まさに穴場! プリッとした肉塊を頬張る口福。日曜限定の地鶏セットも見逃せない【せきね/東京】
今回、冒険するのは東京都・駒込の「せきね」。2022年3月、山手線・駒込駅前にオープンするや否や、地元民の心をガシッ! と鷲掴み。店主の修一さん(弟)の焼鳥がおいしいのはもちろんのこと、ソムリエの由美さん(姉)の温かな接客やワイン愛も魅力。女性の常連客も多い町焼鳥だ。
日曜限定・週替わりで地鶏セットが登場。
日曜の「せきね」は、ちょっと特別だ。いつもなら、おまかせ5本または7本セットのどちらかを選ぶところ、日曜限定・早い者勝ちで地鶏がメインの「地鶏6本セット」が味わえる。まだ空も明るいうちから焼鳥を頬張る幸せ。さて、お待ちかねの1本目は……
「今日は、名古屋コーチンです」と差し出された1本目はプリッと厚く打たれた抱き身(むね肉)。見るからに美しい串打ち。噛めばサクッと皮が砕け、肉はほむっとやわらか。じわり、じわりと肉のうまみが広がっていくような滋味がたまらない……。
そうそう、焼鳥は1本目の1貫目が肝心。ささみから始まる焼鳥屋も多いけれど、うまみの濃い地鶏なら抱き身スタートは大歓迎。いや、むしろ好物だと声を大にして言いたいくらいだ。
抱き身に続いては、内蔵ネタの攻勢……! レバーは地鶏ではなく銘柄鶏の「伊達鶏」で、とろりと溶けるような火入れ。変なえぐみやパサつきもなく、これなら「レバーが苦手」という人も充分楽しめるはず(ねっとり系にも良さはあるけれど)。
一方、砂肝とハツは秋田県の「比内地鶏」。こうして改めて見てみると、地鶏の砂肝は色が濃いことに気づく。よくある若鶏の砂肝がシャクッと軽やかな食感なら、これはジャクッと力強く、食べごたえも充分。レバー、砂肝、ハツと内臓ネタの御三家の登場に、思わず酒もくいくい進むというもの。
東京焼鳥の定番ネタ「かしわ」の迫力。
気づけば地鶏6本セットももう終盤。5本目は伊達鶏のもも肉をミルフィーユ状に打った「かしわ」だ。表面をさっと焼きかため、中はプリッと肉汁を閉じ込めるように焼き上げるイメージ。それをタレにくぐらせ、いっそう香ばしく仕上げていく。
このネタは「東京焼鳥」ではド定番。何十、何百軒もの焼鳥屋が扱っているなか、「せきね」のかしわはズシッと大ぶり! まずはそのまま頬張って堪能。タレがさらりとしているので肉の風味や食感が損なわれず、最後まで食べ飽きない。それに、味変として七味唐辛子を振ってもいい具合。
6本セットの〆を飾るのは、名古屋コーチンのねぎま。地鶏の魅力が一番詰まっているのは、やっぱりもも肉だと思う。この流れ、修一さん(弟)も狙ってのことだろうか? 「かしわ」と「ねぎま」で続けて食べ比べられるような展開を演出したとしたなら、相当ニクい。銘柄鶏にも地鶏にもそれぞれの良さがあり、その鶏の個性を引き出すのが、焼鳥だ。
「以上で6本ですが、まだ追加されますか?」と修一さん(弟)。いやいや、腹六分目。ここで断る理由もない。牛や豚と違って、鶏ならいくらでも食べられると思ってしまうのだから不思議なもの。さらに数本追加して、焼鳥三昧だ。
「せきね」は1周年を迎えたばかりだというのに、もう連日満席の勢い。とくに土日は予約なしでは入れないくらいだ。それもそのはず。オープン当初よりもぐっとネタの幅が広がり、自然派ワインをはじめとして酒のラインナップも充実した。それに、この地鶏を交えた6本セットも上々の滑り出しのよう。
「あっという間の1年でしたねぇ。何かと慌ただしくて、あまり記憶にありません(苦笑)。でも、地鶏はずっとやりたかったので、ようやく……といったところです」と修一さん(弟)。
由美さん(姉)がそれに応えるように「他にもコースの組み立てだとかワインの品揃えだとか、考えたいことは色々あるよね? ちょっとずつ実現していけたらいいな」と微笑んだ。
土曜・日曜は16時から店を開けることもあり、2回転以上は当たり前。姉弟だけで店をまわしているので閉店後も深夜まで働き詰めだ。それでもどこか充実しているように見えるのは、きっと気のせいなんかじゃない。2年目の「せきね」もおもしろそうだ。