宙の姿とは異なった姿を見ているということになります。

では観測可能な宇宙を超えた「全宇宙」は現在はどれほど遠くまで広がっているのでしょうか?

もはや観測不可能な領域なので、これ以降は正確なことは誰も知ることができず、想像や推測交じりに語られる世界となります。

ですが宇宙の最初期に起こったと信じられている「インフレーション」という異次元の速度による宇宙の膨張により、全宇宙は観測可能な宇宙の比ではないほど巨大であると考えられることが多いです。

インフレーションは、宇宙創成の10のマイナス44乗秒後に始まって、10のマイナス33乗秒後に終了しました。

インフレーション前は宇宙の大きさは直径10のマイナス34乗cmで、それがインフレーション直後、いわゆるビッグバンの時には直径1cm以上になっていました。

これは例えるなら直径1の100分の1の大きさしかない球が、直径約1000億光年の観測可能な宇宙の大きさと同程度の球にまで膨張したのと比率的にはほぼ同じです!

○宇宙の形と宇宙の果て

ただしインフレーションの影響で全宇宙がどれだけ広くても、それが有限である限り、「空間的な宇宙の果て」がどのようになっているのか、その外側には何があるのかという問題が出てきます。

残念ながら今のところその辺りについては理解されていません。

ですが、この宇宙の形によって、宇宙に空間的な果てが存在するのかどうかが変わってくると考えられています。

宇宙の形を調べる方法の一つに、「曲率」を調べる方法があります。

曲率とは、宇宙空間の曲がり方を表す量です。

3次元の空間の中に住む私たちは、その空間の曲がり方を観測によって推測することはできても、感覚的にその全貌をイメージすることは困難です。

ですが私たちでも2次元の世界の全貌を理解することはできるので、イメージしやすいように一旦次元を落として考えてみたいと思います。

Credit: NASA / WMAP Science Team
Credit: NASA / WMAP Science Team

伸縮・変形が自在なゴムシートのような2次元世界があるとします。

2次元の世界の形はシートの曲がり方(曲率)によって3パターンの可能性があります。

2次元の世界の住民にとってその世界の形状を直接知ることは困難ですが、平面上に巨大な三角形を描き、その内角の性質を調べることで、2次元世界の曲率を知り、間接的にその世界の形状を知ることができます。

まず画像の一番下のように、曲率がゼロの場合、完全に平らな平面です。

平らな平面の場合は三角形の内角の和は180度です。

次に画像一番上のように曲率がプラスの場合、どの方向にも同じ様に曲がっている状態で、球面のように閉じた2次元世界になります。

この世界の平面上では三角形の内角の和は180度より大きくなります。

そして画像中央のように曲率がマイナスの場合、シートの方向によって曲がる向きが異なり、馬の鞍のような形の世界になります。

この世界の平面上では三角形の内角の和は180度より小さくなります。

この性質は私たちが住む3次元空間でも同じことが言えます。

3次元空間に住む私たちが、同じく3次元空間の宇宙の形状をイメージすることは非常に困難です。

ですが空間内で巨大な三角形を結び、その内角の性質を調べることで、この宇宙空間の曲率を知ることができ、そこから宇宙の形状を間接的に知ることはできます。

Credit: NASA / WMAP Science Team
Credit: NASA / WMAP Science Team

曲率が0の宇宙は平坦な宇宙、+の宇宙は閉じた宇宙、-の宇宙は開いた宇宙と呼ばれています。

閉じた宇宙では体積は有限となりますが、特定の方向に進み続けると同じ場所に戻ってくることができそうです。

この形の宇宙の場合、宇宙の果てというものは存在しなさそうです。

またそれ以外の宇宙では特定の方向にどこまでも進み続けることができ、体積は無限に広がっているかもしれません。

あるいは本当に「空間的な宇宙の果て」が存在するのかもしれません。

Credit:ESO / J. LAW
Credit:ESO / J. LAW

これまでの観測では、この宇宙は平坦な宇宙である可能性が高いとされています。

ですが平坦な宇宙にも色々あり、「平坦なドーナツ型」である可能性が示されたと発表している研究成果もあります。

以下の動画で詳細に説明しているので、興味がある方は併せてご覧になってみてください。

●まとめ

今回の話をまとめると、まず宇宙の果てには、観測可能な宇宙の果てがあります。

光で観測可能な宇宙の果ては地球から約465億光年彼方ですが、原始重力波が観測できれば、さらに観測可能な宇宙の果てが広がるかもしれません。

また、空間的な宇宙の果てについては全くわかっていないことだらけです。

ただし観測可能な宇宙を超えて全宇宙は想像以上に広く、宇宙の形次第では、この宇宙は無限に広く果てはないかもしれません。

宇宙の果てについては、今後人類が完全に理解できるかどうかすらもわかりません。

ですが研究が進み、その辺りのことも徐々に解明されていくのが楽しみです!

https://school.gifu-net.ed.jp/ena-hs/ssh/H25ssh/sc2/21351.pdf
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2020/6688/
https://map.gsfc.nasa.gov/media/990006/
http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/konan-class06/ch5-friedman-eq.pdf
https://note.com/bonbon_xaoc/n/n3e6699bc9ff5

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

宇宙ヤバイchキャベチの最近の記事