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宇宙に反物質が存在しない謎解明へ前進!銀河の分布に非対称性を新発見

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「銀河の分布に非対称性を新発見」というテーマで動画をお送りします。

銀河の分布という非常にマクロなスケールにおいて、明確な非対称性が発見されたと話題を呼んでいます。

この新発見は、なぜこの宇宙に反物質ではなく、物質から成る私たちが存在できているのかという、宇宙の根本的な大問題を解決するための手掛かりになる可能性があると期待されています。

今回の動画ではこの宇宙に反物質が存在しない問題について触れつつ、今回の発見の詳細とその偉大さについて解説していきます。

●なぜ宇宙に私たちが存在できるのか?

○反物質が存在しない謎

粒子には必ず対応する反粒子が存在します。

粒子と反粒子は質量が等しいですが、電荷があればその符号が反対です。

例えば-の電荷を持つ「電子」の反粒子には+の電荷を持つ「陽電子」が存在し、+の電荷を持つ「陽子」の反粒子には-の電荷を持つ「反陽子」が存在します。

この宇宙にある粒子と反粒子は、宇宙誕生直後に「対生成」という現象によって、宇宙空間を満たすエネルギーから同数だけ生成されたと考えられます。

また、粒子と反粒子が出会うと「対消滅」を起こし、エネルギーとなって両方の粒子が消滅します。

そのため現在の宇宙に存在する粒子と反粒子の数は等しくなるはずですが、実際は私たちの体を含むあらゆる物質が粒子から成り、反粒子から成る反物質はほとんど存在しません。

何らかの原因で誕生直後の宇宙において粒子の方が反粒子よりも多く生成され、対消滅して余った粒子が現在の宇宙の物質を形成していると考えられていますが、

詳細なメカニズムについてはよくわかっておらず、天文学における未解決の大問題の一つに数えられています。

○パリティ対称性の破れ

反物質が消え去った詳細な原因については謎のままですが、手掛かりはあります。

それは「パリティ対称性の破れ」という概念です。

ビッグバンの瞬間に「パリティ対称性」が破れていたとすれば、粒子の方が反粒子よりも多く生成されたことを説明できる可能性があると考えられています。

ではパリティ対称性とは一体何なのでしょうか?

厳密なことに触れると少し複雑になりますが、簡略化して「物体を鏡写しにしても同じ物理現象が成り立つこと」とよく例えられます。

私たちの日常スケールでは、鏡の世界が対称なのは言ってみれば当たり前のことです。

対称じゃない動きが見られたら、心霊現象を疑ってしまいます。

ですが実は素粒子が登場するような非常にミクロなスケールでは、パリティ対称性が成り立たない、つまりパリティ対称性が破れる現象が存在することが知られています。

しかしそれは非常にミクロなスケールでのみ起こることであり、宇宙に反物質が存在しないことなど、スケールが大きいことまでは説明できません。

ですが「ビッグバンの瞬間に」何らかのメカニズムが働き、パリティ対称性が破れていたとすれば、わずかに物質が反物質より多く生成され、現在の物質優位の宇宙が形成された一つの要因となった可能性があるのです。

その辺りの詳細なメカニズムは不明ですし、そもそも本当に誕生直後の宇宙でパリティ対称性が破れていたかどうかすらも正確なことはわかりません。

●銀河の分布に非対称性を新発見

素粒子スケールではなく、非常にマクロなスケールに及ぶパリティ非対称性を見つけることで、ビッグバンの瞬間もパリティ対称性が破れていたと推測することができ、反物質が存在しない謎の解明に繋がる可能性があります。

そんな中フロリダ大学などの研究チームが、非常にマクロなスケールに及ぶ、確かなパリティ非対称性の証拠を新たに発見し、その研究成果を2023年5月に公表しました。

研究チームが行ったのは、宇宙に実在する銀河からランダムに4つを選び、それらを結んだ四面体を描き、浮かび上がった四面体の非対称性を検出することです。

四面体はどのように回転させても、それを鏡写しにしてできた四面体と形状が一致しません。

ここで左のような四面体を「左寄りの四面体」、右のような四面体を「右寄りの四面体」と呼ぶことにします。

初期宇宙のパリティ対称性が保たれているなら、ランダムに4つの銀河を選んで四面体を描いたとき、左寄りの四面体と右寄りの四面体がちょうど半々で現れるはずです。

研究チームは100万個以上の銀河から、1兆通り以上の四面体を描き、それらの形状を比較しました。

その結果、なんと左寄りの四面体と右寄りの四面体の存在比に明らかな偏りがあることが判明したそうです。

実際は偏りが存在しないにもかかわらず、見かけ上偶然に偏りがあるように検出されてしまった確率は、約10兆分の13とされています。

これはほぼ間違いなく偏りは実在していると言えます。

この偏りが必ずしも、ビッグバンの瞬間に生じたパリティ対称性の破れによって生じたものであるとは限りません。

しかし宇宙の起源を探る今後の研究において、重要な手掛かりとなる可能性のある、大きな発見であることは間違いないでしょう。

https://news.ufl.edu/2023/06/big-bang-physics-laws/
https://academic.oup.com/mnras/article/522/4/5701/7169316?login=false
https://www2.kek.jp/ja/newskek/2003/janfeb/belle-cp2.html
http://musashi.phys.se.tmu.ac.jp/~yasuda/ou2009-3.pdf
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/40/4/features/06.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits/14/6/14_6_6_36/_pdf
サムネイルCredit:NASA, ESA, and M. Montes (University of New South Wales, Sydney, Australia)

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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