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【土浦市】ハッケン!まち歩き 水郷都市・川口川の面影を辿るその4~霞ヶ浦の玄関口・川口町と3つの神社

コイケケイコ土浦在住ライター(土浦市)

川口川の面影をたどるまち歩きもいよいよ終盤。霞ヶ浦の玄関口として栄えた港町の川口町を歩きます。川口町といえば商店街「土浦川口ショッピングセンターMALL505(以降MALL505)」が有名ですが、港橋を越えて湖のほとりまで行くと水の都の象徴であった時代の風情に出合うことができます。

「MALL505」の地下を流れる川口川

川口町は享保12年(1727年)、土浦藩主・土屋陳直(つちやのぶなお)の時代に整備されました。川口川(旧桜川)が霞ヶ浦に注ぐ河口(かこう)に位置することから町名がつけられました。

中城町や本町などが水戸街道に沿って栄えた宿場町であるのに対して、川口町は港町として発展した町。川口町の岸沿いには倉庫群が建ち並び、船宿も多く存在していたそうです。

霞ヶ浦へと続く川口川の流れに沿って歩いていくと、全長505メートルの商業施設「MALL505」へとたどりつきました。普段は気づかなかったのですが、よく見るとこの商業施設、ゆるやかなカーブを描いています。これももしかしたら川口川の流れに沿ったものなのかもしれません。

「この通りの地下に今も川口川が流れているのは確かです」と木塚久仁子さん。川口川の面影をたどるまち歩きの案内人を担当してくださる土浦市立博物館の学芸員です。

線路の下を通って町の突端へ

川口町さんぽはさらに続きます。川口川の川筋に沿っていくとやがて線路が上を通るガード下へ。

さらに歩いていくと交通量の激しい大きな道路にぶつかります。その道路に架かるのが港橋。昭和10年(1935年)に市街地と駅の東側を結ぶ連絡橋として築かれたもので、当時は木造の太鼓橋として美しい姿を誇っていました。

土浦港がヨットやボートの港として整備されるのに伴い、現在の堅牢な橋へと変化を遂げました。現代では、交通の円滑化を図るために欠かせない重要路線として活躍しています。

3つの鳥居が並ぶ、歴史ある古社

川口川の霞ヶ浦への吐き口に近い場所まで行くと、木塚さんが立ち止まって「今回のまち歩きの目玉のひとつがここです」と案内してくれたのが鳥居が3つ並ぶこの場所。石碑には左から「稲荷神社」「水神宮」「水天宮」と記されています。

水天宮は福岡県久留米市に本社がある神社で、筑後川の水神として霊験があり船人だけでなく、地元の人々からも崇敬されている由緒正しい神社です。

「なぜ、その神社が土浦にあるの?」

木塚さん「天保11年(1840年)に久留米藩主の有馬頼徳(ありまよりのり)の三女である竹姫(たけひめ)が土浦藩主土屋寅直(つちやともなお)のもとへと嫁いでくるんです。久留米藩江戸屋敷(現東京・三田)にあった水天宮の分霊を土屋藩邸に祀ったのが始まりです」

その後土浦市小松にあった土屋家の邸内に祀られていましたが、昭和33年(1958年)に現在の地に遷宮されました。

面白いポーズで木塚さんがじっくりと覗き込んでいるのは、水天宮の本殿です。

本殿は覆屋(おおいや)の中にあり、当時の土浦地方では珍しい総檜造り。板壁の浮彫などの彫刻は目を見張るものがあり、市の文化財に指定されています。

覆屋の壁面に掲げられている小さな錨の絵馬も印象的です。

中央の神社は「水神宮」。天保7年(1836年)に川口町の船問屋たちによって祀られたものです。

木塚さん「水神はその名のとおり、水を司る神様のことです。水と密接な関係をもって生活する多くの船乗りたちから崇敬されていました」

境内に置かれた錨からもこの神社が船乗りたちの信仰の場であることが感じられます。

船で霞ヶ浦に臨むときに「今日も安全に過ごせますように」という願いを込めて参拝に訪れる船乗りや漁師たちの姿が目に浮かぶようです。

向かって左側には「寿寅稲荷神社(じゅえんいなりじんじゃ)」という神社があります。神社に掲げられた案内板によると創建は江戸時代で、土浦城に祀られていた祭神を合祀したもの。稲荷神社は古来より「福神の神」として商売繁盛、火難除、病難除のご利益が授かれると崇敬されています。

まち歩きのおやつは「川」にちなんだ骨せんべい

土浦城址から川口町まで寄り道をたくさんしながら歩いていたら小腹が空いてきたので、「川口川にちなんだものを」ということで、来た道を戻って立ち寄ったのが「田中屋川魚店」。明治時代にうなぎの卸問屋として創業した120年以上の歴史あるお店です。

購入したのは「うなぎの骨せんべい」(270円)。芳ばしく歯ごたえもあるお茶請けにぴったりの一品でした。

「田中屋川魚店」の隣にある和菓子のお店「すぎやま」で、『アイスどら』も購入(マスカルポーネ味、バニラ味各200円)。

「ザ・モール505」前にある公園で堪能してエネルギーチャージ。

いよいよ最後のハッケンスポット、川口川閘門跡と色川三郎兵衛銅像へと向かいます。

<水天宮・水神宮・壽寅稲荷神社>

住所:茨城県土浦市川口2丁目12番 MAP

<田中屋川魚店>

住所:茨城県土浦市川口1丁目5番9号 MAP

<創作和菓子 すぎやま>

住所:茨城県土浦市川口1丁目5番8号 MAP

土浦在住ライター(土浦市)

土浦市在住のフリーランスの編集・ライター。海外・国内の旅行関連のガイドブックや書籍制作をはじめ、ブライダル情報誌の編集にも携わる。食べること・飲むことが好きで、趣味が興じて最近では食を中心にWEB、紙媒体などで取材執筆活動中。地元土浦の飲食パトロール、歴史やカルチャー学習も積極的に行っています。

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