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自然農をやるのは簡単だけど『農業』にするのは至難という話。

かーびーファームインタープリター/自然農YouTuber
当たり前だろ!…と言われそうなことを書きますが、よければ最後まで読んでみ下さい

自然農は誰でもできるのか?

『自然農』という言葉の認知も広まってきて、やってみたいと言う方も増えてきているように感じます。

…それってあなたの感想ですよね?と言われそうですが、自然農について発信するYouTubeを2018年からやってきて視聴者さんの反応からそう感じるのでいちおう、根拠はあります。

やったこと無い人からすると

『自然農や無農薬栽培は難しそう』と思われそうですが、
やること自体はとても簡単です。

タネや苗を用意して、地面に植える。

後は野菜が育つのを待つ。

究極的にはこれで終わりです。

いや、究極でいえば、種蒔きすらしません。
もちろん、耕すことも、水やりも、虫除けもせず、肥料や農薬も使わず、ただ放っておきます。
『自然生え』と言って、育った野菜が実を付けてタネを地面に落としてそのタネからまた野菜が芽吹いて育つ。自然界の植物が毎年繰り返し行っている、植物としてはごく当たり前のことです。
私自身、『野菜の雑草化』と称して、いくつかの野菜、食べられる草や植物で実現しています。

記事の途中ですが、長くて読みにくいと思った方は動画でも話しているのでよかったら↓こちらをご視聴下さい^^

ブログに書いていないことも喋っているので、記事全文読んでもう少し話聞いてみたいと思った方も是非見てみて下さい。

ということで続きの記事です↓

『できる』けど『ちゃんとした野菜が収穫できる』とは限らない

さて、ここでタネ明かし…というか現実を言うと、

コツやポイントを抑えなければ野菜はまともに育ちません。

『誰でもできる』というのは『やってみることは誰でもできる』ということで、

誰でも自然農で野菜を育てて収穫できるわけではありません。

むしろ、農薬、肥料、ビニールマルチなど便利な資材を使わない分難しくなります。

なんでこんな当たり前のことを書いたかというと、たまにYouTubeやSNSで

『自然農は誰にでもできる農法!』みたいなことを言ってる人がいるからです。

かく言う私も、自然農や自然農法に興味を持ちやり始めた10年前はそれこそ

誰にでも出来る農法だから研究して広めたい!と思っていました。

しかし、そこから10年以上続けてみてわかったのは、タイトルの通りです。

自然農はお金が掛からない

↑これが私が自然農ならだれでも出来ると考えていた当時の理由です。

農薬も肥料も資材も機械もほとんど使わずにできる自然農は、お金を掛けなくても出来るから誰にでも始めやすいと考えたし、実際にそうです。

ただし、繰り返しになりますがやることは出来ても野菜ができるとは限らない。

まともな大きさ形の野菜を安定的に自然農で育てられる人はごくわずかです。

むしろ、慣行農法の方がノウハウが確立されている分、資材や機械を買うお金と、勉強と実践をする時間は掛かりますが、続ければ誰でも作物を栽培して収穫できるやり方です。

慣行農法とは、その時代・地域で一般的に行われている農法のことで現代日本では農薬や化成肥料、有機肥料、堆肥、ビニールハウスなどの各種資材、機械など使えるものは適宜使う農法のことです。

仕事にするならやっぱり慣行農法がやりやすい

自然農でも野菜が育つようになるけど…

難しいと言っても、やり方がわかってきて土の状態も良くなれば自然農でも立派な野菜は育つようになります。

↓自然農で市販のものと遜色ない大きさと状態になったキャベツ

無農薬無施肥、ビニールマルチも防虫ネットも使わずに畝にタネを直播して放っておいて出来たキャベツ。自然農でのキャベツはかなり難しく10年かかりましたが出来るようになりました。ただし…
無農薬無施肥、ビニールマルチも防虫ネットも使わずに畝にタネを直播して放っておいて出来たキャベツ。自然農でのキャベツはかなり難しく10年かかりましたが出来るようになりました。ただし…

ただし、ここまで立派にできたのは10株中2~3つだけ。

他は殆ど球にならなかったりちいさかったりしましたし、慣行栽培よりも1~2ヵ月くらい余計に時間が掛かってます。

そう、野菜は出来るようになるのだけど、規格に合うサイズや品質になりにくいので慣行栽培の野菜よりも高くしないと採算が合わないし、仮に採算に見合う値段を付けたら高すぎて誰も買ってくれない値段になります。

キャベツ栽培の難しさを痛感すると、ずらっと虫食いもなく立派な大きさのキャベツが並んでいる畑をみると、農家さんてすごいなぁと感心してしまいます。

データが示す有機栽培が稼ぎにくい現実

自然農は無農薬無施肥、ビニールマルチや防虫ネットも使わなかったりするのでそれではさすがに栽培効率が悪すぎるので、もう少しハードルを下げると有機栽培となります。

(自然農も有機栽培に含まれる一つの農法なんだけど実践している人たちの間では違うものとして認識されています)

有機栽培は、人工的な化学合成農薬や化学合成肥料をほとんど使わない農法で、新規就農を希望する方々や健康志向の高い消費者を中心に関心が高まっているしニーズも増えてきています。

けれども現在、日本の農産物の作付面積は99%以上が慣行栽培です。

有機栽培の割合は近年少しだけ上がったのですがそれでも0.6%ほど。

これには有機栽培を名乗るためにはとてもめんどくさくて手間とお金のかかる有機JAS認証を取らなければいけないというハードルのせいもあるのですが、それにしても低い数値。

農水省は2050年までにこの0.6%を25%にまで引き上げるという目標を立てたのですが…個人的には今のままでは無理じゃないかなーと思います。

毎度のことながら長ーくなってしまったので、今回はここで一旦終わります。

また続きも書こうと思いますので、よかったらこちらをフォローしてみて下さい。

時々過去の記事も加筆修正したりしてます。

ファームインタープリター/自然農YouTuber

愛知県西尾市にて自然農を実践してます。 農を切り口にして自然の面白さや大切さを伝える情報発信や体験イベントも行い、 農の楽しさを伝える『ファームインタープリター』を自称してます。 『野菜を売らない百姓』でもあり、 売らなくても良いからこそ自然農にまつわる色々な実験や研究をやって その様子をYouTubeにて発信しています。

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