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大人の日帰りウォーキング 健康の大切さを実感した妻の目の前で、不健康に甘いコーラを一気に飲んだ夫の話

わか子ライター

もうすぐ定年を迎える良人と、まだ私はアラフィフだと言い切る由美子夫婦。これからの趣味として、街道歩きの旅を始めることにした。
初回の今日は、朝9時30分に江戸東京日本橋を出発して甲州街道を歩き進み、時刻は13時、ようやく新宿駅南口まできた。ここまで歩いた距離は10kmになろうとしていた。

甲州街道は、JRの線路を長い高架で渡っている。西に向かって歩いている右手には新宿駅南口、左手にはバスタ新宿がある。この辺りは奇麗に整備されてとても便利になった。

甲州街道 国道20号 バスタ新宿
甲州街道 国道20号 バスタ新宿

今日が初回なので仕方がない。そうかもしれない。でも、言い出したのはよし君だよ、なのに。
歩く旅に行こうと言い出したのは良人なのに、コースの下調べをしていなかったことで、妻の由美子はイライラし不機嫌でもあった。しかし、由美子はそう思いながらもイライラした自分にも悪い所があると思い直して、何とか二人はけんかをせずにここまで歩いてこれた。

そうそう、今日のゴールを決めなきゃ。何も言わないで黙って歩くのも空気が悪くなる。後で、文句を言わないように、話をしておこうか。
よし君、そろそろ10km程を歩いてきたよ。今日はどこまで歩こうか。
今は13時30分か、家まで帰る時間もあるから16時には終わりたいかな。そうすると、後6km、7kmぐらい歩けるか。環七をこえて、京王線の明大前、その先の桜上水駅はどうだろう。距離は桜上水まで7km未満。とりあえず、行けるところまで頑張ってみるか。
スマフォを取り出して距離を調べながら、頑張ってみると言ったよし君の言葉は、自分自身に向けて言ったのがわかった。

一直線に伸びている国道20号には、首都高の高架が屋根のように覆いかぶさる都会ならではの風景を感じる。視界から青空が遮られる窮屈感があるけれど、夏は日影になってよい。
そう思いながら持参しているお茶を飲み、残りが少なくなっているのに気付いた。
よし君、飲み物はまだある?
良人はまだ残りはあるけれど、ペットボトル1本は飲み干していた。

※日帰りウォーキングで必要な飲み物の量
良人と由美子は、1人分でペットボトル(500ml)2本を持参していました。
日帰りのウォーキングにどれぐらいの水分が必要かと言われると、個人差があるのでこれだけあれば大丈夫だと言えず、ありきたりで参考にもならない返事となってしまいます。
私(筆者)は水分をしっかりと飲むので、寒い季節でも500mlを3本以上持参しています。午前中に1本、昼食時に1本、午後1本を飲む感覚ですが、距離を長く歩けばそれでも飲み切ってしまうので、多めに持参したり、途中で買い足します。
街道歩きの良い所は、基本的に街中を歩くのでコンビニや自販機で飲み物を買う事が出来ることです。
水分を飲みすぎるとトイレが心配と思われるかもしれませんが、途中でトイレに行くぐらいに水分は飲んだ方が良いです。脱水や熱中症になるのを防ぐ意味でも、水分はしっかりとりましょう。

2人はコンビニに立ち寄り飲み物を選ぶ。
普段から健康に気遣っている由美子は麦茶、しかも、量が多いペットボトルを選ぶのに対し、良人はコーラを選ぶ。ダイエットコーラではない赤いラベルに由美子は気付いていた。

少し休憩しようか。
コンビニを出た2人は、街道沿いにある公園に入ると、公園内に水道もトイレもあった。2人は水道で顔と手を洗い、ベンチに座り一息ついた。
良人は、コンビニで買ったコーラをごくごくと飲み、良く冷えていて美味しいと言う。
確かに、冷えたコーラは美味しいけどね。由美子も、買ったばかりの冷たい麦茶を飲む。
お団子、食べようか。あんこにみたらし、のり巻き、もう一つは、よもぎあんだね。
良人はそう言いながら、歩いている途中、街道沿いにあるお店で買ったお団子をリュックの中から取り出した。
よし君、コーラにお団子だね。大丈夫?
由美子は笑いながら言った。
確かに、コーラとお団子は合わないかな。
良人はリュックのサイドポケットに入れている、ペットボトルを取り出してお茶を飲んだ。そして、お団子は甘くないのり巻きを手に取った。
由美子はよもぎあんを手に取った。
11時ごろにカフェで早めの昼食を軽く食べたけれど、歩く旅はおなかが空く。程よい甘さのあんこはよもぎ団子によく合って、とてもおいしかった。
みたらしも食べていい?
由美子は再び冷たい麦茶をごくごく飲んで、みたらし団子に手を伸ばした。
新宿にお店を出している和菓子店のお団子は美味しいに違いないけれど、それだけではない。
どんなに美味しい物でも、おなかが空いていなければそれほど美味しいと感じない。ここまで歩いて運動をしたからお団子の本来のおいしさ以上に、特別なおいしさを感じた。

由美子は、ふと思った。
人生は後何年、残っているのだろう。80歳まで生きるとして私は後25年か。
いつまで、元気でいられるのだろうか。
いつまで、自分の足で歩けるだろう。
いつまで、食事はおいしいと感ることができて、自分の手で食べられているのだろうか。
そう思うと、お団子をおいしいと思いながら食べられている自分は幸せだと思った。
これから先には必ず老いがやってくる。
それは、誰もが平等であり、歳の数だけ老いていく。変わらないし、変えられない。
しかし、老い以外でも大きな病気をすれば、ある日突然に自分で自分の事が出来なくなってしまう。糖尿病や高コレステロール血症、高血圧などの生活習慣病が原因で、脳卒中や心臓病になり後遺症が残り、日常生活がそれまでのように送れなくなってしまったという話も聞くようになってきた。
日常の生活習慣を健康的に変えるのは難しいし、大変な事かもしれないけれど、ある日突然、大きな病気を発症し、今までの生活が出来なくなる方がつらいと思う。そう思うと、答えは1つか。健康で楽しく過ごせる日常か。
楽しく運動は、できるかもしれない。

健康って大切よね。お団子、おいしいね。
由美子は、お団子を食べながらそう言った。
そうだね。
良人はそう言いながら、不健康の代名詞のように言われるコーラを、気まずそうに一気に飲み干した。

甲州街道、3番目の一里塚だったかもしれないと言われる笹塚跡(渋谷区笹塚2丁目)
甲州街道、3番目の一里塚だったかもしれないと言われる笹塚跡(渋谷区笹塚2丁目)

お団子を食べて休憩をした二人は、目的地にした桜上水駅に向かって歩き進む。途中、笹塚跡を探し、何とか説明版を写真に収めたその先の残り4kmは、消化試合のようにひたすら歩き進んだ。
次第に、2人の長く歩いた両脚は重くなってくる。お互いに話しかけることもなくなり、無言のままゴールに向かって歩き続け、16時過ぎ、ゴールとした京王線桜上水駅に到着した。
まるで、何かの修行のように感じた2人だった。

今回の歩いたコース(約16km)

Googleマイマップ
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ライター

東京都在住のおばさんです。子育てが落ち着いてきた頃より趣味で登山や街道歩き等を始めました。歩く旅は大変だというイメージがありますが、歩く事で解る楽しみもあります。実際に歩く旅をして、歩く旅の楽しさをお伝えしたいと思っています。

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