名物はとろんとろんのレバー! カラシをちょいと付けて小粋に【やむちゃん/東京】
今回、冒険するのは東京・飯田橋の「やむちゃん」。古くは印刷の町として栄えた飯田橋は今でも商業の町。仕事帰りについ寄りたくなるような飲み屋がそこかしこにある。目白通りから路地を上っていくと、一際大きな赤提灯が目に入った。看板はない。ここ「やむちゃん」も、いい町焼鳥なんだ。
好きな串を好きな分だけ、楽しむ
店先にあるのは、おんぼろ(失礼!)の赤提灯だけ。数年前は看板もあったのに、いつの間にか外されていた。外からは店名も分からず入りづらそうと思うかもしれないが、そこは安心。「やむちゃん」は手頃な大衆店だ。
セットやコースで味わう焼鳥屋が増えているなか、ここでは「好きな串を好きな分だけ」楽しめる。そうした昔ながらの焼鳥の匂いを守りながらも、盛り込みではなく1本ずつ丁寧に出してくれるのが嬉しい。
この日の1本目は、プリッと弾けるせせり。「やむちゃん」は焼鳥にカラシを添えて出してくれる。もちろん全てのネタに合わせる必要はないのだけれど、炭火で脂がじわっと浮き出たせせりにちょちょいと付ければ……。
肉のうまみの感じ方にメリハリが出る。これが、うまいんだなぁ。
そして、客のほとんどが頼むだろうレバー! もう、とろんとろんだ。生焼けでもなく、よく焼きでもなく、これがまたいい塩梅。
まずはそのまま頬張って。次はカラシをちょちょいと付けて……。せせりからカラシ続きだけれど、レバーにも合うんだからしょうがない(笑)
さび焼きはしっとりと。それにハツ、ねぎま、つくね。どれも派手なインパクトがあるわけではないけれど、どれも丁寧な仕上がり。
仕事帰りに軽く立ち寄る焼鳥屋なら、こういう「ちょうどよさ」が心地よかったりするもんだ。
隠れた一品「納豆巻き」も必食!
「やむちゃん」は何も鶏だけを串に打っているわけじゃない。そう、いうなれば赤提灯ならではの特権。ナンデモアリ。豚や変わり種もあるので、飽きがこないんだ。
メニューを見れば豚のもつ焼きも10種近く揃っている。鶏好きの性というか、「やむちゃん」ではつい鶏を選んでしまうのだけれど、たまにはと、ハラミガーリックも。うーん、濃ゆい。これは酒泥棒。
トマトベーコンはパッと見は変哲もないネタ。ただ、このネタ専用にタバスコが用意されていて、それを振りかけて食べるのが気に入っている。この絶妙なチープさが、いいんだよなぁ。
数あるネタのなかでも、最低2本は食べるのがこの納豆巻き! たかが納豆、されど納豆。これをあなどっちゃいけない。
鶏のつくねに納豆を加え、海苔で巻いて焼き上げている。最高のひと手間。これが、もうヤミツキになるほどうまいんだ。そのままでも十分だけれど、納豆といえば、カラシ。「やむちゃん」といえば、カラシ。この味変も忘れちゃいけない。
なんだかんだで、10本。それでも税込み2000円ほど(2023年4月時点)。1串1串の焼きが丁寧で、肴も多く、日本酒の品揃えも充実している。普段使いの焼鳥としては文句なし。
大げさに言えば「大衆店のお手本」のような焼鳥屋。連日、早めの時間が予約で埋まってしまうのも分かるというもの。ネタ切れはあるものの、21時頃には客足も引き始めているので、狙い目だ。
ただ、こうした大衆店にも「入店ルール」というのがある。店先の張り紙にも書かれていることだけれど……
- 学生は禁止
- 学生のような人も禁止
- 話し声、笑い声がうるさい人も禁止
『仕事帰りにゆっくりと味わって日頃の疲れを癒してほしい』。このルールもそんな思いからきているんじゃないかな。好きなネタを好きなように頼んで、好きな酒を。
幸せでしょう? そういうの。