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福島発の新名店は焼鳥!満腹必至のコースに込めたのは「地元食材の隠れた魅力を世界に伝えたい」

今回冒険するのは、福島県須賀川市岡東町の「よし田」。須賀川市は〝特撮の神様〟と呼ばれた円谷英二監督の故郷で、ウルトラヒーローにまつわるスポットが点在している。そんな町にも、じつはとっておきの焼鳥屋がある。それが2019年にオープンした「よし田」だ。

ゆったりとした贅沢空間で焼鳥を

最寄りの須賀川駅から10分は歩いただろうか。通り沿いに煌々と明かりがともる一軒の焼鳥屋。周りには高い建物もなく、平屋の焼鳥屋というのはなんとも贅沢なロケーションじゃないか。

焼き場を囲むようなカウンターのほか、座敷もあるよう。そういえば店先の駐車場もゆったりとしていた。遠方からも焼鳥のために訪れるのだろうなぁ。

「よし田」のコースは3種(2024年2月時点)。空腹で郡山駅から来て、さらに10分以上も歩いたものだから、食べる気満々。せっかくだから、6,600円の「ぼたんコース」に決めた。

とりあえず、乾杯のビール。お、しかも畳コースターときた。同じく須賀川市で創業280年の歴史を誇る久保木畳店のアイコンともいえる作品。東京でも扱う高級店はあるようだけど、ここ「よし田」で、というのは地元の絆のようなものが感じられていいな。

お酒は20歳になってから
お酒は20歳になってから

福島県産の多彩な食材も魅力

ほうれん草と焼き椎茸のごまあえ
ほうれん草と焼き椎茸のごまあえ

トロピカルトマト
トロピカルトマト

ほうれん草と焼き椎茸のごまあえに続いて現れたのは塩が振られたトマト。「福島県の矢吹町でとれたトロピカルトマトです」と店主の吉田さん。

噛んでみると、その名のとおり濃い甘みがジュワッと弾けるよう! 果肉の締まりもよく、思わず目を見張るおいしさだ。

「トマト、おいしいですよね? 須賀川をはじめ、福島県産の食材をできるだけ使うようにしています」

鶏スープの玉子とじ。茶碗蒸しに似たやさしい味わい
鶏スープの玉子とじ。茶碗蒸しに似たやさしい味わい

川俣しゃものささみの昆布締め
川俣しゃものささみの昆布締め

爽やかなさび焼きに、迫力のある砂肝

さび焼き
さび焼き

お待ちかねの1本目は、さび焼き。さび焼きといえばささみを使うのが定番ではあるものの、ここではささみとむね肉を使い、ふっくらと。わさびの辛みがほのかにきいて、さっぱりと。

続く砂肝は大ぶりにカットして、1貫目の食べごたえをもたせた一品だ。さび焼きから砂肝。まさに王道の流れといったところ。

砂肝
砂肝

扱う鶏は福島県産の地鶏「川俣シャモ」

もも
もも

ここで最初のハイライト。たっぷりと打たれたのは、もも肉だ。それをたれにくぐらせていっそう香ばしく。むちっと弾力豊かで、噛むほどにうまみがあふれ出してくる。若い鶏に出せない、奥深いうまみ。それもそのはずで……

「福島県産の地鶏『川俣シャモ』を使っています。脂ののりがよく、軍鶏だけど肉質もしなやかなところが気に入っています」

そう。福島県は養鶏が盛んな地。東京の高級店でもよく使わている銘柄鶏「伊達鶏」や、地鶏「会津地鶏」もあるものの、焼鳥に合っていると感じたからと、川俣シャモ1本に絞ったのだとか。野菜と同様、鶏も福島県産のものにこだわり。地元愛、だよなぁ。

ブロッコリーはバターの風味を添えて
ブロッコリーはバターの風味を添えて

アツアツの厚揚げには薬味をたっぷりと
アツアツの厚揚げには薬味をたっぷりと

うずらの玉子はもちろん半熟で
うずらの玉子はもちろん半熟で

コースは希少部位が出ることも

だんご
だんご

ここで、だんご。川俣シャモだけを使っているだけあって、ギュムッと肉らしさが前面に。細かく処理した筋や軟骨も入っているので、コリッと食感豊かに仕上がっている。こっくりとした風味のたれがからんで食べごたえ充分。

ソリレス
ソリレス

ふりそで
ふりそで

さらに畳みかけるように、ソリレスとふりそでだ。ソリレスはもも肉の足の付け根の部位で、卓球玉のように丸っこい形をしている。噛めば弾力に富み、濃いうまみが広がっていく。いわゆる希少部位。ソリレスを食べて焼鳥にハマる人も少なくはないと思う。

一方のふりそでは、むね肉と手羽元の間の部位。肩肉らしいしなやかな弾力と、ほどよいうまみ。それに皮目の脂の甘みが合わさって、もうたまらない! うーん。この流れ、最高じゃないか。

赤ねぎ。シャキッとして野性味のある味わい
赤ねぎ。シャキッとして野性味のある味わい

皮でねぎを巻き、たで香ばしく……

ねぎの皮巻き
ねぎの皮巻き

コースの〆串は「よし田」のスペシャリテともいえそうな皮巻き。川俣シャモの首皮でねぎをくるんで打った変わり種だ。まぁ、これがうまいのなんの!

厚みのある皮の脂をねぎが受け止めて、ジューシーな味わいに。それを、コクのあるたれで一体感を出しているわけだ。山椒を振るとまた風味にアクセントが付いてたまらない。うーん。レモン汁で爽やかに仕上げるのもいいかもしれないなぁ

〆のお米もしっかり、うまい!

あとは、〆と甘味を残すだけ。どの焼鳥も大ぶりなものだから、少食の人だと「ぼたんコース」は食べきれないかもしれないなぁ。だからこそ、3種のコースが用意されているのだろうけど。

「こちらは、福島県産の『福、笑い』というお米です。土鍋で炊いたのですが、まずはそのまま味わってみてください」

吉田さんから渡された椀には、つやつやのごはん。口に含んでみると、ふくよかな香りとうまみが広がっていった。噛むほどに深まる甘み。米自体がうまいのはもちろん、土鍋で炊いたごはんというのが、なんともそそるじゃないか。

さらに「本日は、おにぎりをご用意します」と吉田さん。お、これは意外な一手。焼鳥屋でおにぎりといえば焼きおにぎりが定番だけに楽しみ。

土鍋からすくい取った米は、まともに手でもつことができないくらいにアッツアツ……! 自家製のねぎ味噌を包み、手早く、やさしく握られていく。炭火でさっと炙った海苔で巻けば、「よし田」特製おにぎりの完成だ。

「ほふっ」。頬張った瞬間、口から湯気が立ちのぼった! ただでさえ土鍋で炊かれて熱くなっているごはんが、握られて熱を閉じ込めていたわけだ。米のうまみを追いかけるように、ねぎ味噌のコクがじんわり。

これは、抜群にうまいなぁ。たかがおにぎり、されどおにぎり。「日本人で良かった」と思える逸品だ。

「まだお腹に余裕があるようでしたら、もう一ついかがですか?」。なんと吉田さんから悪魔(天使)のささやき。もう「No」と言えるわけがないじゃないか!

地産地消の焼鳥屋を志したのは……

いちご
いちご

くずもち
くずもち

甘味は福島県産のいちごと、くずもちで。15品越えの「ぼたんコース」。もう、ここまでくると満腹だ。鶏を高価な地鶏に絞りながら〆や甘味まで付くコースが6,600円……。これは東京の焼鳥シーンでは考えられないくらい、お得。

「僕は生まれも育ちも須賀川で、ずっとこの土地が大好きでした」と吉田さん。焼鳥のキャリアを積んだのも須賀川の焼鳥屋。だから独立も地元でと決めていたのだそう。

思い返すと、鶏、野菜、米、果物のあらゆるところに福島県産の選りすぐりの食材が使われていた。日本酒のラインナップも福島県中心。昔から「地産地消」という言葉はあるけれど、ここまで地元愛を感じる焼鳥屋は珍しい。

「福島県には世界に通用する隠れた食材がまだまだあります。でも、いまいちアピールに欠けているといいますか……。飲食店はごはんをおいしく食べてもらうだけでなく、多くの人に食材をアピールできる場だと考えています。農家さんや酒蔵さんともアツい絆が生まれました。みなさんと一丸となって、地元食材の魅力を伝えていきたいです!」

確かにどの食材も本当においしかった。福島県から世界へ。焼鳥は炭火で焼き上げるシンプルな料理だからこそ、食材の良さも際立つのだろうなぁ。

▼冒険のおさらい

①川俣シャモの弾力、うまみで魅せる

②福島県の食材が多彩で、うまい!

③焼鳥コースは3種類から選んで

店舗情報
【店名】よし田
【最寄り駅】須賀川駅
【住所】福島県須賀川市岡東町109
【予約】0248-94-7570
【定休日】日曜、祝日
【串のアラカルト】なし
【コース(セット)】4,400円~
【鶏メモ】川俣しゃも

毎週、焼鳥三昧! 焼鳥を斜めに逆さ撮りする〝ヤキトリスト撮り〟は元祖にして名刺代わり! 「焼鳥は串柄、人柄」をテーマに、大衆的で気兼ねない町焼鳥から、鶏にこだわり1本1本に心血を注ぐ専門店まで焼鳥まみれの日々を送っています。焼鳥好きの方、フォローよろしくお願いします!

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