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ご飯を食べたのに「食べてない」と言われたらどう答える?【介護福祉士が考えるクレーム対応のコツ】

こんにちは!認知症のケアサポーター『夢 はるか』です。

わたしは介護福祉士として、介護現場で15年以上働いてきました。

今日は、わたしがデイサービスセンターで働いていたときに経験した『認知症あるある』と、その対応法をご紹介します。

ご飯を食べたのに「食べてない」と言う

さっき、ご飯を食べたばっかりなのに、

「まだ、食べてないよ」

という認知症の方は、よくおられます。

ちょっと前のことが思い出せない記憶障害の状態になると、つい自分の腹時計に正直に発言してしまいます。

デイサービスでは、認知症の人同士が仲良しになることもよくあります。

「あんた、ご飯食べたけ?」

と、お友達に聞いています。

聞かれたお友達もまた、

「まだ、食べてないわ」

と、自分の腹時計に正直に答えてしまいます。

二人とも、2時間前には

「お腹いっぱい。ごちそうさま!」

と言っていたのに…

わたしはその後の会話の進展を、耳をダンボにして聞いています。

声が大きくなって周囲の迷惑になるほど、話がエスカレートしない限り、黙って見守ります。

しかし『いざ介入』というときに、的確な対応ができるように、二人の会話の内容は注意深く聞いています。

そのうち、二人の思いが高まって…

「ここは、ご飯も出ないのか!」

と、ついに怒りモードになってしまいました。

さあこんなとき、どう答えたらいいでしょうか?

相手の気持ちを否定しない

「さっき、食べましたよ」

と言えば

「食べてない!」

と必ず言われます。

食べていないと確信しているから、怒っているのです。

そしてわたしが、

「さっき、食べましたよ」

と言ってしまえば、それがたとえ事実であっても、

「食べてない」

という相手の気持ちを、頭ごなしに否定してしまうことになります。

そこで、相手の思いを否定せずに、気持ちを違う方向に向けられるように声かけを工夫します。

「何が食べたいですか」

「確認してきますね」

「もうちょっとかかるようなので、お散歩でも行ってきますか」

そんなふうに話しかけているうちに、気持ちが落ち着いてくることもあります。

それでもダメなら、ご本人たちが好きなゲームを一緒にするなど、ご飯以外の楽しみを提供することもあります。

思いに寄り添うこと

事実はどうであれ、あくまで相手の発言を否定せず、相手の『思い』に寄り添うことが、解決につながります。

単にクレームを言いたいわけではなく、若い職員たちを育てるために、あえて苦言を呈してくださる方もおられます。

それでも、事実でないことで怒られると、どうしても腹を立てたくなります。

しかし『失われた記憶』が発言の背景にあることを理解し、人生の先輩へのリスペクトを常に忘れずにいたいものです。

介護福祉士としてデイサービスや訪問介護の現場で働いてきました。職場の上司の指導で、研究会での発表や、学術誌へのケースレポートの投稿なども積極的に行なっています。また、子どもの頃から好きだった漫画やイラストを描くことで、認知症の知識や介護のコツをわかりやすく伝えることを心がけています。

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