【渋谷の名建築】1981年開館時の松涛美術館にタイムトリップ。白井晟一の美意識に浸る
2021年で開館40周年を迎えた松濤美術館。
美術館の設計者である白井晟一を特集した2部制の展覧会「白井晟一(しらい せいいち)入門」が開催中です。昨年会期を終えた第一部の「白井晟一クロニクル」に続き、2022年1月4日~30日開催の第二部「Back to 1981 建物公開 」に行ってきました。
渋谷の喧騒とは無縁の閑静な住宅街に佇む渋谷区立松涛美術館。その立地から設計当初から面積や高さなどの制限がかなり多かったよう。
しかし、白井晟一はそれを逆手にとって「最小で最高のもの」を目指したといいます。完成した松涛美術館について「私の全力をだし切った初めての作品」と語り、竣工2年後に逝去した白井。彼の代表作を舞台にした今展も、白井ワールドを全力で愉しめる趣向で、1981年開館当初の松涛美術館にタイムトリップしたような世界観が味わえます。
普段、松濤美術館の館内撮影はエントランスやエレベータホールなどに限られているけれど、「Back to 1981 建物公開 」中は、展示室なども撮影OK(※フラッシュ、一脚、三脚、動画、商業使用の撮影は禁止)。
美術館の中心を貫く吹抜けに架かったブリッジも特別に公開されています。
明治末期に京都で生まれた白井晟一は、独学で建築を学んだ異色のクリエイター。建築だけでなく、中公文庫のロゴデザインや本の装丁をはじめ、書も手掛けるなど非常に多才。20代の頃にドイツで哲学を学び、パリ留学時代には、同時期にパリに居た林芙美子の思い人でもあったのだとか。
地下から4階層をつなぐ螺旋階段もフォトジェニック。
白井晟一はこの優美な曲線にもいたくこだわったそう。
地下1階の第1展示室は、今展開催中のみ
噴水側の窓が姿を現し、竣工当時の状態に
近づけてあります、普段は展示物や仕切りがあるので
この見事な楕円形の空間を俯瞰できないけれど、
今回はこの宇宙的な空間をそのものをじっくり堪能。
地下2階では普段は非公開の茶室も公開。
白井晟一はこの茶室がお気に入りだったようで、生前は美術館に訪れるたびに茶室でくつろいでいたのだとか。
地下からエレベータで地上2階へ。
外光が優しくしみ込む吹抜けの回廊や、ゆるやかにカーブしたアーチもエレガント。
館内の至るところにあるヨーロピアンな鏡や、調度家具も白井晟一のこだわりコーディネート。
2階の第2展示室にあるサロンミューゼや
奥の特別陳列室の調度家具も白井晟一セレクション。
ヴェネツィアンヴェルベット貼りの壁に、
ブラジリアンローズウッド材の張りや柱、
スイス製のふっかりしたレザーソファー
蝋の跡が残る燭台風のスタンドライトなどなど
いずれも約40年前の姿を今に伝える配置で展示。
竣工時に白井が自身の書や愛蔵品を配置して効果を試したそうで、今展でもそのイメージが踏襲されています。
館内には松涛美術館の設計前の模型と、
実際の模型も並べて展示。
大きな違いは吹抜けの内側の窓の形状。
↓こちらが設計前の模型。よく見ると、
吹抜けの窓がウロコのようなデザインに!
↓こちらが実際の模型。
なお、今はコロナ禍で館内建築ツアーは行われておらず、
館長室も写真のみの公開になっています。
ちなみに、昨年開催の第1部「白井晟一クロニクル」では、初期の作品から、代表作のノアビルや幻の建築「原爆堂」など白井のアンビルド作品が一堂に会していました。(第1部を未見の方は詳細が記載されている図録も併せてご覧になることをおすすめします)
第2部は1月30日まで。1月25日以降は要予約なので、どうぞお見逃しなく。
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渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
アクセス::京王井の頭線「神泉駅」より徒歩約5分、JR・東急電鉄・東京メトロ「渋谷駅」より徒歩約15分
開館時間:10時~18時
渋谷区立松濤美術館 開館40周年記念
白井晟一 入門第2部/Back to 1981 建物公開
開催期間: 2022年1月4日(火)~1月30日(日)
※土・日曜日、祝日および最終週(1/25-1/30)は「日時指定制」 予約
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