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1本100円台でプリッと大ぶりの本気串! 毎日15時から吞兵衛が集う日暮里の繁盛店【助平/東京】

今回、冒険するのは東京都荒川区西日暮里の焼鳥屋「助平」。一見、ふざけた屋号に思えて、じつは日暮里民に深く愛される繁盛店だ。その焼鳥はどれも100円台とお手頃価格。連日15時から店を開けて、閉店までひたすら吞兵衛を量産。まだ昼間だというのに席がぎっちり埋まることもしばしば。昼でも夜でも。日暮里で気兼ねなく飲むなら覚えておきたい一店だ。

真面目で助平という、強インパクト

平日15時過ぎ。日暮里駅を東口に出て、目当ての焼鳥屋に向かった。こういうのも〝出オチ〟といえばいいか、店先の白提灯には「真面目焼鳥 助平」の文字……。いったい真面目なのか助平なのか。その意味はともかく、これほどシンプルかつインパクトのある焼鳥屋はないかもしれない。

店に入ると、平日の昼にも関わらず、カウンターもテーブルも席のほとんどが埋まっていた。おお、さすがは日暮里が誇る繁盛店。がいがい、わいわい、賑わってこその町焼鳥だ。

バイスサワーの「中」の様子がおかしい!

りんご果汁としそエキスで作られているバイスサワー(お酒は20歳になってから)
りんご果汁としそエキスで作られているバイスサワー(お酒は20歳になってから)

席につくやいなや「いつものバイスサワーですかー?」と、店主の筒井さんが笑う。そうそう、このハスキーボイスを聞くと「助平」に来たことを強く実感するんだ。底抜けに明るく、記憶に残る声。ほかの焼鳥屋ではとりあえずのビールから入るところ、ここに来たならバイスサワーを頼むのが定番(個人的に)。

さぁ、差し出されたのは〝ほぼ中〟で埋め尽くされた、吞兵衛による吞兵衛のための1杯! グラスには1cmほどしか注げないので、はじめのひと口目は凶悪な口あたり。それを乗り越え、少しずつ、少しずつ薄めながらいい塩梅を探すのも楽しいんだ。

ちなみに、この凶悪な〝ほぼ中〟はホッピーでも存分に味わえる。なかなか酒が減らないものだから、1杯でほろ酔い気分。なんて財布に優しいことだろう。

レバーはクセがなくふっくら、とろり

血肝(レバー)
血肝(レバー)

ふりそで
ふりそで

「助平」では、とくに指定しなければ、店のおまかせで塩かタレかで出される。今日の1本目はふっくら、とろりと仕上がったレバーだ。相変わらず、クセがなく食べやすい。これならレバーに苦手意識がある人だって難なく食べられるだろうな。

そして、むね肉と手羽元をつなぐ部位の、ふりそで。むちっとした弾力と脂の甘み。アッツアツのうちに頬張って、バイスで追いかける幸せ。俄然、食欲も湧くというもの!

ちなみに、焼鳥はどれも「税込200円以下」。なかでもレバー(血肝)とハツ、砂肝は税込み150円以下だ。ここ数年、鶏も炭もあらゆるものの仕入れ値が高騰しているなか、この値頃感はぐっとくる。東京の焼鳥屋で、このクオリティーの焼鳥をこの価格で食べられる店はかなり少ないはず。

気兼ねなく食べて、気兼ねなく酔っ払う。うーん。これぞ大衆店の醍醐味だ。

プリッとしたぼんじり、涙が出るむね肉

ぼんじり
ぼんじり

なみだ焼
なみだ焼

ここで、ぼんじり。余分な脂を落としながら、中はもっちりと。焼きが浅すぎるぼんじりは胸やけするようで苦手なのだけれど、こういうぼんじりは大歓迎。塩もパチッと決まって、1貫ごとにまぁ、酒が進む進む。

迷物? のなみだ焼はむね肉にたっぷりの山わさびを付けた一品。これが辛いのなんの! ひと口でツーーーンと鼻を突き刺すような辛み。追いかけるようにほろり、流れる涙。ここまで強烈なネタだ。一度食べたら懲りそうなものだけど、またしばらく日を置くと、食べたくなるのだから、不思議。

日替わりメニューも要チェック

「助平」に来たなら、日替わりメニューも忘れずにチェックしておきたいところ。マカロニサラダやレバーパテといった定番の肴から個性的な一品まで、いかにも酒が進みそうな一品がずらりと並ぶ。なかでも、ダチョウの刺し身はほかの飲み屋でもお目にかかれないんじゃないだろうか?

ダチョウ刺し(もも肉)
ダチョウ刺し(もも肉)

刺し身に使うのは、ダチョウのもも肉。淡泊でクセがなく、しっとりとした口あたり。そう、赤身ということもあり馬刺しのもも肉の味わいによく似ている。

考えてみればダチョウも「鳥」。冬に真鴨や鳩、キジなどのジビエを扱う焼鳥屋もあるわけだから、ダチョウがメニューにあっても不思議なことはないわけだ。

鶏皮にんにく巻
鶏皮にんにく巻

日替わりメニューにあれば、少なくとも2本は食べたくなるのが、この鶏皮にんにく巻。そもそも焼鳥は串に打つことから「巻く」と相性がいい食べ物。大衆店によくある野菜の豚肉巻もそう。大事なのは、一体感だ。

これは文字通り、鶏皮でにんにくを包んで打ったもの。皮の脂の甘みとホックホクのにんにくの甘みが交わって、うまみと化す。シンプルだけど、抜群に合うなぁ。当然、バイスサワーもくいっと。

ネタ切れでなければ、必ず頼みたい2本

つくね
つくね

ハツモト
ハツモト

いい焼鳥屋には「これを味わいたい!」と思わせるネタがあるもの。「助平」ならつくねとハツモトを推したいところ。丸々としてパンッと張ったつくねは、噛めばジュワッと肉汁が溢れる1本。これも200円以下で味わえるというのだから、たまらない。腹具合に余裕があれば、塩とタレをそれぞれ味わいたくなるくらいだ。

もう一つのハツモトは、ハツの脂がのった「元」の部分だけを集めて打った串。いわゆる希少部位で、こっくりとした味わいは、七味や山椒の風味が抜群に合う。塩もタレもいい。ただ、人気ネタとあって真っ先になくなるので、席についたら早めに注文するのが吉。

食べれば実感する、助平の真面目さ

思い思いに焼鳥を楽しむ客がいる一方で、焼き台には所狭しと串が並び、煙がもうもうと立ちのぼる。隅々まで吞兵衛だらけなものだから、串や酒の注文の声が威勢よく飛び交う。おお、まるで戦場だ。それが22時過ぎまで続くのだから、心底、タフだなと思う。

それでいて終始、笑顔を絶やさないのはさすがの一言。そう、「助平」は提灯にも描かれていたとおり「真面目」なんだ。ふと、何年か前、筒井さんに屋号の由来を聞いたことを思い出した。

「とにかくインパクトのある屋号にしたかったんですよねぇ。でも『助平』には〝分け隔てなく助ける〟という意味もあるとか、なんとか……」

たしかに、そう言っていた。本当にそういう意味をもつのかどうかは分からないけれど、それは些細なこと。とことん真面目に焼鳥と向き合う。その姿がちゃんと伝わっているからこそ、毎週のように足繫く通う常連も多いわけだ。

言ってみれば、人たらし……。なんて助平な店だよ!

▼冒険のおさらい

①昼飲み大歓迎の毎日15時オープン

②つくねとハツモトは欠かせない

③バイス、ホッピーの「中」が凶悪

店舗情報
【店名】真面目焼鳥 助平
【最寄り駅】日暮里駅
【住所】東京都荒川区西日暮里2-25-1
【予約】03-5615-5140
【定休日】日曜
【串のアラカルト】あり
【コース(セット)】1,045円

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毎週、焼鳥三昧! 焼鳥を斜めに逆さ撮りする〝ヤキトリスト撮り〟は元祖にして名刺代わり! 「焼鳥は串柄、人柄」をテーマに、大衆的で気兼ねない町焼鳥から、鶏にこだわり1本1本に心血を注ぐ専門店まで焼鳥まみれの日々を送っています。焼鳥好きの方、フォローよろしくお願いします!

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