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こちら葛飾区亀有…! 下町に洗練された焼鳥と男前すぎる店主【鳥さみ/東京】

今回、冒険するのは東京都葛飾区亀有の焼鳥屋「鳥さみ」。亀有といえば誰もが思い出すのが〝国民的マンガ〟の舞台。歩いてみれば、下町らしく個性的な飲み屋もちらほら。大衆店ばかりかといえばそうでもなく、環七通り沿いに向かえばポウッと灯る1軒の焼鳥屋が目に入る。都内の焼鳥屋で修業を重ねた佐美さんが2021年に暖簾を掲げた「鳥さみ」だ。

端正な顔立ち、物腰柔らかな接客

店主の佐美さん
店主の佐美さん

控え目に掛けられた暖簾をくぐれば、〝亀の甲羅〟を模したかのようなカウンターが出迎えてくれる。その中で手際よく串を返しているのは店主の佐美さん。端正な顔立ちに、物腰柔らかな接客。下町とは思えないほど洗練された空間で味わえるのは、銘柄鶏と地鶏を織り交ぜたおまかせストップ制(声をかけるまで串が出続ける)の焼鳥だ。

「今日は熊野地鶏のネタも揃っていますよ」と佐美さん。お、これは期待が膨らむというもの。

出だしの2本でぐっと心を掴まれて

むね
むね

かしわ
かしわ

あいさつ代わりの1本目は、銘柄鶏のむね肉。「鳥さみ」では1本目にこのネタを出すことが多いのだけど、これがまた秀逸! むね肉は微塵もパサつきがなく、むしろ吸い付くようにむっちりと。これはいい仕上がり。焼鳥は何本も食べ重ねていくものだからこそ、1本目がうまいと思えるかが大事なんだ。

そして、定番のかしわ。ミルフィーユ状に打ったもも肉にタレをからめてこっくりと。それでいて、プリッとしたみずみずしさを閉じ込めるような味わい……。むね肉から、もも肉。この2本で心を掴まれない人なんて、いないはず。

焼鳥の焼き野菜といえば銀杏
焼鳥の焼き野菜といえば銀杏

ここで看板ネタの熊野地鶏が登場

ねぎま
ねぎま

さぁ。お待ちかね。「熊野地鶏のねぎまです」と佐美さん。「鳥さみ」の魅力の一つが、この熊野地鶏だ。先ほどの銘柄鶏のもも肉を使ったかしわも充分うまいけれど、地鶏のもも肉はまったく違う表情を見せてくれる。

すん、と匂えば鼻を抜ける甘やかな香り。噛めば皮目からジュワッと弾ける脂、もっちりとしなやかな肉質……。そう、これこれ! 甘みが凝縮したねぎを口直しに、もう1貫を引き抜く。うーん〝口福〟とはこのこと。まさに看板ネタ。

うずらの卵は半熟のとろっとろ
うずらの卵は半熟のとろっとろ

箸置きは亀有らしく亀。しかも親子亀
箸置きは亀有らしく亀。しかも親子亀

さび焼きとレバーパテも見逃せない

さび焼き
さび焼き

ここで緩急を付けるかのように、さび焼き。でっぷりと打たれたささみは、ほむっとやわらか。それでいて芯温もしっかり。

これぞ、焼鳥職人の腕の見せどころというやつだ。たっぷりと付けられた本わさびはツーンとくるような辛みもなく、ただただ、爽やかな風味を届けてくれる。これを1本目に出すのも手ではあるけれど、中盤に緩急を付けるのにもってこいだ。

レバーパテ
レバーパテ

今どきの焼鳥屋なら、レバーパテも定番といってもいい一品。レバーの風味を強く打ち出す店もあれば、スイーツのように甘く仕上げる店だってある。「鳥さみ」は後者。なめらかでコクがありながら、クセがない。「レバーの焼鳥はちょっと……」という人も、このレバーパテならきっと食べやすいはず。

いい焼鳥屋は内臓ネタもうまい!

砂肝
砂肝

レバー
レバー

続いては、熊野地鶏の砂肝とレバー。いいエサを与えられ、からだを動かして、じっくりと育った地鶏の内臓はやっぱりうまい。砂肝も若鶏のものとは明らかに食感が違う。ザシッと音を立てるように歯が入っていくイメージ。そうそう〝砂肝は歯で味わうネタ〟なんだ。

見るからにとろりとしたレバーは白レバー入り。こっくりとして、とろり。んん。これも間違いない。

まだまだ続く熊野地鶏ネタ

抱き身(むね肉)
抱き身(むね肉)

ソリレス
ソリレス

運がいいことに、さらに熊野地鶏攻め。まずは抱き身(むね肉)。1本目に出された銘柄鶏のむねは肉そのもののプレーンな弾力やうまみを味わったのに対し、この熊野地鶏の抱き身は皮を巻き込み、いっそうジューシーに。若鶏と違って地鶏の皮は厚く、脂を蓄えているのが魅力。もちろん、肉のうまみだって濃いわけだ。

ソリレスはももの付け根にあたる部位で、ピンポン玉のような大きさ。1羽から二つしか取れないこともあって、希少部位を代表するようなネタだ。うまみも弾力も申し分なし!

ちなみに「ソリレス」はフランス語で「これを残す者は愚か者だ」という意味。じつにユニークなネーミング。でも、そういうことなら、うまい焼鳥屋のネタは全部「ソリレス」ってことだなぁ。

アッツアツの厚揚げもつい食べたくなる一品
アッツアツの厚揚げもつい食べたくなる一品

粗挽きのつくねに生姜ごはん

つくね
つくね

焼鳥も終盤に差し掛かった頃。「最近、つくねの作り方を変えたんですよ」と佐美さんが微笑んだ。出されたつくねはややゴツゴツとした表情。聞けば、細挽き肉から粗挽き肉に変えたのだとか。

噛めば豊かな弾力とともに、あふれる肉のうまみ……。以前の繊細なつくねも良かったけれど、粗挽きならではの力強い味わいは好み。こういうつくね、大歓迎。

生姜ごはん
生姜ごはん

さぁ、〆はほっかほかの生姜ごはんだ。生姜やねぎ、スプラウトの香味を生かしたシンプルな一品。うーん、ほっとする。さっぱりとしているので、さんざん焼鳥を食べた後だというのに、すっと胃に収まるんだ。

そぼろ丼や親子丼、鶏そばを出す焼鳥屋が多いなか、実は「鳥さみ」の〆はこの生姜ごはんしかない。人によっては物足りないと思うかもしれない。でも、それでもいい。焼鳥屋の本懐は、焼鳥ってね。

「焼鳥をたっぷり味わってほしい」。佐美さんのそんな思いが伝わってくるようじゃないか。

▼冒険のおさらい

①串が出続けるおかませストップ制

②熊野地鶏のネタがジューシー!

③店主・佐美さんの男前ぶり

店舗情報
【店名】鳥さみ
【最寄り駅】亀有駅
【住所】東京都葛飾区亀有3丁目27-15
【予約】03-3602-1192
【定休日】日曜、祝日
【串のアラカルト】なし
【コース(セット)】おまかせストップ制
【鶏メモ】熊野地鶏、京紅地鶏、丹波赤どり他

毎週、焼鳥三昧! 焼鳥を斜めに逆さ撮りする〝ヤキトリスト撮り〟は元祖にして名刺代わり! 「焼鳥は串柄、人柄」をテーマに、大衆的で気兼ねない町焼鳥から、鶏にこだわり1本1本に心血を注ぐ専門店まで焼鳥まみれの日々を送っています。焼鳥好きの方、フォローよろしくお願いします!

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