ゴルフスイングには‟不安定の使いこなし”が必要 武術の原則でもある体の使い方
再現性高くショットを繰り出すためには、スイング中の体やクラブの動きの安定感は不可欠。その安定感を得るには、スイング中のクラブの重力や遠心力についての理解を深めて、それらと協調する体の使い方を覚える必要がある。
クラブの重力や遠心力は、体のバランスを崩す力。スイングを不安定にしてしまうものだ。
‟不安定のもと”と言うと聞こえが悪いが、これは扱い方次第で、逆にスイングを安定させ、クラブヘッドがボールに伝える力を大きくするものになる。
スイング中の体が受けるクラブの重力や遠心力は、受け止めて消すのではなく、生かして使い切ることを考えたい。
固定と安定は違う
体を安定させようと下半身を固め、クラブの動きを安定させようとグリップを固めても、体やクラブの安定感は得られない。
なぜならスイングは、始動でクラブヘッドが地面から離れた瞬間から、体がクラブの重力の影響を受ける。さらに、スイングが進むに従い、クラブの勢い(遠心力)の影響を受ける。
さまざまな力の影響を受けるため、‟固定”のイメージでは‟安定”を得ることはできない。
例えば陸上競技のハンマー投げ。ハンマーは約1.2メートルのピアノ線に約7キロ(男子の場合)の鉄のかたまりがついているが、これをサークルの中でグルングルンと回すと、とてつもない負荷が体にかかる。
この時、体を固定していたらどうなるだろうか。すぐにバランスを失い倒れるか、体がサークルの外に持っていかれてしまうだろう。
ハンマーを回しながら、サークル内にとどまり続けるには、ハンマーがかけてくる力と協調する力(反対方向へ体を倒そうとする力)を出しながら体を回す必要がある。それができれば、体の安定感が高まるだけでなく、リリースポイントでのハンマーの力が大きなものになる。
これはゴルフスイングも同じ。ゴルフクラブがかけてくる力と協調するように体の力を使うことで、スイング中の体の安定感が高まり、クラブヘッドが加速しやすくなる。
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‟不安定の使いこなし”とは
武術研究者、甲野善紀氏は自著「上達論」の中で、武術における肉体の使い方の原則を‟不安定の使いこなし”という言葉で表現している。
武術では筋力に頼って力を発揮しようとするのではなく、相手の体勢やかけてくる力に合う形で、自分の体勢を体重を使いながら崩せば、体格に勝る相手に対しても有効な力をかけられる、と述べている。
柔軟に体を使う
多くのゴルファーはスイング中、体のブレを抑えようと、体を固めようとしすぎている。
体を固めると腕力に頼らざるを得なくなる。結果、その腕の力みに、クラブの重力や遠心力も加わり、体がブレる。
一方、構えから体勢を崩すように柔軟に体を動かせば、重力や遠心力がプラスに働き、体のブレが抑えられクラブヘッドが加速しやすくなる。
仮に体がブレていても、「体がブレているからブレを止める」ではなく、「体がブレない動かし方はどういうものか」という観点が必要だ。
その一例が、先にあげたハンマー投げだ。サークルで体がハンマーに持っていかれるからといって「サークルから体が出ないように踏ん張る」では、ハンマーを遠くへ、かつ規定の幅の中に高確率で投げることはできない。
体を固めていた人が、柔軟に体を動かそうとすると、一時的にミスヒットが増えるかもしれない。その場合は体がブレている可能性が高いが、「体を動かそうとすることは良いのだが‟動かし方”が良くない」と考えたい。
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