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SDGsで気になるオーガニックの日本茶!有機栽培の日本茶は何が違うの?生産者さんに聞いてみました

日本茶ナビゲーター Tomoko日本茶インストラクター

オーガニックの農作物など食品に付いている有機JAS認証マーク

日本茶にもこのマークが付いているものがあります。

このマークが付いていると安心感がある、と手に取ったことのある方も多いのではないでしょうか。

ちょうど今飲んでいる「べにふうき緑茶」(前回の記事)が今季から有機JAS認証マーク付きになっていたので、日本茶では実際のところどういうものか、生産から販売まで手掛ける「釜茶房まえづる」の前鶴さんに伺いました。

「有機栽培認証」って何?

いろいろな農作物や食品についている「有機JAS認証」マーク。

近年日本茶でも少しずつ増えてきて、よく見かけるようになりました。

では実際にどういうものに付けられているのでしょう。

有機JAS認証を受けたもののみ「有機JAS認証マーク」を付けることができます
有機JAS認証を受けたもののみ「有機JAS認証マーク」を付けることができます

実は、この有機認証を取得するのは日本茶においても簡単なことではありません。

NPO法人日本茶インストラクター協会発行の『日本茶インストラクター講座第2巻』によると、

有機農産物は有機JAS規格として位置づけられ、有機認証を受けたぼ上から基準に従い生産された生葉を、有機加工食品の製造基準に従い製造されたものが有機茶として販売できる。
3年以上化学合成農薬、化学合成肥料及び化学合成土壌改良資材を使用しない栽培方法で、しかも慣行栽培ぼ場から肥料や農薬の飛散がない茶園で生産された生葉であること。製造や包装の工程で有機農産物でないものと混合しないこと。

とあります。

有機栽培を目指してから3年以上かかり、さらには加工も認証された場所で行う必要があります。

マイナビ農業(外部リンク)によると、

認証を受けるためには「生産工程管理記録」として、生産から出荷までの工程を日々記録しなければなりません。登録認証機関の検査員は、それらの書類審査と圃場の実地検査によって、有機JASに適した生産がされていると認定します。それによって有機JAS認証を受けることができるのです。なお、検査・認定・認証は、毎年行われています。

一度認証されたらそれでOKというのではなく、毎年検査・認定・認証が必要なのです。

栽培に手間がかかる以上に、書類や検査にも労力がかかるということでしょうか。

農水省のホームページ(外部リンク)には詳しい資料がありますが専門的な内容なので気になる方は読んでみてください。

生産者さんにインタビュー

実際に日本茶の場合の有機栽培はどのようなものか、生産者の前鶴さんにお聞きしました。

有機栽培とは農薬や化学肥料を一切使用せず植物由来の肥料だけを使用して栽培する方法です。
3年間この栽培方法で管理して公的な有機認証機関で厳しい審査に通らないと取得できません。
認証後も毎年認証機関の厳しい審査があります。
しかもお茶は他の農産物と違い2種類の有機認証があります。

2種類も認証が必要だと、書類なども二倍必要ですね・・・。大変そうです。

野菜などの農産物はそのまま消費者の手に渡りますがお茶は加工して初めて商品になります。
ほとんどのお茶農家は生葉を加工して荒茶(半製品)の段階で茶市場とか問屋さんに販売するので有機生産の認証でいいのですが、自社で消費者に直接販売する場合加工認証も必要になります。その分経費もかかります。

茶葉を加工する場所も、有機栽培でない物が混ざらないように厳しく検査・認証が必要なのですね。

ところで、栽培期間中に農薬を使わないと、茶の木が害虫や病気の影響を受けやすいのではないでしょうか?また、肥料についてはどのようにされていますか?

農薬を使わないことで害虫などとの戦いになるのですが、我慢して栽培していると害虫の天敵、いわゆる益虫も増えてくるのである程度の害虫は駆除出来ます。
肥料は有機栽培用の肥料もありますし、独自でぼかし肥料などそれぞれのお茶農家で工夫しています。

上手く自然のサイクルができるのですね。とても理想的です!

しかし、1番のネックは雑草処理です。
当園も有機栽培に取り組むまでは除草剤に頼ってました。
しかし除草剤を使用することによる色々な弊害を知り、スッパリやめて夏場になればひたすら草刈機で除草作業をしています。

夏の暑い時期、草刈り機で刈っても刈っても伸びてくる雑草との闘い・・・大変そうです。でもその努力が有機栽培には必要なのですね。

では、実際に有機栽培とそうでないお茶の違いはどう感じていらっしゃいますか?

これはあくまでも私の主観ですが、普通栽培のお茶は周りをしっかりガードして温室でぬくぬくと育てたおぼっちゃま。その分お茶も上品で美味しい。
有機栽培茶は一切の甘やかしさを許さずお茶の木自体でたくましく成長させる。その為味もしっかり強調、ハッキリした味わい。
という印象です。私の主観なので、沢山の有機栽培のお茶農家さんがいらっしゃるので皆さんの意見も聞いてみたいです。

有機栽培の方が野性味あふれるイメージ、といったところでしょうか。

前鶴さん、詳しくご回答いただき、ありがとうございました!

海外ではオーガニックのお茶が人気!

日本でも有機栽培の商品を扱うお店が増えてきて、日本茶にもその流れを感じています。

特に欧米では健康志向もありオーガニックの日本茶が人気だそうで、私も時々問い合わせを受けることがあります。日本からの輸出もオーガニックのものが特に増えているようです。

手間がかかったり、認証の手続きや費用などの分、有機栽培ではないものと比べるとどうしても割高なものが多いですが、安心安全を求める消費者からは高い評価を得ていることがうかがえます。

SDGsにも配慮した姿勢、持続可能な生産が注目される今、少しずつその輪が広がっていって、数十年後には有機栽培が当たり前になっているかもしれません。

今後も注目です!

有機JAS認証付きのべにふうき緑茶(釜炒り茶)。飲みやすいながら力強さも感じます。
有機JAS認証付きのべにふうき緑茶(釜炒り茶)。飲みやすいながら力強さも感じます。

今回お話を伺った「釜茶房まえづる」さんのホームページはこちら(外部リンク)

現在はすべてのお茶が有機認証を受けていませんが、移行栽培中のものもあり、数年後には全てが有機栽培認証となるそうです。

日本茶インストラクター

【お茶の世界の扉を開く日本茶ナビゲーター】 日本茶専門店で7年勤務、茶道歴25年の経験を活かし、大手百貨店や外国の大学等でのワークショップで国内外2,000名以上の方に日本茶の魅力を伝える。美味しい日本茶とそれにまつわる伝統工芸品を後世にも繋いでいきたい、日本茶への愛と想いで日本茶情報を発信中。日本茶の商品開発やカフェ・飲食店での日本茶コーディネートや淹れ方指導。NPO法人日本茶インストラクター協会認定日本茶インストラクター(2004年取得)。

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