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宇宙全体が自転している証拠を観測!?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「宇宙自体が自転しているかもしれない」というテーマで、動画をお送りしていきます。

●銀河フィラメントが自転していた!?

Credit Springel et al. (2005)
Credit Springel et al. (2005)

去年2021年6月、宇宙の大規模構造の一部である銀河フィラメントが自転していることがわかったと、ライプニッツ天体物理学ポツダム研究所の研究チームが発表しています。

宇宙を非常にマクロなスケールで見ると、銀河やガスが集まった明るい領域が、ボイドと呼ばれる何もない空間を取り囲むことで、全体として網目状の構造になっていると考えられています。

この網目構造を宇宙の大規模構造と呼んでいます。

宇宙の大規模構造において、ボイドを取り囲むように分布する物質が高密度で集まった網目構造の網の部分を銀河フィラメント、またはグレートウォールと呼んでいます。

この銀河フィラメントが重なる結び目の領域は物質の密度が特に高く、現在観測されている星や銀河のほとんどはフィラメントの結び目の領域にて発見されているそうです。

このような銀河フィラメントの長さは数億光年という単位になってくるので、仮にこの構造が動き、変化していたとしても、私たちが生きている程度の期間では到底その構造の変化を認識することはできません。

Credit:NASA JPL-CaltechR. Hurt (Caltech-IPAC)
Credit:NASA JPL-CaltechR. Hurt (Caltech-IPAC)

ですがある天体からやってきた光は、その天体が地球に対して近付く方向に運動していれば波長が短く青みがかって見え(青方偏移)、反対に遠ざかる方向に運動していれば波長が長く赤みがかって見えます(赤方偏移)。

これは光の「ドップラー効果」と呼ばれるものですが、このような効果を利用すれば、一見全く動きが見えない巨大な構造でも、実際はどのように運動しているかを理解することができます。

Credit:Peng et al. (2021)
Credit:Peng et al. (2021)

そして観測の結果、銀河フィラメントの片方の部分は地球に対して近付いていて、もう片方は地球に対して遠ざかっていることが判明したそうです。

このような速度の偏りがランダムで起こるのはあり得ないとのことです。

Credit: AIP/ A. Khalatyan/ J. Fohlmeister
Credit: AIP/ A. Khalatyan/ J. Fohlmeister

つまりこの銀河フィラメントは、紛れもなく全体が捻じれるように回転していたんですね!

この結果から、この宇宙にあるあらゆる銀河フィラメントが回転していることが示されたわけではありませんが、実際に回転している銀河フィラメントの実例が発見されただけでも非常に大きな成果です。

これはこれまで発見された中では最もスケールの大きい回転運動であり、これだけ巨大な運動を生み出している力の源がどこにあるのかはわかっておらず、未知のメカニズムが働いている可能性もあるようです。

●宇宙全体が自転している可能性も!?

そして2020年8月にはなんと、宇宙全体が自転している可能性があるという研究成果も発表されています!

宇宙は大きいスケールで見れば、特別な場所も方向もなく、物質は一様に分布していると考えられています。

小さいスケールだと例えば地球のような惑星がある場所とない場所、さらには恒星系の内外、銀河の内外などで全く物質の密度が異なってきます。

ですがいくつもの銀河がまとまった非常に大きなスケールでは場所ごとに、そして方向ごとに物質の密度の差は存在しないと考えられています。

この考え方は「宇宙原理」と呼ばれていて、多くの理論が宇宙原理をもとに成り立っています。

このことから宇宙全体には中心や端といった特別なものがそもそも存在せず、どこをとっても性質が同じであると言えるんですね。

宇宙に場所ごとの偏りがないという宇宙原理をもとにすると、地球から遠方の銀河を多数見た時、それ等の地球から見た自転方向にも偏りがなく、時計回りの銀河と反時計回りの銀河の割合が完全に半々で存在しているはずだと考えられます。

そんな前提のもとでカンザス州立大学の研究者は実に20万個もの銀河の自転方向を観測しました。

するとそれの地球から見た自転方向は完全に均等ではなく、51:49と約2%の偏りが見られたそうなんですね!

2%と聞くと一見誤差のように思えるかもしれませんが、仮に本当に自転方向に偏りがない銀河を20万個観測した際に偶然で2%もの偏りが見られる確率は、実に10億分の1~40億分の1というとてつもなく低い確率なんだそうです!

さらに今回の研究で、地球から遠い銀河、つまり過去の宇宙にあった銀河ほど自転方向の統一性があり、分布の偏りが大きくなることまで判明しました。

つまり宇宙全体で銀河の自転の向きに偏りがあるだけでなく、なんと宇宙の場所や時代ごとにも偏りが見られたという事になります。

この観測結果は、初期宇宙がまるで超巨大な銀河のように自転していたと考えると、場所と時代ごとの銀河の自転の向きの偏りを上手く説明できるそうです。

Credit: AIP/ A. Khalatyan/ J. Fohlmeister
Credit: AIP/ A. Khalatyan/ J. Fohlmeister

そしてこちらが地球から見た全天の地図です。

右にある数字のうち、大きい数字で割り当てられた色で示された領域ほど、銀河の自転の向きに強い偏りがあることが示されています。

このことから、宇宙にもし回転軸のようなものがあるとしたら、それは1つの軸ではなく画像のような複数の軸があるということになるそうです。

何とも不思議な世界ですが、そんな不思議な宇宙に、私たちは住んでいるんですね。

今回は非常にマクロなスケールでの自転について動画にしてみました。

今後さらなる研究が行われることで、思いもしないほどスケールの大きい自転の発生メカニズムが発見されるかもしれません。

https://www.nature.com/articles/s41550-021-01380-6
https://www.universetoday.com/151553/the-largest-rotating-objects-in-the-universe-galactic-filaments-hundreds-of-millions-of-light-years-long/
https://link.springer.com/article/10.1007/s10509-020-03850-1
https://scitechdaily.com/geometrical-patterns-of-200000-spiral-galaxies-suggest-the-universe-has-a-defined-structure/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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