外国人やZ世代からも熱視線の日本茶の最新トレンドを分析!日本茶の「香り」と「多様性」に注目
「何これ!おいしい!!!」
日本茶ってこういうものでしょ、という固定概念や先入観が覆される経験をしたことがありますか?
私は二十歳のころそのような経験をして、それまでどちらかというと苦手だった日本茶に興味を持つきっかけになりました。
外国人やZ世代にとって日本茶が「新しいもの」として受け入れられる時代。
11月24日から26日まで渋谷ヒカリエで開催された新しい形式の品評会「日本茶AWARD TOKYO TEA PARTY2023」の受賞茶の数々、その場で日本茶を選び楽しむ外国人や若い方にインタビューした回答、そしてインバウンド向けのワークショップなどで得た感想を元に、日本茶の最新トレンドを独自に考察、分析します!
海外から見た日本茶
今回の日本茶AWARDの会場では外国人の来場者も例年より多く、日本茶への注目度が高まっているのではないかと感じました。
写真のフランス人のお二人はフランスの大学で日本語を専攻し現在は日本で働いているとのこと。
この日は日本茶の選び方セミナーを受講し、会場で茶葉を選んでいるところをインタビューしました。
フランスではパリやリヨンなど主要な都市には日本茶を扱うお店が増えていること、抹茶はもちろんリーフの茶葉も様々な種類が購入できるそう。
ヨーロッパの中ではフランスが一番日本茶の普及が進んでいるようです。
毎年開かれているジャパンエキスポでは茶道などの日本文化紹介もあり、これまでも食文化の交流も盛んだったことが今に繋がっているのではないでしょうか。
ヨーロッパ諸国では?
つい先日、ヨーロッパ各国の若者達に抹茶と茶道を紹介するワークショップを開く機会がありました。
アイスランド、エストニア、ラトビアなどの国からの参加もあり、母国でも抹茶ラテを飲んだり抹茶スイーツを食べた経験のある方が多かったのですが、本物のストレートの抹茶はほとんどの人が初めてでした。
飲んだ反応は上々。
元々抹茶を飲んだことがある人も「こんなにおいしいのは初めて!」と喜び、初めて飲んだ人の中には「茶道の長い歴史と文化的背景を知り、母国の家族や友人たちにそれを共有したい!」と日本でたくさん抹茶を購入して帰国した人もいたのだそう。
抹茶はそのわかりやすい見た目と味、文化的背景もあいまって、とても受け入れられやすいものだと感じました。
和菓子と抹茶の後に、普段日本人がよく飲むお茶の一例としてほうじ茶もお出ししました。
ハレとケなら、抹茶がハレ、ほうじ茶がケ、となります。
ほうじ茶は日常のお茶で、緑茶を焙煎したもので低カフェインであることも説明しました。
北米では抹茶の次に広まりつつあるほうじ茶ですが、ヨーロッパの若い方達でほうじ茶を飲んだことがある人はほとんどおらず、今回が初めての体験だったようです。
「香りがいい!」「軽い味でとてもおいしい!」ととても好評でした。
ほうじ茶はヨーロッパではまだ広まっていないようですが、今後の伸びしろを感じます。
その他、私の経験した限りでは、うま味や甘味を重視する煎茶や玉露も食文化の背景を鑑みるとフランス、ベルギー、イタリアなどの国では受け入れられやすいのではと感じました。
今後の海外での日本茶の広まりも楽しみです。
抹茶の人気と輸出
海外での抹茶の人気は10年前よりさらに熱気を帯びています。
特にアメリカ、カナダでは、主要な都市には抹茶のみならず先述のほうじ茶や煎茶が楽しめる専門店も増えてきているとか。
次いでアジア諸国でもその人気は広がってきています。
中国では抹茶は日本茶を象徴するものとしてとらえられているようで、抹茶入り煎茶や抹茶入り玄米茶を日本のお土産にしている人もいるそうです。
韓国でも抹茶はスイーツを中心に人気のようです。
台湾では抹茶が飲めるお店や和菓子店があったり、最近は煎茶などのリーフの日本茶の輸出も増えているそうです。
他に、シンガポールではタイでは本格的な抹茶が飲めるお店ができたり、日本で抹茶をたくさん購入して帰る観光客も多いとか。
海外でも抹茶ラテやスイーツを切り口に、抹茶そのものや煎茶などのリーフの日本茶にも親しむ人が増えてきたのではと推察します。
日本茶の輸出
静岡新聞の記事によると、2022年度の輸出額は粉末状の日本茶が全体の7割近くで、アメリカがその大半を占めているのだそうです。
こちらの内容を含む詳しいデータはあなたの静岡新聞2023.2.14「緑茶輸出 最高を更新 北米やアジア向け好調 伸びは鈍化、先行き不透明」(外部サイト)で確認できます。
また、2023年度の前期では、
とあり、
抹茶の人気のすごさがうかがえます。
こちらのデータもあなたの静岡新聞2023.7.29「緑茶輸出額12・6%増 抹茶堅調、円安追い風 23年上半期の静岡県内」(外部サイト)で見ることができます。
日本の若者には?
大学生の姪は抹茶ラテや抹茶スイーツが好きなようですが、まだストレートの抹茶や煎茶などのリーフの日本茶にはたどり着いていないようです。
しかし、個々を尊重する社会の中でZ世代の嗜好の多様性はお茶などの飲料に限らずとても興味深いものがあります。
11月に渋谷で開催された日本茶のイベント会場でZ世代の方にもインタビューしてみたところ、紅茶や中国茶から日本茶へと興味が移ってきた方や、ワインについて学ぶ予定だが日本茶にも興味があり茶葉を探しに来たという方もいたり。
昨今は、ペットボトルが主流になり急須のない家庭も多く、また、日本茶が身近にありすぎてその魅力に気づかなかった層も、その両者にとって一周回って日本茶が「新しいもの」として受け入れられつつあるのではないかと思われます。
会場を運営する方や日本茶専門店などの方にも伺ったところ、最近はお店や日本茶イベントでも若い方が「茶葉を選びに来ました!」と来られることが多くなったとおっしゃっていました。
最近は濃厚なうま味が苦手な人も増えていると聞いたこともありますが、好みの多様化が進んでいるという印象も受けます。
新感覚の日本茶も続々登場!
新しい日本茶の括りの中では、特に、日本茶のフレーバーティーや酸化発酵による香りのお茶に注目が集まっている印象でした。
昨年のフレーバーティー部門の受賞茶にはバタフライピー入り玄米茶があり、見た目はブルーでも味は軽やかな玄米茶で、意外性があり面白いと人気でした。
今年は日本茶輸出組合理事長賞に輝いたサングラムの「浜茄子(はまなす)紅茶」がテイスティング会場でも人気を集めていました。
茶葉の見た目も美しく、お茶の味自体も甘茶(アマチャという植物の葉)を入れることでほんのりとした自然な甘味を感じることができます。
また、摘んだ生葉を酸化発酵させて作る「萎凋(いちょう)茶」という分類では、和紅茶をはじめ萎凋煎茶、萎凋釜炒り茶、萎凋ほうじ茶など、葉が萎(しお)れる過程で茶葉から発生するフラワリーな香りや柑橘系の香りを活かした日本茶も人気です。
日本茶AWARD紅茶部門プラチナ賞受賞の牧之原山本園の「ほうじ香り紅茶」も新感覚の和紅茶としてとても興味深いです。
地方の番茶にも注目!
今年は各地で地方の番茶を特集したイベントが多く、今回の日本茶AWARDイベント会場でも地方番茶のワークショップが多数開催されていました。
固い葉を蒸して天日干しで乾燥させたり乳酸発酵させるなど独特の製法で香りや味に特徴がある地方番茶。
全国的には知名度も低く狭い地域での地産地消だったものが、古くて新しい日本茶として再発見され注目されています。
後継者不足の地域も多いと言われる地方番茶の未来への取り組みを応援していきたいです。
日本茶AWARDプラチナ賞の受賞者を一部ご紹介
ここで、前回の記事に紹介しきれなかった日本茶AWARDプラチナ賞の受賞者の方々をご紹介します。
萎凋煎茶部門プラチナ賞「丸福つゆひかり」の丸福製茶株式会社さん
合組(ブレンド)茶部門プラチナ賞「日南みどり とろ吟煎」の株式会社井ヶ田製茶北郷茶園さん
釜炒り茶部門プラチナ賞「高千穂釜炒り茶 朝霧しずく」の株式会社谷岩茶舗さん
紅茶部門プラチナ賞「カクホリ 紅茶 べにふうき」の鹿児島堀口製茶有限会社さん
烏龍茶部門プラチナ賞「矢部烏龍茶 香駿 春摘み」のお茶の千代乃園さん
深蒸し煎茶部門プラチナ賞「虹の麓」の株式会社山喜製茶組合さん
後発酵茶部門プラチナ賞「La香寿 2023」の株式会社丸山園本店さん
会場で試飲する方々が、クオリティの高い多様な日本茶の香りと味に「おいしい!」「香りがすごい!」と口々に感想を言う姿がたくさん見受けられました。
※今回、時間の都合でお話をうかがえなかった受賞者の方々もいらっしゃいますが、こちらの日本茶AWARD2023のサイト(外部サイト)からプラチナ賞の全受賞者がご覧いただけます。
今後の展望はいかに?
日本茶AWARDは今年の日本茶のトレンドがわかる品評会です。
伝統的なものから革新的なものまで幅広く沢山の茶葉が揃う会場では、選択肢が多く悩みながら選ぶ方の姿も多く、悩むことすらも楽しんでいらっしゃる様子でした。
多様化、多様性、個性を尊重する形が世の中で標準となった今、日本茶にもその流れが来ていると感じました。
さて、来年はどんなお茶が登場するのか、今から楽しみでなりません。
そしてコロナが明け、今後の海外への展開も目が離せません。