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【温泉がもっと楽しくなる】湯船が変われば気分も変わる。石にタイルに木の湯船

南とりっぷ旅&グルメライター

温泉地の大浴場って、風情があっていいものですよね。お風呂に浸かったとき、湯船自体を気にかけたことはありますか。主に石やタイル、木材などが使われていて、それぞれ雰囲気や肌触り、風情までも違います。今回はそんな【湯船】の違いと楽しみ方にをお話しします。

≪高級感なら石の湯船≫

伊豆修善寺温泉 湯回廊 菊屋(静岡県)
伊豆修善寺温泉 湯回廊 菊屋(静岡県)

ホテルや旅館の大浴場で、もっとも多く出会うのが石を敷いた湯船。主に石でできたタイルを貼って造られています。
材質は高級感のある御影石を筆頭に、茶色い鉄平石や緑色の十和田石などがポピュラーです。
写真は修善寺にある旅館「菊屋」の大浴場。湯船の底に張られた石のタイルは、1枚ずつ違う形に作られた凝った造り。さすがに100年を超える老舗です。
こういうお風呂に出会えたら、高級感を楽しんでみてください。

草津温泉 望雲(群馬県)
草津温泉 望雲(群馬県)

石のタイルを敷く湯船は、温泉地の宿泊施設や大浴場のあるビジネスホテル、温浴施設などでもよく目にします。
1599年に創業した「望雲」は、日本旅館の雰囲気を残しモダンな館内を楽しめるお宿。石のタイルを使った湯船の他に、陶器のタイルを貼ったレトロな湯船などがあります。

≪コンクリート打ちっぱなし≫

某共同浴場
某共同浴場

シンプルで低価格。空色の塗料が塗られたコンクリートの湯船です。そのうえ洗い場もコンクリート。ゆえあってどちらのお風呂とは明かせませんが、とある共同浴場です。
こうしたローカルな共同浴場は主に地元の人が使うため、実用性重視で作られていることがよくあります。
ちなみに、湯船の黒い菱形は、排水口にゴムマットを敷いてふさいでいるという簡単な仕掛け。生活感あふれるお風呂場です。

≪タイルのお風呂はレトロ感満点≫

梅小路ポテル京都(京都府)
梅小路ポテル京都(京都府)

レトロな雰囲気をたっぷり味わうのなら、だんぜんタイルのお風呂です!古い旅館や共同浴場のほか、タイルの湯船によく出会うのが銭湯です。
タイルの床や湯船は滑り止めの役目も果たします。そのためお風呂場の床がタイル張りになっている家庭は多いはず。
写真は2020年10月に開業したホテル「梅小路ポテル京都」の銭湯風大浴場。湯船も壁も、床までも、様々な色や形をした陶器のタイルが貼られます。
京都には今も銭湯文化が根付いていて、全国から銭湯ファンがやってきます。そんな京都の銭湯を再現したのがこのお風呂。
レトロでノスタルジックな雰囲気は見飽きることがありません。

川湯公衆浴場(北海道)
川湯公衆浴場(北海道)

北海道東部の弟子屈町。川湯温泉にある古い共同浴場の湯船です。泉質は強酸性の硫黄泉で、“北の草津” と言われるほどの名湯です。
このお風呂場のタイルがまた味があるんです。割れたり、欠けたり、はがれたり。タイルの上に色や形が違うタイルを盛って補修していてデコボコだったり。さらに床を歩くと、抜けたタイルを踏んづけたり。湯船の底もまだら模様。ひと言でいえばボロ湯。
でも、地元の人達に愛される現役バリバリのお風呂場。また入りたい湯の筆頭です。

≪木の湯舟は優しい感触≫

草津温泉 白旗の湯(群馬県)
草津温泉 白旗の湯(群馬県)

なかなか出会う機会が少ないですが、個人的には一番好きなのが木の湯船。
木材は固い素材ですが、湯船の底を手で触れると、ほんのわずかお湯にふやけて繊細な柔らかさを感じられるんです。お尻も優しい木の触れ心地。石やタイルとは違うこの微妙な柔らかさは木材ならでは。
耐水性のある青森ヒバやヒノキ、赤松などが使われ、関西では槇(マキ)、特に高野槇(コウヤマキ)がいいとされています。
写真は草津温泉にある無料の共同浴場「白旗の湯」の男湯。熱湯と激熱の2つの湯船があって、これは激熱のほう。
湯船も床も木造で、ここに入ると「ああ、木の湯船っていいなぁ」って思います。……熱さを必死に我慢しながら。

酸ヶ湯温泉旅館(青森県)
酸ヶ湯温泉旅館(青森県)

青森の八甲田山中にある一軒宿「酸ヶ湯温泉旅館」の大浴場「千人風呂」。写真は2つある湯船のひとつで、湯船の底から温泉が沸く “足元湧出” の「熱の湯」です。
写真は7月に行われる丑湯祭の様子。東北地方や北関東では、土用の丑の日に薬湯などに入ると、夏バテ防止や疲労回復になると言われ、地域によってはお祭りをしています。
酸ケ湯温泉では夜になると熱の湯のお湯を全て抜き、宿泊客に披露します。そして新しいお湯がたまった深夜の2時に一番湯に入る、というイベントを行います。お湯を抜いた湯船を見られるのもこの日のみ!
湯船の底は “すのこ状” になっていて、木と木の隙間からお湯が湧き上がってくる仕組みです。
この湯船、木が白くて新しそうに見えますが、実は40年ほどたっているそうです。
木材は空気にふれて水が染みると真っ黒になり、徐々にもろくなっていきますが、水や温泉に浸かったままだとこのように新品同様。時には数百年ももつことがあるのだとか。
湯船って、いろいろな物語があるんですね。

≪温泉入浴で湯船を楽しむ≫

伊豆修善寺温泉 湯回廊 菊屋(静岡県)
伊豆修善寺温泉 湯回廊 菊屋(静岡県)

こちらは石の湯船でも紹介した「菊屋」にある別のお風呂場。石造りのフチには、宿の名前にちなんで菊の模様が彫られています。
こんなふうに宿の温泉は、ただお風呂を楽しむだけではなく、見て、浸かって、触って、踏んづけて?、楽しむことができるんです。
今度温泉に入ったら、湯船にも注意を向けてみてください。気分がグッと高まりますよ!

旅&グルメライター

草津温泉にどっぷりハマって、自動車雑誌の編集者から旅ライターに転身。観光、温泉、グルメにスイーツ。旅先のお役立ち情報をお知らせします。特に、その観光地の良さはどこ?このホテルやお宿のいいところはナニ?このスイーツの美味しさの秘訣は?そんな具合いに、みなさんの気になるポイントを一歩も二歩も踏み込んで紹介します。

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