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【土浦市】市販の味噌と何が違うの?真冬の寒い中で仕込みを行う「土浦小町みそ」の製造現場に密着取材!

コイケケイコ土浦在住ライター(土浦市)

夏の土用の丑の日、暦の上では秋の始まりを告げる立秋を迎えると、その年に作られた「土浦小町みそ」が「小町の館」や土浦市内にあるJAの各店舗で販売されるようになります。

そもそも「土浦小町みそ」とはどのような特徴があって、どのように作られているのでしょう。

訪れたのは「一般財団法人 土浦市農業公社」。「土浦小町みそ」の製造工程を取材させていただきました。

新治地区に住まうお母さんたちが手作りする「土浦小町みそ」

土浦駅から車で約20分。沿道に果樹園が集中することから「フルーツライン」の別名を持つ県道199号小野土浦線を朝日峠方面に向かう途中、倉庫や工場が点在する地域にある「一般財団法人 土浦市農業公社」にやってきました。

土浦市農業公社は、土浦の農業を応援することを目的に開設された事業。地域特産物の開発や商品化に取り組み、併設の農業センターでは農業者の育成や研修なども行われています。

その一環として実施しているのが「土浦小町みそ」作りです。今回取材に訪れたのは、土浦市農業公社の敷地内にある「土浦市農産物加工処理センター」。ここで「土浦小町みそ」は作られています。

「土浦小町みそ」は、地域特産物の開発の取り組みの中で誕生した土浦生まれの味噌。地元産のコシヒカリを使って米麹を自家製造し、無添加にこだわった、天然の旨みが感じられる特産品です。

「土浦小町みそ」の良さは、材料にこだわるだけでなく、作り手の想いが感じられる点にもあります。味噌作りを担うのは、地元新治地区に住まうお母さんたちによって結成された「手作り食品研究会」。熟練の技と長年の経験を生かした手作りの温かさや確かさにもこだわっています。

その丁寧なもの作りと豊かなおいしさが評価され、平成16年(2004年)には茨城県農産加工品コンクールの最優秀賞に選出されました。また、土浦を代表する特産物として「土浦ブランド認定品」にも選ばれています。

寒さに耐えながらおいしい味噌作りに励むお母さんたち

「土浦小町みそ」が誕生したのは、平成元年(1989年)のこと。今年で34年目を迎えます。作り手である「手作り食品研究会」のメンバーは二代目へと引き継がれ、寒さが堪える真冬の中で、毎日休むことなく味噌作りが行われています。

現在のメンバーのリーダー格である大塚雄子(おおつかかつこ)さん。「土浦小町みそ」作り15年以上に及ぶ大ベテランです。

味噌の材料となる大豆と麹菌入りの米を丁寧に混ぜ合わせる作業を行っているのは、飯塚光子(いいつかみつこ)さん。飯塚さんも十年以上の味噌作りのエキスパートです。

練り合わさった味噌を手に取って樽に詰める作業を行っているのは勝村栄子(かつむらえいこ)さん。腰をかがめるこの作業、見た目以上に重労働です。

「どれぐらい一緒にやっているか分からないわね」というくらい、長年連れ添った3人のお母さんたちによる阿吽の呼吸で、おいしい「土浦小町みそ」が出来上がっていきます。

【作業風景①】蒸した米に麹菌を混ぜ合わせる

取材で伺ったのは午前9時30分。「土浦市農産物加工処理センター」では、すでに作業は中盤に入っていて、ご飯状態になった蒸したての米を冷ましているところでした。

「このあとに麹菌を混ぜるんですけど、熱いところに混ぜると麹が死んでしまうので、ある程度冷まさないといけないんですね」と大塚さん。

蒸し上げてすぐに台に乗せた米は、湯気立つほどの熱さです。

慣れない人だとやけどをしてしまうくらいに熱した米を、人肌くらいになるまで切り返し(天地返し)が繰り返されます。

「そろそろ大丈夫かな」と米が人肌まで冷めたところで、麹菌をまんべんなくまいていきます。

麹菌が全体に行き渡るように、また手作業での切り返しが行われます。手早く、それでいて丁寧に。慣れた手つきでもくもくと作業が進められ、米と麹菌がに混ざり合っていきます。

蒸した米を布を、敷いた箱に移し替えて優しくくるみます。布でくるんだ箱の表面にもさらにもう一枚。米がゆっくりと休まるようにお布団を敷いて毛布をかけるような作業です。

布でくるんだ米を「ムロ」と呼ばれる発酵機に入れて発酵を促します。約38度に保たれたムロは、米にとってはまさに寝床。心地良い環境で一日じっくり寝ると、翌朝には白い花が咲かせて、真っ白な美しい姿へと変化していきます。

【作業風景②】茨城県産の大豆を2時間45分かけてふっくらと炊き上げる

麹菌入りの米をムロに入れて終了・・・かと思いきや、味噌作りはまだ始まったばかり。次にお母さんたちが行うのは、大豆を蒸す作業です。朝6時半に火入れをした大きな釜には約40キロ分の大豆が!

大豆が蒸し上がるまでの所要時間は約2時間45分。釜を開けると、立ちこめる湯気の中に柔らかく煮えた大豆が姿を覗かせます。この所要時間は、大豆がおいしく煮えるベストタイミング。これ以下でもこれ以上でもありません。

ふっくらと炊き上がった大豆は、つやつやで香り豊か。このままでも十分においしそうです。

炊き上がった大豆は、台に乗せて熱を冷ましていきます。息の合ったお母さんたちの連携プレイであっという間に台の上は豆いっぱいに。

一粒も余すことなく大豆をすくって台に乗せたら、扇風機で熱を冷ましていきます。朝6時半からスタートした作業はまもなく10時を迎えます。大豆の熱冷ましは約30分。その間が貴重な休憩時間です。

【作業風景③】白い花を咲かせた麹菌入りの米を丁寧にほぐしていく

休憩に入る前にもうひと仕事。前日寝かせておいた麹菌入りの米を台に移し替えて、塩を混ぜ合わせる作業です。左の台で大豆の熱冷ましを促進している間に、右の台で麹菌入りの米の表面を整えていきます。

米に白いものがついているのが見えますでしょうか。これは米に麹の白い花が咲いていた証。ムロで花咲くまでゆっくりと寝かせておいた麹菌入りの米を、台の上でほぐしていきます。

塩は、海の恵みであるにがりをほどよく含んだ長崎県・五島灘の塩を使用しています。いろいろと試してみて、もっともおいしさが引き立つ塩にたどり着いたのだそう。約18キロの塩を混ぜ合わせて、休憩前の作業はいよいよ完了です。

【作業風景④】大豆と米を混ぜ合わせる

30分の休憩はあっという間に終わり、後半戦に突入です。

「ここからはもっと動きが早くなるよ」と大塚さん。休憩中の和やかな表情から後半戦に向けてきりりとした表情で話ながら、現場へと向かっていきます。

後半戦の最初に3人が行うのは、人肌の温度になった大豆に、塩を混ぜ合わせた米を合わせていく作業です。

大豆の台の表面を米できれいに覆い尽くしたら・・・

一気に混ぜ合わせていきます。

下から上へ、左から右へ。水

分を帯びた米と大豆はとても重く、切り返すのもひと苦労ですが、熟練の技で混ざり合わせていきます。

【作業風景⑤】最終工程前に翌日の下準備

大豆と米を混ぜる作業がある程度落ち着いてきたら、ここからは分担作業。飯塚さんは引き続き大豆と米を混ぜ合わせ、大塚さんはこの後に始まる味噌を擦る作業のための準備、勝村さんは翌日の大豆の準備に取りかかります。

朝のうちに洗って、研いでおいた大豆を釜に移して、翌日まで水に浸しておきます。

45キロに及ぶ米も洗って研ぎます。

じっとしていると足の裏が冷たくなるほどの寒さですが、「暑いくらいよ」と事前の準備で走り回るお母さんたち。「おいしくなぁれ」と言葉をかけながら、丁寧に作業は続けられます。

【作業風景⑤】混ぜ合わせた材料を擦って、樽に詰める

大豆と米が混ざり合わさった頃を見計らうかのように、いよいよこの日の最終工程である材料をすり潰し、樽に詰める作業が始まりました。

飯塚さんが機械のトレー部分に入れた材料を、大塚さんが適量ずつ機械の中へと入れて、杵のようなものを使ってすり潰していきます。

すり潰した材料がミンチ状になって出てきました。これが「土浦小町みそ」です。

ミンチ状になった味噌を樽に詰める作業は勝村さんが行います。

80キロ入る樽に、60キロを目安に詰めていく作業は力仕事です。休むことなくせっせと詰めていき、本日は約160キロの「土浦小町みそ」が完成しました。

樽に詰めた味噌を貯蔵庫へと移します。詰めたばかりはまだ熱を持っているため2~3日熱冷ましをしてから、1樽に対して10キロ分の塩を足し、重しをかけて寝かせます。

冬の時期に仕込む「寒仕込み」の味噌の食べ頃は9月~10月といわれ、夏の土用が明けるとその年の「土浦小町みそ」が店頭に並びます。

「味噌を食べたときにほっとしてほしいという想いで作っています」

大塚さんは朝6時半には作業場に入って大豆の火入れなどの準備をして、飯塚さん、勝村さんも7時過ぎには作業を開始します。12月から2月下旬までの真冬の間が「土浦小町みそ」の仕込み時期。今回取材させていただいた工程が、毎日休むことなく繰り返されます。

味噌を作る時期に冬を選んだのは、低い気温の中でゆっくりと味噌の発酵を促すため。味に深みが出ておいしく仕上がると大塚さんは話します。また、秋に収穫を迎える新鮮な米や大豆を原料にできるのも寒仕込みの大きな特徴です。

「お風呂に入るときにほっとするじゃないですか、『土浦小町みそ』もそんな存在になれたらいいなという想いを持って作っています」と大塚さん。

手作りの味わいにこだわった「土浦小町みそ」は、味噌汁にして味わうと「はぁ」と思わず口にしてしまうくらいのほっこり感があります。どこか懐かしいお母さんの味。メイドイン土浦の味をぜひ一度試してみて下さいませ!

<お問い合わせ先>

土浦市農業公社

住所:茨城県土浦市永井本郷入会地字離山番外1

電話:029-862-5143

<土浦小町みその主な取扱店>

小町の館

住所:茨城県土浦市小野491

電話:029-826-1002

開館時間:3~10月9:00~18:00、11~2月9:00~17:00

休館日:月曜(休館日が休日にあたる時は翌日休館)

駐車場:あり(無料)

ホームページ:http://tsuchiura-n.or.jp/access1.html

JA水郷つくば直売所

(土浦店,はすの里,新治店,霞ヶ浦店,イーアスつくば店)  

土浦在住ライター(土浦市)

土浦市在住のフリーランスの編集・ライター。海外・国内の旅行関連のガイドブックや書籍制作をはじめ、ブライダル情報誌の編集にも携わる。食べること・飲むことが好きで、趣味が興じて最近では食を中心にWEB、紙媒体などで取材執筆活動中。地元土浦の飲食パトロール、歴史やカルチャー学習も積極的に行っています。

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