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大人の日帰りウォーキング マイボトルを愛用する私が、ペットボトルのお茶を買うのを節約出来ると思う理由

わか子ライター

牛丼店で昼食を完食したおばさん三人は、途中のコンビニでペットボトルの水分を購入し、再び歩きはじめた。
お天気が良く、空には青空が広がっているこの日では、気になるのは紫外線。もちろん帽子もかぶるけれど、日焼け止めは欠かせない。顔や腕、首周り等に丁寧に塗る。
「明子、顔が白くなっているわよ」
日焼けをしたくない気持ちはおばさん共通の思いであり、それ以上に気になるのは日焼けの後に出来るシミだったりする。しかし、どう見ても日焼け止めを塗りすぎた顔をしている。
「そう?でも誰も見ていないわよ」
確かに、ひたすら街道を歩いているおばさんを誰も見ていないと思うけれど、通りかかった人がたまたまでも見かけてしまうと、かなりびっくりするだろう。

江戸時代に造られた五街道の1つである東海道を、日帰りで歩き繋げる旅を始めて今日が2日目になる。朝9時30分に出発してから5km程を歩き、ようやくお昼を食べ終えた。時刻は13時になろうとしている。
三人は、歩いている旧東海道で国道15号(第一京浜)が、都内の幹線道路の環状八号と立体交差になっている場所にさしかかった。国道15号が地下を通り抜けている為、歩行者はそのまま側道を進み、環状八号線の信号を渡る。
「何で、環状八号線なのか知っている?」
靖子が言った。晴美と明子の頭の中に???が並び立っていると、
「環状8号、7号だから、6号、5号、4号と、内側に向かって1号まであるのよ」
それは知らなかった。
環状8号は環八、環状7号は環七。そのまま都心方面に向かって一番内側が環状1号線で皇居の周りの内堀通りになるという。そうすると、環状2号線は外堀通りか。
「三ツ目通りって聞いたことない?四ツ目通りとか…」
靖子の言葉に明子が答える。
「目が三つ?じゃないよね…。この流れだと、三つ目、四つ目だから、環状三号と、環状4号になるのよね。でも、三つ目と四つ目はどこにあるの?」
三つ目通り、四ツ目通りは、皇居から東側を流れる隅田川を渡った下町になる江東区から墨田区あたりにあるという。成田山新勝寺の東京別院である深川不動尊や富岡八幡宮がある江東区は交通も便利だし、距離も東京駅や銀座に近い。その北側は水戸街道(国道6号)が通る墨田区になり、両国や錦糸町、亀戸等があり、この辺りも古くらの街である。
「じゃ、五つ目と、六つ目は?」
同じ調子で、五つ目、六つ目と聞いているのが明子らしい。
環状5号は明治通り、環状6号は山手通りだという。皇居からは西側にある池袋や新宿、渋谷の辺りでは、山手線の内側に環状5号の明治通り、外側に環状6号の山手通りがある。そして、山手通りの下には、日本で一番長い車が走れるトンネル「山手トンネル(首都高中央環状線C2)」があり、日本で一番長い道路トンネルが都心にあるのに驚く。日本で一番長い道路トンネルは「関越トンネル」だと思っていたけれど、2015年に山手トンネルが開通してから関越トンネルは二位になっている。
「なるほど。内側から環状1号内堀通り、2号外堀通り、3号三ツ目通り、4号四ツ目通り、5号が明治通りで6号が山手通り。そして、環七、環八ね。納得!」
明子が右手の指を折り曲げながら数えて復唱する姿に真面目だなぁと感心する。明子は真面目である。そして、真面目過ぎて周りが見えていない時もあるのを、明子も靖子も知っている。三人は高校の同級生であり、卒業後は進学や就職、結婚で疎遠になったこともあるけれど、それでも付き合いは長い

六郷神社(大田区東六郷三丁目)
六郷神社(大田区東六郷三丁目)

「そろそろ、多摩川だね」
道路の脇に六郷神社があった。旧東海道は、この先にある多摩川を六郷の渡しで渡っていた。江戸時代の初期には両国、千住と一緒に江戸三大大橋の1つとして、東海道が通る多摩川にも橋が架けられていたが洪水で何度も橋が流されてしまい、船で渡るようになったという。
「この辺りの地名が六郷なのね。まさか、一郷、二郷もあるのかな?」
明子は、先ほどの話の流れを汲んでそう言うと、靖子がスマフォを取り出して検索する。
「残念、六つ村が集まって六郷村になったからとあるわよ」
六郷には、日本橋から4里目になる一里塚があったとされている。一里が3.927kmで計算すると4里は約15,7kmであり、江戸時代の旅人では半日で歩く距離になる。一里塚の場所は六郷神社の近くだったらしいが、詳しくは解っていないという。
六郷神社を過ぎると、多摩川に架かる六郷橋へと向かい、国道15号の側道から階段を登り多摩川の土手に出た。河川敷には大きなグランドやテニスコートがあり、川の向こうには、高いマンションが立ち並ぶ川崎の街が広がっている。

多摩川に架かる六郷橋(大田区仲六郷4丁目)
多摩川に架かる六郷橋(大田区仲六郷4丁目)

多摩川は、奥秩父山塊の山深い場所にある笠取山に水源があり、全長は138km。日本の川の長さでは25番目になる。

笠取山にある小さな分水嶺
笠取山にある小さな分水嶺

多摩川上流にある「奥多摩湖」
多摩川上流にある「奥多摩湖」

一番長い川である信濃川(367km)や、二番目に長くて、日本一流域面積が大きい利根川(322km)のように話題性は少ない。東京都や神奈川県に住んでいれば馴染みがある川だけれど、知名度としては低いかもしれない。
旧東海道の川を思い浮かべても、「箱根八里は馬でもこすが、こすにこされぬ」と、わざわざ言葉を付けて「大井川」と答えてしまう。

三人は六郷橋を渡り神奈川県に入った。
「東京から歩いてきて、神奈川に突入するって貴重な体験かも」
確かに、電車で便利に移動できるような時代に、わざわざ歩いて東京から神奈川にまで行こうとする人は少ないだろう。三人は、六郷橋のたもとにポケットパークがあったので、水分をとりながら休憩することにした。
「早速、家に帰ったら主人に言うわ。東京から歩いて多摩川を渡ったってね」
嬉しそうに言う明子を見ながら、リュックからステンレスの保冷水筒を取り出して冷たいお茶を飲んだ。この歳になれば、常温の飲み物を飲む事もあるけれど、気温が30度を超える暑い日には、やっぱり冷たいお茶が美味しいしいと思う。
「靖子、やっぱり、保冷水筒だと冷たいの?」
明子は、途中のコンビニで買った時には冷たかったけれど、時間と共に温くなってきているペットボトルのスポーツ飲料を飲みながら言った。
「もちろんよ、使い始めたら手放せないわよ」

ステンレスのマイボトルを使い始めてからどれくらいになるだろうか。私が水筒を持ち歩くようになった頃には、まだ、マイボトルとして水筒を持ち歩く習慣が無かったから周りの目を気にすることも多かった。そう思えば、今ではマイボトルを持ち歩くのが日常の光景に馴染んできたので、マイボトル派が増えてきたのは嬉しい。
手に持っているステンレスの水筒は娘が高校入学の時に買い、娘が使わなくなってから私が使っている。年季が入っているボトルには、どこかにぶつけて出来た凸凹があちこちにあり、見た目だけではそろそろ買い替えても良いと思う程になっている。しかし、これだけ長く使い続けても保冷効果は変わっていない。ステンレスボトルの値段は安くないけれど、これだけ長く使えば値段以上に価値があると思っている。

マイボトルの欠点の1つに、洗浄などのお手入れが大変という事がある。ボトルの内部はもちろん、細かい所にまで茶渋が付いてしまう。柄のついたスポンジで洗い、定期的に漂白剤に浸けておくのも面倒だけれど、これをしないとお茶の味がまずくなるし、衛生的にも良くない。そりゃ、空になったら捨てられるペットボトルは便利かもしれない。でも、ペットボトルを捨てる時にラベルをはがし分別するのも手間だと感じる。ま、それでも、マイボトルのお手入れよりは楽だけど。

飲み終わったペットボトルは外出中でもゴミ箱に捨てられる。たまに、飲み終わった空のペットボトルが鞄の中に入っていると、すごく邪魔に感じてしまう。空になったマイボトルだと鞄の隅に入れておいても気にならないのに、同じ大きさでもペットボトルでは途中で捨てようと思う。空になったペットボトルを捨てられるゴミ箱を探しながら、公園や駅周辺を通れば辺りをキョロキョロ見るけれど、ゴミ箱に巡り合えずに自宅まで持って帰る事もある。玄関の外に置いてあるゴミ箱にラベルをはがしながら捨てる時に、何だかなぁと思う。
そういう時、ペットボトルも何気に面倒だと感じる。ゴミ出しもあるし。

私にとってはマイボトルもペットボトルも、両方に面倒さと便利さを感じる。
しかし、ステンレスのマイボトルを使うと保冷、保温が出来る。夏には冷たく、冬は暖かい飲み物を、夕方まで温度を保ったまま持ち歩けるマイボトルはとても便利だ。だから、出かける際にはステンレスのマイボトルに冷たい(温かい)お茶を入れて持っていく。そうすると、その日の1本目のペットボトルを買わずに済むし、何時でも冷たい(温かい)お茶を飲める。これは、私にとって嬉しい。

マイボトルを使った方が節約になるのかと考えれば、いくら1本100円であってもちりも積もれば山となる。マイボトルを使って1本目だけでも持参すれば節約になるだろうけれど、それだけでは支度や後片付けが面倒になり長続きしないし、ケチケチしすぎると心が疲れる。
しかし、自分に合っている便利さがあると続けられる。
今年の夏は暑かったから、保冷が出来るマイボトルを週に5日は使っていたように思う。
それが夏の間の7月から9月の間に2カ月強の9週間あったとして、ペットボトルのお茶1本を100円として計算すると、5日×9週間=45日×100円となり、4500円にもなる。ひと夏だけの計算なのに、自分が思う以上の金額に驚いた。

しかし、この後買うのは、水筒に入れられない炭酸のジュースにしようか。
たまにはお茶以外で、炭酸がシュワっとするのが飲みたいと、靖子は思った。

東海道五十三次 川崎 歌川広重(川崎宿内にある説明版)
東海道五十三次 川崎 歌川広重(川崎宿内にある説明版)
ライター

東京都在住のおばさんです。子育てが落ち着いてきた頃より趣味で登山や街道歩き等を始めました。歩く旅は大変だというイメージがありますが、歩く事で解る楽しみもあります。実際に歩く旅をして、歩く旅の楽しさをお伝えしたいと思っています。

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