ブラックホールの中身が観測的に判明!?最新研究で判明した衝撃の新事実とは
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ブラックホールはダークエネルギーの塊だった!?」というテーマで動画をお送りしていきます。
先日、宇宙を膨張させているダークエネルギーはなんとブラックホールの中に存在しているという仮説に対する観測的な証拠が初めて示されたと発表があり、大きな話題を呼んでいます。
●ブラックホールとダークエネルギー
まずは今回のメインテーマであるブラックホールとダークエネルギーについて、簡単に概要をおさらいします。
○ブラックホールとは?
ブラックホールは、非常に高密度に物質が集まることで、光を含むあらゆるものが抜け出せなくないほど強大な重力を手に入れた天体です。
ブラックホールは一般的に、非常に重い恒星が一生を終える際に形成される天体であると考えられています。
太陽のような「恒星」に分類される天体は、その星の中心部で起きている核融合反応で外側に膨張しようとする力と、内側に落ち込もうとする重力が釣り合うことでその形状を維持しています。
質量が太陽の8倍以上重い大質量の恒星が一生を終える際、核融合が止まり、重力に対抗する力が失われることで、星の核が強烈に圧縮されてしまいます。
星の一生の最期の瞬間では、強烈な重力によって電子が原子核内部の陽子と反応し、中性子に変化します。
つまり星の中心部は中性子ばかりの構造になります。
そうしてできた中性子同士は、お互いが「縮退圧」と呼ばれる力で反発しあい、それらをさらに押しつぶしてくっつけようとする重力と釣り合い、安定した状態になります。
このように自身の重力と、中性子の縮退圧とが釣り合っている状態で形を維持している天体が、「中性子星」と呼ばれるものです。
また、中性子の縮退圧ですら耐え切れないほど星の重力が強い場合、それ以上重力に対抗する力がなくなってしまい、重力によって際限なく一点に圧縮が続くと考えられています。
このように重力があまりに強すぎてそれに対抗する力を失い、「特異点」という一点に向けて全質量が落ち込み続けている天体を、ブラックホールと呼んでいます。
通常の天体は、自身の重力に対抗する力を持ちます。
先述した例でいえば、恒星なら核融合による膨張力で。
超高密度の中性子星ですら、中性子同士の縮退圧で自身の強大な重力に対抗しています。
ですがブラックホールだけは重力に対抗する力を持たず、特異点に向けて永遠に圧縮が続いているという点で、他のあらゆる天体とは一線を画した存在と言えます。
○ダークエネルギーとは?
そしてダークエネルギーは、宇宙を収縮させようとする物質の重力に逆らって、反対に宇宙を加速膨張させている未知のエネルギーのことです。
当初、宇宙膨張の原動力は宇宙誕生の瞬間に起きたインフレーションによる初動のみで、それ以降の宇宙で膨張を加速させるものは存在しないと考えられていました。
この状況は、地球表面で上にボールを投げ上げる時と似ています。
ボールは地球の重力に逆らう方向に初速を与えられましたが、地球の重力に引かれるため上昇は減速していき、ついには落下を開始します。
同様に宇宙は誕生時に膨張方向に初速を与えられましたが、物質の重力で徐々に膨張速度は減速し、収縮に転じると考えるのが自然です。
当然、投げ上げたボールの上昇速度が未知の力を受けて加速するなんてことは考えられないように、物質の重力に引かれる宇宙の膨張が加速するなんてことも考えにくいです。
ですが1990年代、実際にそんな奇妙なことが現実で起きていることが判明しました。
つまり宇宙の膨張は加速していたというわけです。
重力に逆らって宇宙膨張を加速させる、本当によくわからない力の源は、ダークエネルギーと呼ばれています。
重力に逆らって宇宙膨張を加速させているので、宇宙全体の物質よりも大きなエネルギーを持っています。
現在でもダークエネルギーの正体は全くもって不明ですが、ダークエネルギーは空間自体が持つ性質であり、宇宙膨張によって空間が増えれば、ダークエネルギーも増大するという説もあります。
●ブラックホール=ダークエネルギーの塊仮説
実はブラックホールはダークエネルギーの塊であるという奇抜な仮説が、以前から提唱されていました。
仮にこれが本当なら、ダークエネルギーの出所とブラックホールの特異点の存在という、現代宇宙論における大問題2つを一気に解消できる可能性があると言われています。
ダークエネルギーの出所については当然よくわかっていませんが、ブラックホールがダークエネルギーの塊である場合、これがダークエネルギーの供給源である可能性があります。
つまりブラックホールが成長すると、ダークエネルギーが増大し、宇宙の膨張につながるというのです。
そして反対に、宇宙膨張でダークエネルギーが増えると、それに伴ってダークエネルギーの塊であるブラックホールも成長すると言います。
宇宙の膨張とブラックホールの成長の間には、一方が起こればもう一方も起こるという、相補的な結びつきが存在している可能性があります。
そして仮にブラックホールがダークエネルギーの塊なら、ブラックホールの特異点の問題も解消されます。
そもそも特異点は、物質の密度や重力など様々なパラメータが無限大に発散してしまうことから、物理理論が破綻してしまう非常に厄介な点です。
そのような特異点はできれば存在していない方が好都合なのですが、仮にブラックホールがダークエネルギーの塊なら、なんとブラックホールに特異点が存在する必要がなくなります。
先述の通り、ブラックホール以外の一般的な天体は自身の重力に対抗する何らかの抗力が存在し、その形を維持することができているのに対し、ブラックホールの場合は重力に対抗する力がないため、永遠に物質が落ち込む「特異点」が存在するのでした。
ですが仮にブラックホールがダークエネルギーの塊なら、重力に対してダークエネルギーが抗力として働きます。
そのためこのようなブラックホールでは、特異点の存在という大問題をも解決できます。
そしてこの仮説は、今紹介したダークエネルギーの出所と特異点の存在という2つの大問題を、新たな概念を追加せず、ブラックホールとダークエネルギーという既存の概念を上手く繋ぎ合わせるだけで解決できる点も画期的です。
●未知の過程で成長するブラックホール
このような背景があるなか、ハワイ大学などの国際研究チームはつい先日、ブラックホールがダークエネルギーの塊であるという仮説に対する初の観測的証拠を発見したと発表しました。
その観測的証拠とは、「未知の過程で成長を遂げる超大質量ブラックホールの存在」です。
研究チームは巨大な「楕円銀河」という分類の銀河の中心にあるブラックホールに着目しました。
一般的な理解では、ブラックホールは周囲のガスなどの物質を取り込んだり、ブラックホール同士で合体したりすることで成長していくと考えられています。
ですがこの楕円銀河は宇宙初期に形成され、早い段階で星形成が終わり、ガスが残っていません。
そのため楕円銀河中心のブラックホールは早い段階で成長材料を失い、成長が止まったと考えられています。
研究チームは約20億年前、約70億年前、約90億年前の3つのグループの楕円銀河を観測し、その中心にあるブラックホールの質量を観測データをもとに計算しました。
楕円銀河の中心ブラックホールは成長が止まっており、該当のどの年代の楕円銀河を見てもブラックホールの質量に変化はないはずが、実際は過去の楕円銀河を見るほどブラックホールの質量は大幅に小さくなっていました。
具体的には90億年前から70億年前まででブラックホールは約7倍の成長、さらに90億年前から20億年前まででは約20倍もの成長を遂げていることが判明しました。
成長材料が尽きたはずの楕円銀河において見られるこれだけ大幅なブラックホールの成長は、従来の理論による成長過程だけではとても説明ができず、何か未知の過程で成長している可能性が示唆されます。
先述の通り、ブラックホールがダークエネルギーの塊であれば、宇宙の膨張に連動する形でブラックホールも成長する可能性がありました。
その可能性を睨んだ研究チームはさらに、宇宙膨張とブラックホールの成長の関係性を数値化しました。
これは「k」という定数で評価されています。
kの値が0なら、宇宙膨張とブラックホールの成長は無関係であることを示します。
一方、数値が大きいほど宇宙膨張に合わせてブラックホールが大きく成長しやすいことを示します。
分析の結果、kは3である可能性が最も高いと判明した上、これが0である可能性はほとんどないことも示されました。
さらに宇宙膨張が加速した時代についても、この数値が示す内容と観測的事実とがうまく合致しているとのことです。
この結果は、ブラックホールの正体がダークエネルギーの塊であり、宇宙膨張とブラックホールの成長が相補関係にある可能性を示す、初の観測的事実です。
この発見は、宇宙の加速膨張の謎と、ブラックホール内部の特異点の謎という、2つの巨大な謎を解決する手掛かりとなるかもしれません。
一方で専門家の中では、この結果に懐疑的な意見を寄せる声も少なくないようです。
いずれにせよ、今後さらに詳しい研究が行われて、この説にまつわるさらに深い洞察が得られることに期待がかかります。