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わざわざ行きたいミシュラン1つ星。下町で味わう〝非日常〟の焼鳥【おみ乃/東京】

今回、冒険するのは東京都墨田区押上の焼鳥屋「おみ乃」。最寄りはスカイツリーのお膝元、押上駅だ。言わずと知れたミシュラン1つ星で、「鳥しき」のDNAを継ぐ店としても名高い。さすがに敷居が低いとは言えないものの、その美しい造り、細やかな接客、焼鳥の品質は納得の一言。そう、こういう店が港区や中央区でもなく、下町にあるのがいいんだ。

平日16時でもみっちり満席に

スカイツリーのお膝元、押上。「おみ乃」本店を訪ねるのは、かれこれ数年ぶり。さすがはミシュラン1つ星といったところで、平日の16時だというのにみっちり満席だ。休みなのか、休みを取ったのか。はたまた自由人か……。いずれにしても、その誰もがわざわざ焼鳥のために押上まで来ているわけだ。

すね肉とつるむらさき、わさび

すね
すね

店内を包む込むほどよい緊張感。「おみ乃」の焼鳥といえばとろりとしたレバーから始まるのが定番だ。そう思い込んでビールを片手に構えていたら……「〝すね〟です」と焼き手の矢澤さん。おっと、レバーじゃない。これは意表を突かれた!

伊達鶏のすね肉のムチッと豊かな弾力、噛むほどにジワッと溢れるうまみ。さらにひと工夫。肉に挟まれているのは……つるむらさきだ。独特のぬめりと歯ざわり。そして風味を添えるわさび。すね肉に挟む野菜はねぎが王道だけれど、つるむらさきももいい。一気に和の世界に引き込まれるようじゃないか。

とろりとろけるレバーは2貫目に
とろりとろけるレバーは2貫目に

プリッとした銀杏も欠かせない
プリッとした銀杏も欠かせない

大ぶりな砂肝に、むちっとした手羽元

砂肝
砂肝

砂肝は大ぶりで、噛めばザシッ! と歯切れよく。人間でいえば胃に当たる砂肝は鶏ならではの部位。これが出ると焼鳥屋に来たことを強く実感するんだ。エサなどの飼育環境によっては臭いが気になる砂肝もあるなか、これは心配ご無用。クセもないので、砂肝に苦手意識がある人も間違いなく楽しめると思う。

ミニトマト
ミニトマト

手羽元
手羽元

トマトで爽やかに口直しして、ここで手羽元! ムチッとしながらしなやかな弾力。噛むほどに溢れるうまみ。パリッとした皮目もごちそうだ。焼鳥のネタの王道といえばもも肉だけど、伊達鶏の肉質の良さはこの手羽元にも生きていると思う。むしろ、手羽元の方がうまく感じるほどに。

ギョムッ! と粗挽きのつくねも人気

つくね
つくね

ギョムッ! と粗挽きのつくね。つくねは店によって個性が出るネタだ。細挽き、粗挽きのどちらが正解というものでもないけれど、まるで肉塊のような雄々しいつくねは好み。前に来たときよりも粗挽きになっている印象があったのだけど、どうやらそれは気のせいのよう。

アッツアツで香ばしい厚揚げ
アッツアツで香ばしい厚揚げ

ホックホクの石川芋は衣かつぎで
ホックホクの石川芋は衣かつぎで

食感の豊かさも焼鳥の魅力

ヤゲンなんこつ
ヤゲンなんこつ

さぁ、まだ中盤! まだまだ食べられる。しっかり火を入れたヤゲン軟骨は、肉付きのニクいやつ。コリッ! ムチッ! と豊かな食感がたまらない。酒が進むネタを思い浮かべるとき、ヤゲン軟骨や砂肝のような食感のネタは外せないんだ。言ってみれば、脳に響く歯ざわり。

うずらの卵は半熟で
うずらの卵は半熟で

ハツ
ハツ

とろ~り半熟のうずらに、プリップリと弾けるようなハツ。これらも抜群にいい。ハツにおろした生姜を添えるのも「おみ乃」ではお馴染みだ。ハツの脂を引き締めるような、すがすがしい風味。焼鳥に生姜を合わせるのは難しいと思うのだけど、それを嫌味なくやってしまうのは流石の一言。

大ぶりなソリレス
大ぶりなソリレス

みずみずしいなす
みずみずしいなす

脂のおいしさを実感するネタ

食道
食道

腹具合から見てもそろそろ終盤の予感……。ここで差し出されたのは食道。コリコリッとした食道に、脂がふわっととろけるリンパも付けて。それを焼き上げてタレを絡めれば、もう至福の1本! これも、きっと吞兵衛にはたまらないネタだ。それほど数は取れない希少部位だけに、こうして食べられることが、ありがたい。

プリップリのせせり
プリップリのせせり

ほどよく脂を落としたぼんじり
ほどよく脂を落としたぼんじり

長い串の旅の終わりは王道ネタで

かしわ
かしわ

波(皮)
波(皮)

おまかせストップ制の焼鳥は、ストップの声をかけるタイミングがむずかしい……。まだまだ入ると思っていても、後半に脂の多いネタが続くと途端に手が伸びなくなってしまうこともあるからだ。そのうえ、どうしても〆に親子丼を食べたいものだから、そろそろストップのコール。

聞けば、かしわを焼き始めているとのことなので、さらにもう1本加えて止めることにした。東京の焼鳥屋ではお馴染み「かしわ」は、もも肉をふっくらと仕上げた一品。最後のネタは「波」だ。そういえば「おみ乃」では皮のことを波と呼ぶのだったなぁ。首の皮を波打つように仕上げたこの1本。外はカリッと、中はもっちりと。いいね。最後の最後に、まだ飲ませてくれるじゃないか。

飲める親子丼とはこのこと

親子丼
親子丼

なぜだか「おみ乃」の〆は親子丼のイメージ。最近は鶏そばを出す焼鳥屋も爆増しているものの、やっぱり王道は親子丼やそぼろ丼なんだろうな。口に含めば、とろり、ふわり、するり。20本近くも串を食べたというのに、まるで〝別腹〟のように収まってしまう……。このおいしさを表現するとしたら、黄身と白身の魅せ方がうまい、ということかな。

鮨屋のような美しい造りに、坊主にねじり鉢巻の職人、おまかせで味わう焼鳥の数々……。まさに非日常の空間、時間。ミシュラン1つ星を数年連続で獲得しているとあって、連日満席になるのも当然のこと。ただ、何カ月先まで予約で埋まっていることもないわけだ。

焼鳥屋に限らず、人気店のなかには先の月まで常連客の予約でびっちり埋まっている店があるのは確かだけど、「おみ乃」はそうじゃない。予約サイトで月に1回、誰もが等しく予約できるチャンスがある。味や雰囲気はもちろんのこと、そういう公平性も、人気の秘密なんだろうな。

▼冒険のおさらい

①「鳥しき」出身、ミシュラン1つ星

②おまかせストップの焼鳥

③予約サイトから月1で予約可能

店舗情報
【店名】おみ乃
【最寄り駅】押上駅
【住所】東京都墨田区押上1-38-4
【予約】OMAKASE
【定休日】日曜、ほか不定休
【串のアラカルト】なし
【コース(セット)】おまかせストップ
【鶏メモ】伊達鶏

毎週、焼鳥三昧! 焼鳥を斜めに逆さ撮りする〝ヤキトリスト撮り〟は元祖にして名刺代わり! 「焼鳥は串柄、人柄」をテーマに、大衆的で気兼ねない町焼鳥から、鶏にこだわり1本1本に心血を注ぐ専門店まで焼鳥まみれの日々を送っています。焼鳥好きの方、フォローよろしくお願いします!

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