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【土浦市】昔の道具で、昔のやり方で。土浦市立博物館で行われている「はたおり教室」取材レポート

コイケケイコ土浦在住ライター(土浦市)

土浦市立博物館では、技術伝承を目的とした「はたおり教室」(※)が定期的に開催されています。用いる道具は新しいものではなく、昔、本当に使われていたはたおり機。昔の道具で、昔の手法で。体験してみることで昔ながらの暮らしに触れることができます。

※はたおり教室・・・今年度は「はたごしらえ講座」や「はたおり体験講座」として開催しています

土浦の歴史と文化を今に伝える「土浦市立博物館」

「はたおり教室」を開催している「土浦市立博物館」は、亀城公園に隣接する土浦市運営の博物館です。土浦藩土屋家の刀剣や茶道具を鑑賞できる展示室や「霞ヶ浦に育まれた人々のくらし」をテーマにした土浦の歴史と文化を紹介する展示室があり、こうした常設展示以外にも特別展や展覧会なども開催されています。

「はたおり教室」の目的はカタチのない技術を伝えていくこと

土浦市立博物館でのはたおり教室は、1990年(平成2年)より始まりました。土浦市が発行する広報誌などで開催の案内が行われると申し込みが殺到するというほどの人気ぶりです。この教室は、趣味の幅を広げてもらうための講座ではなく、実際に生活の中で行われていた「家事」としてのはたおりの意味を知り、継承してもらうために開催されてきました。

今回取材した「はたおり体験講座」は、はたおり教室の卒業生たちが講師となり、一般の方たちにも実際のはたおり機にふれ、昔の女性たちの手仕事を知っていただくことを目的に開催されたものです。

3台あるはたおり機は、同じように見えて1台1台の造りが違っています。またはたおり機には「たけおさん」「おきぬさん」と気になる貼り紙が…。

「土浦市立博物館にあるはたおり機は、実際に使われていたものを寄贈してもらった貴重な資料です」と、土浦市立博物館の学芸員 萩谷さん。

写真の「たけおさん」の貼り紙がついたはたおり機は、物資不足の戦後すぐに現在のかすみがうら市にいた木挽きの武夫さんという方が、お母様の生家よりはたおり機を借りてひな型にして自作したものです。1台1台の造りが異なるのは、こうした歴史があるからこそ。トントンと聞こえてくるはたおり機の音に、当時の情景が思い浮かぶようです。

裂いて織って再利用する、資源を大切にする昔の人たちの知恵

好きな洋服を購入して、着なくなったら捨ておくという現代とは違い、昭和30年くらいまではぼろぼろになるまで着用した衣類を捨てることなく、裂いて裂き布として用い、再利用するというのが日常でした。今でこそエコライフ、サスティナブルが提唱されていますが、その当時は当たり前のことだったのです。

材料は講師の先生が持ち寄った古もめん。洋服だった生地が鍋敷きやコースターにと姿を変えていきます。

「裂いて織って再利用する。資源を大切にする昔の人たちの感覚を体感していただければうれしいです」と講師の先生は話します。

昔の家事仕事のひとつを体験し、当時に想いを偲ばせる

右へトントン、左へトントン。

「昔は家族の衣料をまかなうために織っていたと先生に教えていただきましたが、気の遠くなるようなこの作業が日常だったなんて。今の豊かな時代を幸せに感じます」と、講座に参加した生徒さんの一人は緊張したぎこちない手つきで布を織りながらそう感想を教えてくれました。

土浦周辺で行われていたはたおりは、女性たちが家族の衣料をまかなうための素朴な木綿織りです。食事をつくる、洗濯や掃除をするといった女性たちの日常の仕事のなかで行われたもので、いわば家事のひとつともいえるはたおりなのです。土浦市立博物館が資料としてはたおり機を使った教室を開催しているのは、まさにそんな昔の暮らしを理解してもらうことにあり、カタチのない技術を伝承していくことでした。

「寄贈してもらったはたおり機は、貴重な博物館資料ですので、本来ならばふだんは収蔵庫に保管し、ときおり展示をしながら保存していくべきものですが、昔の人たちの暮らしを知っていただき、技術を伝えていくことも大切な活動なので、体験用として活用させていただいています」と学芸員の萩谷さん。

織りあがった布は、最後に講師の先生が切り離して、参加者にお渡ししています。

「情報ライブラリー」では、動画で機織りの一連の流れを学ぶことも

土浦市立博物館には「情報ライブラリー」があり、書籍での資料のほかに、動画でさまざまな資料を見ることもできます。

昭和30年代まで土浦地方の農家で行われていたというはたおりを分かりやすく解説した動画もあります。

また、はたおりの工程は「地域文化資産ポータル」というWEBでも視聴できるので、自宅にいながら学ぶこともできます。

■地域文化資産ポータル(土浦周辺のはたごしらえ)

https://bunkashisan.ne.jp/bunkashisan/08_ibaraki/7038.html

2022年2月に講師の先生方による作品展を開催予定です

はたおり体験は、現在予定している開催分はすでに申し込み受付が終了していますが、2月に教室を卒業された作品展が予定されていて、その時にはたおり体験ができるイベントも予定しています。

作品展の案内は、土浦市立博物館のホームページなどで行われますので興味のある方はチェックしてみてくださいね。

施設情報
土浦市立博物館
住所:茨城県土浦市中央1-15-18
電話番号:029-824-2928
開館時間:9:00~16:30
定館日:月曜(祝日の場合は開館、祝日の翌日、年末年始、展示替えに伴う臨時休業あり)
入館料:一般105円、小中高生50円(はたおり体験講座は別途材料費等必要)
駐車場:あり
ホームページ:https://www.city.tsuchiura.lg.jp/page/dir000378.html

土浦在住ライター(土浦市)

土浦市在住のフリーランスの編集・ライター。海外・国内の旅行関連のガイドブックや書籍制作をはじめ、ブライダル情報誌の編集にも携わる。食べること・飲むことが好きで、趣味が興じて最近では食を中心にWEB、紙媒体などで取材執筆活動中。地元土浦の飲食パトロール、歴史やカルチャー学習も積極的に行っています。

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