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【杉並区】静かでまったりとした大人の時間が愉しめる!こだわりが凝縮された隠れ居酒屋が荻窪に

酔街草エディター・ライター(東京都杉並区)
アジフライの柴漬けと和えたオリジナルのタルタルソースに感動!

荻窪『ゆき椿』

訳もなく独りで呑みたい時や、気の置けない仲間と少人数で盃を交わすなら、落ち着いた雰囲気の酒場が良い。しかも、旨い酒と美味い肴があれば言うことなしだ。

荻窪界隈に和食の名店は数多あれど、そんな要望を必要十分に満たしてくれる居酒屋が、意外と少ないと感じる人も多いのではなかろうか。

そこで、満を持してお勧めしたいのが『ゆき椿』である。

あえて、”穴場”との表現は避けるが、大人がまったりと寛げる”知る人ぞ知る店”である事は間違いない。

オーナー・店主の市川鉄平さんが、荻窪に『ゆき椿』を構えたのは2014年5月。祖父と父が、二代にわたって「中野ブロードウェイ」の2階フロアで営んでいた、新潟郷土料理『雪椿』(2006年に閉店)の屋号を継承する形での開店だった。

以前はサラリーマンをしていたという鉄平さんは、語学留学の目的でスペインに8カ月滞在。帰国後は銀座のスペイン料理店で修業を積み、その後、赤坂にある創作料理の人気店を経て、現在に至っている。

豊富なメニューの中にエスニックな要素が盛り込まれているのは、どうやら、この両店で培った経験が活かされているようだ。

外観からは居酒屋とは気がつかないかも知れない。
外観からは居酒屋とは気がつかないかも知れない。

JR荻窪駅北口から青梅街道を四面道交差点方向へ歩くこと約7分。杉並公会堂を過ぎた辺りで斜め右を見上げると『ゆき椿』の小さな看板が灯りの中に浮びあがっている。

アニメ映画のキャラクターが描かれたカフェ&バーの脇から、鉄階段を登って2階へ。窓の無い意味有り気な佇まい故に、ここに店舗があるとはなかなか気付かれず、『ゆき椿』が”隠れ家的な居酒屋”と呼ばれている由縁となっている。

扉の前に立つと、一見客にはなかなか敷居の高そうな店だと感じられるかもしれないが、それが杞憂に過ぎないことは、直ぐに解るだろう。

木目を活かした和のテイスト溢れる店内は、4人掛けのテーブル席が3つとカウンターに7席が用意されている。開店から3年間は父親の清久さんと二人三脚だったが、その後は、鉄平さんがたった一人でこの店を切り盛りしている。

たまに、「この広さをワンオペで?」と驚かれることもあるそうだが、「独りが気楽でいいし、慣れていますから」と、鉄平さんは意に介さない。

「お通し」(600円)は、日替わりの魚を使った汁碗がデフォルトで、酒を呑む前に胃袋を温めて欲しいとの配慮が嬉しい。出汁の引き方がいつもながら絶妙だ。

生ビールは、チェコ・ザーツ産のホップを使用した「エーデルピルス」(800円)。荻窪界隈で呑める店は、数件しかないかも知れない。

カウンターの一番奥側に鎮座しているレトロ調の生ビールサーバーが、とても洒落ていて、ついつい眺め入ってしまう。

グラスに注がれる様を観れば、エーデルピルスが2倍旨く感じるはず!

日本酒も地酒好きの心をくすぐる品揃えだ。季節に応じて、メニューには載っていない冷おろしや新酒も隠れているので、遠慮なく店主に尋ねてみよう

酔街草の好きな香川県の「悦・凱陣」(一合1600円)。骨太で芳醇な旨みは、鉄平さんの創る、どの料理にもマッチする。

本醸造「群馬泉」(一合800円)。燗酒も抜かり無し!

「天青」(一合1300円)の新酒は、キリッと冷やされて登場。和食に合わせやすい、すっきりとした酒だ。

芋、麦、米と焼酎の種類も豊富。前割り焼酎を燗で愉しむことも出来る。もちろん、スペイン産ワインや洋酒も各種取り揃えており、肴によって酒類の変化を愉しむのも、『ゆき椿』ならではの醍醐味だ。

まず酒を頼み、やや時間差で「お通し」が出て来るのを待ちながらメニューに目を通す間が愛おしい。どれも酒呑みのツボを押さえた肴ばかりで、迷ってしまうのは当たり前。

その日のメニューは、まだまだ裏まで続き、〆の食事にも唆られるラインナップが並ぶ。

「バスクチーズケーキ」のデザートは、女史ならずとも目が行ってしまうことだろう。

この日の「お造り1人前(五種)」(1500円)は、金目鯛、かつお、真鯛、白イカ、小肌酢〆。

頼めば好みのネタで、二種盛り、三種盛りもアレンジしてもらえる。

「椎茸のタンボリル風」(900円)。”タンボリル”は、スペインのサン・セバスチャンにあるバルの名前で、そこで食べたマッシュルームからヒントを得たのだそう。

肉厚の椎茸を使ってのアレンジは、シンプルながら出汁が利いていて旨い!創作料理が鉄平さんの真骨頂であることを示す一品でもある。

「ラムスジと金時豆の煮込み」(1200円)。ブラジル料理のフェイジョアーダをアレンジと言った所だろうか。ラムと金時豆の相性が抜群で、ビールや焼酎に良く合う。

実は、酔街草の好物の最右翼が「アジフライ」(700円)。衣のサクサク感とほっくりとした身とが相まって、たまらなく旨い!

塩だけでもいけるが、柴漬けの入ったオリジナルのタルタルソースが、これまた捨て難い。残ったタルタルを肴にして、お銚子1本追加は覚悟の上だ。

『ゆき椿』の書体は、著名な現代陶芸家である辻村史朗翁の手によるものだそう。本来は『雪椿』と漢字2文字だった屋号を、平仮名への改名も奨められたとも・・・。

何とも言えない情緒を醸し出している。

コロナが5類に移行してから初めてとなる年の瀬が間近に押し迫り、巷では忘年会の復活を待ちわびていたと言う声もちらほら聞こえてくる。

久々に大勢で羽目を外すのも構わないが、今年1年を『ゆき椿』の酒肴と共に穏やかに振り返ってみるのも一興ではないだろうか・・・。

さてさて、今宵も大満足〜ご馳走様!

ゆき椿
住所:東京都杉並区天沼3-12-1 2F
電話番号:03-6279-9850
アクセス: JR荻窪駅・ 東京メトロ丸ノ内線 荻窪駅 北口から徒歩7分

営業時間: 18:00~23:00(LO.22:30)
日曜定休 *年内は12月29日まで、年始は1月9日から。
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エディター・ライター(東京都杉並区)

中央線沿線の街並みとお酒をこよなく愛する、元・雑誌編集者です。長年に渡って杉並区の荻窪に在住。居酒屋をはじめ、グルメに関する話題・スポットを中心に、皆さんの役に立つ情報を発信して行きます。

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