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【東京都杉並区】創業50年を迎えた西荻窪のランドマーク的酒場。北口店の成り立ちは「脱・女人禁制」!?

酔街草エディター・ライター(東京都杉並区)

『やきとり戎』(北口店)

西荻窪の酒場を語る際に、欠かすことのできない店が『やきとり戎(えびす)』だ。JR西荻窪駅を挟んで南北に分かれて展開しており、どちらも改札口から1分足らずで入店できるという至近距離にあるのが嬉しい。

昭和48年(1973年)、最初は南口に17席の「コの字」カウンターだけのもつ焼き専門店としてオープン。店名は創業者である戎井力(えびすい・ちから)氏の苗字の一文字から冠したという。隣接する空き店舗を吸収しつつ店のスペースを拡大していくのだが、驚くことに当時はまだ女人禁制だった。

時代の趨勢には抗えず、「女性も入れる『戎』を!」との要望に応えて北口にも店を構えたのが、それから約12年後の昭和60年(1985年)。「ワインやチーズも振る舞う、小洒落た『戎』が出来た〜」と、当時の中央線界隈では話題になったものである。

今回、紹介する北口店は、大型の「コの字」カウンターが鰻の寝所のように細長く伸び、テーブル席と小上がりが脇と奥に用意されている。自分も長年に渡って足繁く通う中のひとりだが、時間帯によって入口に近いカウンターに陣取る顔ぶれが、いつも変わらないのが不思議だ。

お通しが無いため、まず瞬時に出てくる「煮込み豆腐」(280円)を注文。
お通しが無いため、まず瞬時に出てくる「煮込み豆腐」(280円)を注文。

初めて訪れる人は、まず、店内の魚河岸の如き喧騒に驚くに違いない。注文は従業員たちが大声で復唱し、オープンな厨房内のそれぞれの持ち場へと伝えられて行く。

巷では、「従業員が無愛想」「注文のタイミングが難しい」との呟きも聞かれるが、満席状態ともなると注文をこなすので精一杯の修羅場と化す有り様を見れば、誰しもが納得すると言うもの。ここでは客のほうが「習うより慣れろ」なのだ。

日替わりメニュー。これでも南口店より品数は少ない。
日替わりメニュー。これでも南口店より品数は少ない。

あまりのメニューの多さにも、目を丸くするかもしれない。定番の串焼のみならず、刺身、和洋中の惣菜、揚げ物、サラダ類などの本日の日替わりメニューが、「これでもか!」とばかりに待ち受けている。

まずはドリンクを注文し、少々時間のかかる串焼きを最初に何本かオーダーしておいてから日替わりメニューに突入しよう。

右から「タン」「レバー」「カシラ」「ハツ」(1本95円)。
右から「タン」「レバー」「カシラ」「ハツ」(1本95円)。

備長炭で丁寧に焼き上げるもつ焼きは、外側がカリッとしつつも中はジューシーで旨い。塩でもタレでも甲乙付け難く、お好み次第なのだが「タレ塩お任せ」という奥の手もある。

「焼酎ストレート」(240円)、「玉ネギ」(120円)、「シロ」(95円)。
「焼酎ストレート」(240円)、「玉ネギ」(120円)、「シロ」(95円)。

やや甘めのタレは、炭火で焼き上げたもつによく絡んで旨い。玉ネギなどの野菜などにもよく合う。ちなみに「からし」は別料金(30円)としてメニューに載っているが、ちゃんと伝票に付いているのかどうかは、今もって不明。

たまにお目にかかる「イワシたたき(280円)」。
たまにお目にかかる「イワシたたき(280円)」。

刺身類も新鮮で種類が豊富。どれもが格安で提供され、天然の生本マグロがほぼ1000円以下で提供される。いつぞやは、大間の近くで水揚げされた本マグロも同じ値段で出されていて驚いた記憶がある。

「カンパチのカマ焼き」や「ハマチのカブト焼き」などがある日も。
「カンパチのカマ焼き」や「ハマチのカブト焼き」などがある日も。

運が良ければ「真鯛のカブト焼き」(580円)に遭遇するチャンスも。絶対数が少ないため、ほぼ開店と同時に売り切れてしまうのが難点だが・・・。

イワシと包み込んだポテトとの相性も抜群。
イワシと包み込んだポテトとの相性も抜群。

揚げ物の中でも一番人気なのが「イワシコロッケ」(レギュラー550円、ハーフサイズ330円)。ここ北口が発祥の『戎』の名物料理で、どんな酒にも合うと評判だ。

「ラム串」や「ステーキ串」は隠れた人気アイテム。
「ラム串」や「ステーキ串」は隠れた人気アイテム。

炭焼の種類も豊富。『戎』では、珍しい比内地鶏の串も楽しめる。ここには載っていないが、「比内地鶏ツル皮(首肉部分の皮)」(230円)も加わった。大ぶりの串でコリコリとした感触が、皮好きとしてはたまらない。

コスパを取るならメガハイボールがおすすめだ。
コスパを取るならメガハイボールがおすすめだ。

ついハイボールや焼酎の安さに目が行ってしまうが、北口『戎』の隠れた目玉がワインだ。スペイン直輸入の『パゴ・ビルチェス』が、赤白選べる上に何とフルボトルで1000円という破格ぶり。飲み切れなかったら持ち帰っても構わないと、どこまでも良心的。

50周年の創業祭サービスメニュー(北口店)。中生ビールが半額!
50周年の創業祭サービスメニュー(北口店)。中生ビールが半額!

この9月で『戎』は50周年を迎えた。誠にめでたい〜。自分にとっては、学生時代に酒の呑み方を最初に覚えた店でもあるだけに、なかなか感慨深いものがある。「レバ刺しダブル、ニンニクで!」と焼酎を生(き)で煽っていた青二才の当時が懐かしい。

昔は、南口の西友寄り角の「コの字」カウンターが気に入っていたのだが、残念ながら倉庫と化してから以後は、北口店通いが慣例となっている。顔馴染みの従業員が、こぞって北へ異動したのも大きな理由だ。

『赤戎』『白戎』は自分が勝手に命名。
『赤戎』『白戎』は自分が勝手に命名。

自分の場合は、仲間とワイワイやりたければ南口の『赤戎』、独りで呑むなら北口の『白戎』と決めている。どちらも晩酌がてら毎日のように通っても飽きさせない盤石の品揃えは、まさに吞兵衛の桃源郷なのだ。

ただ、5月にコロナが五類に移行した後も、店内にはアクリル板の仕切りが残され、入店の際のマスク着用が求められている(2023年8月末現在)。おそらく常連客や従業員にも高齢者が多いための配慮からなのであろう。

マスク解禁を望む声も少なくないようだが、常連客の証としての会員証代わりだと思えば苦にはならないと思うのだが、いかがだろうか・・・。

さてさて、今宵も大満足。ご馳走様!

やきとり戎 西荻北口店   Rettyページ

住所:東京都杉並区西荻窪3-19-12

電話:03-3390-8445

アクセス: JR中央線西荻窪駅北口から徒歩1分

営業時間: [月~金] 16:00~22:00(L.O.21:30)
     
     [土]    12:00~22:30(L.O.22:00)
    
     [日・祝] 12:00~21:30(L.O.21:00)

SNS:やきとり戎 西荻北口店

エディター・ライター(東京都杉並区)

中央線沿線の街並みとお酒をこよなく愛する、元・雑誌編集者です。長年に渡って杉並区の荻窪に在住。居酒屋をはじめ、グルメに関する話題・スポットを中心に、皆さんの役に立つ情報を発信して行きます。

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