現代人が唯一間近で見れた超新星の「実写動画」と、明かされた中心部の謎
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「現代人類が唯一間近で見れた超新星と、最強宇宙望遠鏡が解明した中心部の謎」というテーマで動画をお送りします。
現代の人類が唯一間近で見れた超新星爆発「SN 1987A」は、その中心部が高密度の塵やガスに覆われているため、地球から非常に近くにあるにもかかわらず多くの謎に包まれています。
そんな中、最新最強の宇宙望遠鏡「ジェイムズウェッブ」の活躍により、超新星の中心部に残された謎が徐々に解き明かされつつあります。
本記事では、超新星「SN 1987A」とその新発見について解説します。
●超新星「SN 1987A」
今から約35年前の1987年の2月23日、私たちの住む天の川銀河から約16万光年離れた所にあるお隣の銀河大マゼラン雲にて、超新星爆発が発生しました。
超新星爆発は、大質量の恒星の一生が終わる瞬間に起こる、宇宙の中でも最大級のエネルギーを誇る大爆発現象です。
爆発を起こしたのは太陽の20倍程度の質量を持ち、高温で青く輝く青色超巨星でした。
この超新星爆発は、1987年で最初に観測されたSuperNovaということで、「SN 1987A」と命名されています。
SN 1987Aは1987年2月23日に初めて確認され、そこから徐々に増光して5月にピークを迎え、その後さらに数か月かけて徐々に減光していきました。
ピーク時の視等級は約3等級と、地球から肉眼でも十分に見える明るさとなったようです。
爆発を起こした元の恒星の明るさは約12等級だったので、最大で元の5000倍にまで増光したことになります。
太陽と比べると実に1億倍の明るさとのこと…流石に超新星爆発なだけあり、桁違いなエネルギーです。
SN 1987Aは、最近地球に近い場所で発生した唯一の超新星爆発で、天の川銀河内ではないもののその隣の銀河で発生したことから、過去350年間で唯一肉眼で見えるほど明るく輝いた超新星となっています。
超新星爆発の発生の瞬間、日本のスーパーカミオカンデの前身であるカミオカンデを含む3か所の検出器がニュートリノを検出しました。
これは超新星爆発からニュートリノを検出した初の事例で、これを讃えて2002年にはカミオカンデを利用した研究チームがノーベル賞を受賞しています。
各地で検出されたニュートリノの個数から、超新星爆発によって放たれたニュートリノの個数は10^58個、総エネルギーは10^46Jにも及ぶと計算されました。
このことから、爆発によって太陽がこれまで46億年間で放出した総エネルギーの1000倍のエネルギーがわずか10秒間で放出されたことが示されました。
また超新星SN 1987Aの周囲には、美しいリングが重なったような構造が見られることが知られています。
地球からでは一見平面的な構造のように思えますが、実際はこのガスはこのような複雑な砂時計のような形をしていると考えられています。
●SN 1987Aのタイムラプス
超新星SN 1987Aは、観測技術が進歩した現代において天の川銀河の付近で発生した超新星なので、発生した比較的初期から映像が残っており、それらを組み合わせることでこの周囲のガスの変化を確認できます。
貴重な映像です。
超新星爆発によって吹き飛ばされた星の外層のガスは周囲に拡散していき、「超新星残骸」と呼ばれる星雲を形成します。
ですが実はSN 1987Aの超新星残骸はこのリングの内部にあるもやもやした構造です。
では周囲のリングは何かというと、超新星爆発が起こる一因となった現象によって、爆発より前の別のタイミングで放たれた恒星のガスとなっています。
爆発より前に放たれたガスに、より高速で移動する超新星残骸のガスが追い付きぶつかり合うために、このように爆発から年数が経った後に逆に周囲のリングが明るく輝いていると考えられています。
そしてその外側にある明るい部分も、同様に爆発時に超高速で放たれたガスが周囲の物質と衝突することで形成されたものであるとのことです。
●中性子星の証拠を発見!
超新星SN 1987Aを起こした星の核は、自身の強大な重力で圧縮され、中性子星が形成されたと考えられています。
ですが宇宙スケールでは爆発後間もないこともあり、現在も高密度の塵やガスで隠されており、中性子星の姿の直接観測は未達成です。
そんな中2020年7月、SN 1987Aの爆心地付近に中性子星が存在している痕跡を捉えることに成功したと発表がありました。
国立天文台が保有する、南米チリにあるアルマ望遠鏡の超高解像度観測により、SN 1987Aの残骸内部に周囲よりも高温な塵の集まりが発見されました。
超新星爆発が起きてから間もない中性子星は、表面温度が500万度にもなります。
画像で示された範囲の高温領域が広がっていることは、中性子星の表面温度に関する理論的な予測と矛盾していないそうです。
また高温領域は、超新星に関する構造全体の中心部よりやや左に寄っています。
実はこの中性子星は超新星時に秒速数百kmという速度で中心部からはじき出されたと予測されており、これも観測結果が予測に矛盾しません。
以上のように理論的に予測されている中性子星の温度と位置が観測結果と合致していることから、この高温領域は中性子星の存在を間接的に示すものとなっています。
○JWSTの偉業
さらに2024年2月には、最新最強の宇宙望遠鏡として知られる「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope, JWST)」が、中性子星が存在するより強い証拠を発見したと発表がありました。
JWSTは2023年9月にも、SN 1987Aのこのような美しい実写画像を公開しています。
リング内部にある鍵穴のような形をした超新星残骸がはっきりと見え、その周囲には黒っぽい三日月状の構造が見えますが、この三日月状の構造は圧倒的な観測性能を誇るJWSTが初めて明らかにした構造です。
その正体は超新星爆発で噴出したガスの外層の一部と考えられています。
そして2024年2月に公開された最新画像には、JWSTに搭載された観測装置「MIRI」と「NIRSpec」によって撮影された実際の映像が掲載されています。
「MIRI」の映像には、1個の電子を失ったアルゴン原子が放つ赤外線が、「NIRSpec」の映像には、18個の電子のうち5個も失ったアルゴン原子が放つ赤外線が映し出されています。
原子が電子を失うには、X線などの強いエネルギーを持った光子と衝突することで、電子が原子核から受ける電気的な力を振り切るほどのエネルギーを獲得する必要があります。
よってSN 1987Aの中心部で多くの電子を失ったアルゴンが発見されたということは、そこに高エネルギーの光子を放射する超高温物質が存在していることを示しています。
研究チームが行ったコンピュータシミュレーションにより、そこに中性子星が存在している可能性が高いことが判明しました。
今後時間が経つにつれ、SN 1987Aの中心部を覆うガスや塵が晴れるため、さらなる観測により、SN 1987Aの中心部で何が起きているのかが次第に解明されていくはずです。
遠くないうちに、そこに存在するはずである中性子星の姿を直接観測できるようになるかもしれません。
大質量星のダイナミックな最期の瞬間を理解するために、地球から非常に近い超新星SN 1987Aは絶好の観測対象です。
今後もこの天体の研究から目が離せません。