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大人の日帰りウォーキング 遠出をしないひとり旅 川沿いの絶景を眺めながら5kmの散歩を楽しむ一日

わか子ライター

乗っていた山手線を上野駅で降りた。ホームの案内板を見ながら駅の階段を登っていく。常磐線はどこだろう。東京都心に円を描くように走っている山手線では東京駅や新宿駅を思い浮かべることが多いかもしれないが、上野駅も東北・上越新幹線が停まるし、在来線も多く走っている大きな駅の1つである。
おばさん1人で、駅の掲示板を見ながらキョロキョロと歩く姿は目立たないだろうかと心配するけれど、この人の多さではそんな心配は必要ないようだ。人の流れに流されながらも、なんとか常磐線のホームに降りる階段を見つけた。
次の電車まで10分程ある。ホームのベンチに座ってマイボトルのお茶を飲む。真夏の暑さは過ぎ去り、気持ち良い気候になった。加えて今日はお天気が良く、雲一つない青空が広がっている。絶好のお出かけ日和である。
電車がホームに入ってきた。ターミナル駅である上野では降りる人が多く、程よく空いた電車に乗る。車内には向かい合って座る4人掛けの席があり、トイレまで設置されている事に長い距離を走る路線だと感じさせられる。電車は次の日暮里駅に停まると多くの乗客が乗ってきて、座席は8割ほどが埋まった。今日はすぐ先で下りるので、そのままドア付近に立っていた。常磐線は多くの路線が併走している線路の一番端を走っていく。山手線や京浜東北線と追いつき追い越し、追い越されながら走る景色は新鮮に感じ、眺めているのが楽しかった。

上野駅から10分も経たず、3駅目の南千住駅で降りる。
駅のロータリーには松尾芭蕉の銅像があり、この場所から奥の細道の旅に出たことに由来して作られたと書かれていた。
旧日光街道を江戸方面へ向かって歩きはじめる。一直線に伸びる道路は休日の為か交通量が少ない。と言うか、走る車はほとんどなく、時折、路線バスが走っている程度である。そして、まっすぐに伸びる道路の正面にはスカイツリーが聳え立っていた。

東京に住んで20年、いや、25年になるだろうか。思いのほか長く東京に住んでいるが、実はまだ、スカイツリーに登ったことが無い。スカイツリーが出来た頃、地方に住んでいる友人が東京に出かけてきてスカイツリーに登ったと話を聞く事が多かったけれど、近くに住んでいると何時でも行けると思ってしまうのか、完全に出遅れてしまった。今では、東京に住んでいるのにスカイツリーに登ったことが無い方が貴重ではないだろうかと気付いてしまい、話のネタにしようとさえ思っている。そして、スカイツリーを眺めるのが好きだから、スカイツリーに登ってしまうと大好きなスカイツリーが見えなくなるじゃないと、言い訳まで考えている。

旧日光街道から少し入った住宅街。お寺の入り口正面に、今日の目的の1つであるお地蔵さまはあった。
これだけ大きいと迫力がある。二階建ての建物程の高さがありそう。そして、大きなお地蔵さまに赤い前掛けは無い方がかっこよく見える。

江戸六地蔵 日光街道 東禅寺
江戸六地蔵 日光街道 東禅寺

私は、子育てを卒業するころより趣味で歩く旅を始めた。登山や街道歩きを楽しんでおり、江戸時代に造られた五街道を歩く旅もしている。
五街道を歩く旅を始めた頃に、江戸六地蔵と言われるお地蔵様があることを知った。1700年に入ったころ、江戸に向かう街道の入り口に江戸六地蔵として六体のお地蔵様が造られており、300年以上経っている今でも五体が現存しているという。その現存しているお地蔵様を見たいと思っていた。(※千葉街道の江東区永代寺に造られたお地蔵さまは明治の神仏分離令により取り壊されている)
日光街道沿いに作られた江戸六地蔵のお地蔵さまは、台東区東浅草の東禅寺にある。当時の旅人は日本橋を出発して約1時間歩いた場所が浅草寺であったので、1時間半程を歩く距離になるだろうか。五街道の東北に向かう主要街道であったので人通りは多かっただろう。

街道ウォークでは、どうしても東海道に人気があり、街道ウォークを楽しんでいる人を見かけることが多い。中山道や甲州街道も人気がない訳ではないけれど、日光街道となるとかなりニッチになる。お地蔵さまは寂しくないかと心配になる。

左上:甲州街道(新宿区太宗寺)、右上:千葉街道(江東区白河霊巌寺)、左下:中山道(豊島区巣鴨真性寺)、右下:東海道(品川区品川寺)
左上:甲州街道(新宿区太宗寺)、右上:千葉街道(江東区白河霊巌寺)、左下:中山道(豊島区巣鴨真性寺)、右下:東海道(品川区品川寺)

ようやく最後の5体目のお地蔵様にお参りすることが出来て結構嬉しい。これで、江戸六地蔵はコンプリートした。完全に自己満足の世界に浸っているけれど、良いじゃないか。この歳になれば自分が楽しければそれでよい。そう、思おうか。

お地蔵様を過ぎて日光街道を江戸から離れるように少し歩くと、江戸時代の幕府公認であった吉原が近くなってくる。実は、つい最近まで吉原がどこにあったのかを知らなかった。
当時の大通りで多くの人々が行き交う日光街道からは少し離れた場所に造られ、街道から吉原に続く道をわざと曲げて外部からの視界を遮るように作られており、先が見通せなくなっている。その曲げられた道は今でも残っており、男性にとっては楽しみの1つであったかもしれないが、女性だと複雑な気持ちになり、何だか切ない。先に進もうか。

今日のお昼、どうしようか。
私は外食をしない訳ではないけれど、公園で青空ランチをするのがとても好きだ。清々しい青空の下で気持ちよく食事をするのは一番の贅沢だと思う。
しかし、今日は思い立って出かけてきたので食べ物を持参していない。たまには何か買って食べようか。美味しい物でも食べようと思っている矢先に100円コンビニがあった。中に入ってお弁当を見ると値引きシールが貼られているお弁当があった。もとの値段が250円程なのに、さらに値引きされているお弁当をみて、もう少しお金をかけて自分に食べさせあげたらと問いかけたが、これで良いよと、もう一人の自分が答える。ひじきご飯が入ったこのお弁当は結構美味しいし、量もちょうど良い。一緒にコーヒーを買って会計し、お弁当をお店のレンジで温めた。

台東区立山谷堀公園から眺めるスカイツリー
台東区立山谷堀公園から眺めるスカイツリー

旧日光街道と別れて公園の中を歩き進むと、さらにスカイツリーが聳え立ってきれいに見えてきた。雲一つない空にスカイツリーはとても良く映える。
今日のもう一つの行きたい場所は待乳山。このまま公園を歩き進み、隅田川に出た場所の交差点にある。お寺の門を探して回り込んでみると、名前の通り小高い山に造られているのが良く分かった。隅田川のほとりで、何故小高い山があるのか不思議に思うけれど、墨田区が立てられている説明板には突然盛り上がった霊験新たな場所と、非科学的なことが書かれていた。そうなのか…。

待乳山は、江戸時代に浮世絵に何度も描かれている風光明媚な場所であり、その浮世絵を見た時にここに来てみたいと思った。当時は富士山や筑波山が眺められたというが、現在ではスカイツリーが名物かもしれない。待乳山聖天の本堂にお参りをする。ここでは大根を供えることで聖天様が心の毒を清めて下さると言われており、浮世絵にも当時の信徒が大根を供えている様子が描かれている(東都名所真乳山上見晴之図 歌川広重画)。今でも本堂には沢山の大根がお供えされており、お下がりの大根を頂いた。リュックの中に入れるとずっしりとする。立派な大根でとても嬉しい。

待乳山聖天
待乳山聖天

そう言えば、浮世絵には待乳山の隣から隅田川に流れ込む川が描かれていたことを思い出す。川、あったかな。待乳山を下りると、その場所にはここまで歩いてきた公園がある。川を埋め立てた跡地に造られた公園だったのか。公園の名前は山野堀公園。当時の川の名前は山野堀(さんやぼり)と言い、荒川の氾濫を防ぐために造られた水路だったという。江戸時代には吉原に船で向かう客を乗せる船が行き交っていたが、吉原の衰退により川が埋め立てられたと書かれていた。スマフォを取り出して地図を見てみると、確かに、公園はまっすぐに吉原の入り口であった五十間通りの入り口まで続いていた。江戸の町に自分がいることを実感した。

隅田川に出ると、川沿いは大きな公園や遊歩道に整備されている。もちろん目の前にはスカイツリーが良く見える。絶景じゃないかと、ため息が出る。


雲一つない青空と聳え立つスカイツリーはとても良く映える。目の前の景色を独り占めしている気分で嬉しくなり、ベンチに座ってお弁当を食べて休憩をした。

お下がりで頂いた大きな大根で膨らんでいるリュック
お下がりで頂いた大きな大根で膨らんでいるリュック

ゆっくり休憩をしてから、川沿いを散歩しながら、スカイツリーを眺めていると、見る場所によって景色がかわるのが良く分かる。

言問橋とスカイツリー
言問橋とスカイツリー

首都高6号向島線とスカイツリーと屋形船
首都高6号向島線とスカイツリーと屋形船

公園のお花とスカイツリーと外国人観光客
公園のお花とスカイツリーと外国人観光客

アサヒビールとスカイツリーと東武伊勢崎線 東武伊勢崎線に並走して歩行者専用の橋があり隅田川を歩いて渡ることが出来る 真中のビルは墨田区役所
アサヒビールとスカイツリーと東武伊勢崎線 東武伊勢崎線に並走して歩行者専用の橋があり隅田川を歩いて渡ることが出来る 真中のビルは墨田区役所

この場所から写真を撮ると、アサヒビールのビルにスカイツリーが映っている事に感動する。これから先に進むと、アサヒビールの向こうに高層マンションが建っているので写真に入ってしまう。この辺りまでが写真をきれいに撮れるのかもしれない。

川沿いの気持ちよさを満喫した後、浅草の浅草寺前通ると予想通り観光客が多すぎる。軽快に走る人力車のお兄さんがかっこよいなと、おばさんらしいことを思いながらも、早々に浅草の街を歩き抜けた。振り返ると、浅草のメイン道路越しに見えたのが、この日最後のスカイツリーだった。
もう少し歩いて、上野駅から電車に乗って帰ろうか。

歩いたコースはこちら 約5km

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ライター

東京都在住のおばさんです。子育てが落ち着いてきた頃より趣味で登山や街道歩き等を始めました。歩く旅は大変だというイメージがありますが、歩く事で解る楽しみもあります。実際に歩く旅をして、歩く旅の楽しさをお伝えしたいと思っています。

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