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輸入が止まったら日本の農作物生産力はどれだけ減るのか考えてみる

かーびー

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今回の記事は動画でアップした内容のおさらいと補足的な内容となっております。
良かったらYouTubeの動画もご覧下さい。

『食糧危機』がネット上で話題になっている

最近、農業系YouTuberの間で話題になっているのが
『肥料価格の高騰による食糧危機が来るかも知れない』
というテーマ。農チューバーのみならず、食や暮らしにまつわるYouTubeチャンネルでも食糧危機について触れる動画が多く、再生数も多くなっています。

この動きの発端となったのが、少し前に鹿児島のアスパラ農家さんがYouTubeに挙げた動画です。その動画を見て私も普段から思っていることがあり、動画を出しました。
それがこちら↓で、この動画の方が先に出しています。

さて、この一連の話題の発端は『肥料価格の高騰』によるものです。

そこで普段から肥料(化学合成肥料はもちろん有機肥料や堆肥も含めて)も農薬も使わずに栽培をしている経験と、過去にやってきた肥料を使った比較実験の経験からお話をさせて頂きました。

肥料有り無しで収穫量は2~4倍変わる

先に結論を言うと↑この通りです。その根拠は昨年やってみたタマネギの栽培比較で、追肥をした場合としない場合では平均して3倍ほど、肥料を入れた方が大きくなりました。

またジャガイモの場合、無肥料で栽培すると土質や品種にもよりますが、だいたい植えた種芋の5~10倍(50gの種芋が500gになる感じ)ほどになれば上出来です。
それに対し、肥料(有機や化成肥料)やビニールマルチなどの資材を使用した場合は種芋の10~20倍ほど(50gの種芋が1kgになる感じ)だそうです(友人の有機農家さんに聞いた話です)

そして主食である米は、
現代の慣行農法(農薬・化成肥料使用)だと1反(300坪)当り7~8俵(1俵=60kg:8俵は480kg)
それに対し、自然農(無農薬無肥料)だと良く出来て4俵(240kg)ほどです。

これらのことから、現在の主流である化学合成肥料を使えなくなったら単位面積当りの生産量はだいたい半分くらいになるんじゃないかと予想します。
但し、栽培や収穫の為の時間や稼働させる機械の燃料消費は面積当りではそれほど変わらないので生産効率で言えばもっと下がることになります。

化成肥料がダメなら有機肥料や堆肥を使えば良い?

人口的化学合成肥料(化成肥料)はほぼ輸入に頼っています。では有機肥料はどうかといえば、これも見事なまでに輸入依存の状態です。

有機肥料の代表格である米ぬか、油粕、そして牛糞や鶏糞などの各種家畜糞堆肥。

まず、米ぬかですが上述の通り、稲作自体が現状化成肥料と農薬に頼った栽培となっており、自然農にした場合は生産量が半分になりますし、その場合米ぬかは田んぼに戻すことになるので畑に使う分は無くなります。

次に油粕ですが、そもそも油粕がなんなのかというと、大豆や菜種油から食用油を絞った後の絞りかすのことです。
大豆の自給率については少しややこしく納豆や豆腐用のものを含めた全体では5%程度ということから油用の大豆はほぼ100%が輸入だと考えられます。菜種油用の菜種(ナタネ)についても99.9%が輸入です。※ちなみに油用の大豆や菜種の殆どは遺伝子組み換え品種です。

つまり、油粕も輸入に依存している状況なので輸入が止まれば入ってこなくなります。

では家畜糞堆肥は?

こちらも殆どが輸入に依存している状態です。
家畜糞は当然ながら家畜の排泄物なので、エサとなる飼料と飼育数によります。
家畜のエサである飼料は大きく2つに分けて牧草や稲わらなどの粗飼料とトウモロコシや大豆油粕などの濃厚飼料があります。
その使用比率(家畜が吸収できるカロリーベースで)は下記のように2:8ですが、

※農水省HPより引用
※農水省HPより引用

次の表からわかるように、粗飼料を利用できるのは牛のみで、それも酪農と繁殖用でおよそ50%ほど。それ以外は約90%が濃厚飼料によるものです。

※農水省HPより引
※農水省HPより引

では、粗飼料と濃厚飼料の自給率はというと↓この通り。

※農水省HPより引用
※農水省HPより引用

粗飼料は80%近いですが、重要な濃厚飼料は12%です。
これらのデータから、輸入が出来なくなれば畜産業の生産力は現在の10%程、良くても20%くらいになるので、そこから出る家畜糞堆肥も現在の10~20%まで減少することになります。

つまり、仮に輸入が止まってしまえば、化成肥料も有機肥料も堆肥もほとんど利用出来なくなると言うことです。

未利用資源の活用技術を高めていく必要がある

令和2年度の日本の食糧自給率(カロリーベース)は37%でしたが、ここまで書いた海外からの輸入肥料に依存した栽培方法だということも考慮するともっと低いことになります。

そんなことまで農水省も考えてはいないようでデータはありませんが、仮に肥料や資材までを含めた自給率で考えたらおそらく20%を下回るでしょう。

自分で記事書いておきながら、とんでもない状態になっていると思えてきました。
栽培や飼育に必要な肥料、飼料まで含めた自給率は20%で済むかもしれませんが、機械を動かす、石油系資材の原料となる石油までを自給率に含めたらもう自給率は10%にも満たなくなるんじゃないでしょうか。もちろん、それらがすべて輸入できなくなるというのは考えにくいのですが、海外情勢によって価格の変動は避けられず、今回のような肥料価格の高騰による農家経営へのダメージにつながります。

なかなか絶望的な状況に思えてきましたが、日本は恵まれているものも多くあります。

まず、雨が多く水が豊富で、国土の7割が森林であること。そして土も肥沃で海洋資源にも恵まれています。

農薬も肥料も使用しない『自然農』の栽培技術を高めていくことも効果的で必要だと思いますが、やはり養分を加えた方が作物は良く育ちます。
その養分として、今年実験してみようとしているのが街路樹や庭木などの剪定屑や落ち葉、伐採された木を粉砕して熟成させた木質チップです。農業の通説では、木質の多いものは肥料にならないどころか、窒素分を奪うので肥料にはならないとされてきましたが、やり方次第では木質チップに直接作物を植えても大きく育てることができるようなのです(現状、見学してきただけなので今年実験してみます)

他にも、木ではなく、竹を粉砕した竹チップは糖分を多く含んでいることもあり木よりも発酵分解が早いですし、なにより生長が早いです。

これらの利用は、現在の安価に利用できる化成肥料に比べて使いにくいし効果も不安定でしかも高く付くため使われていませんし、それどころかゴミとして焼却処分されるか、手入れされずに放置されて山が荒れる原因にもなっています。こういった、コストや使い勝手の悪さから現在は利用されていない未利用資源の活用技術を研究開発していくことが自給率アップには欠かせないことだと思います。

『問題の山』を『宝の山』に変えていく

日本の山は本来『宝の山』といえるほどに多くの恵みをもたらしてくれるはずなのですが、日本人の生活様式が変わったことで利用されなくなり、維持管理がされずに荒れてしまい、今では獣害、土砂災害、を引き起こす『問題の山』になってしまっています。

これは、私たち日本人が面倒なことを他人や海外におしつけて便利さを追求してきた結果です。SDGsという言葉が世界的な共通認識になった今こそ、自国の問題に目をむけて短期的な利益だけでなく、長期的な視点での考えて行動すべき時になっていると思います。

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