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温泉には名前があるのを知っていますか?

温泉旅バカひかさ温泉入浴指導員、YouTube動画クリエイター

記事を開いてくださり、ありがとうございます。温泉バカひかさでございます。

さて、今回のテーマは「温泉の名前」。ちなみに〇〇温泉という方のお名前ではございません。温泉には「泉質名」と呼ばれる名前が存在するのです。今回のこの記事では、今後温泉に行ったら気になってしまうそんな温泉の名前を話をしていきます。

温泉の名前の例

はじめに、どんな名前がついているのかを皆さんにご覧いただきます。では、どのような名前があるのか?さまざまな温泉地を例に挙げてみましょう。

【草津温泉(白旗の湯) 】酸性・含硫黄ーアルミニウムー硫酸塩・塩化物温泉
【東京黒湯(改正湯)  】ナトリウムー炭酸水素塩冷鉱泉
【平湯温泉(ひらゆの森)】カルシウム・ナトリウム・マグネシウムー炭酸水素塩・塩化物泉
【有馬温泉(金の湯)  】含鉄ーナトリウムー塩化物強塩温泉
【別府温泉(竹瓦温泉) 】ナトリウム・カルシウム・マグネシウムー塩化物・炭酸水素塩温泉

これらは「泉質名」と呼ばれるものです。しかし、ご覧いただいたように、施設によってバラバラであり、しかも同じ物質名でも順番が違うということもあるわけです。なぜこのようなことになるのか?徹底的に解説していきます。

温泉には2種類ある。

さて、温泉の名前をご覧いただきましたが、そもそも温泉は大きく2つに分けることができます。「名前のつく温泉」と「名前のつかない温泉」です。つまり、温泉には必ず名前がつくわけではないのです。

「名前のつく温泉」とは、温泉界では「療養泉」と言います。名前の通り、病の療養を目的として使用ができる温泉のことを指します。「名前のつかない温泉」とは、療養泉ではない温泉を指します。

療養泉とは

実は「鉱泉分析指針」という環境省が出している指針があります。この分析指針に従って泉質名をつけていくことになります。その中には「温泉」とその上位互換「療養泉」の定義が書かれています。温泉は温泉法第二条に定められています。

温泉法第二条 
この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。

これに該当するものは全て「温泉」です。(今回は具体的な別表は割愛します。)一方、療養泉は、その温泉の中でもさらに厳しい条件を満たした温泉を指します。

療養泉の定義
療養泉の定義

上記の条件のいずれかに当てはまるものが療養泉となります。療養泉となれば、温泉に名前がつくことになります。一方、これに満たない温泉は「療養泉ではない名前のつかない温泉」となるわけです。

療養泉の種類

泉質名をつける前に、みなさんには療養泉の種類を知っていただく必要があります。療養泉に認定される条件はお伝えしましたが、療養泉はさらに10種類に分けることができるのです。

<単純温泉> 単純温泉
<塩類泉>  塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉
<特殊成分> 酸性泉、含硫黄泉、含二酸化炭素泉、含放射能泉、含鉄泉、含よう素泉

療養泉の泉質名がつく条件
療養泉の泉質名がつく条件

なお、上記の表以外に細かな泉質名があったり、細かな条件があったりしますが、今回は省略しています。この知識が必要になってきます。

名前の付け方

さて、いよいよ名前の付け方に入ります。まず、泉質名の書き方は

①特殊成分ー②陽イオン・③陰イオンー④塩類泉

という形で書くことになっています。

①特殊成分

特殊成分とは、酸性泉、含硫黄泉、含二酸化炭素泉、含放射能泉、含鉄泉、含よう素泉のことで、表記は次の順番で書くことになっています。

①酸性泉 ②含硫黄泉 ③含二酸化炭素泉 ④含放射能泉 ⑤含鉄泉 ⑥含よう素泉

例えば、複数の特殊成分を持つ場合には、「酸性・含硫黄ー陽イオンー陰イオン」という表記になります。

②陽イオン

温泉分析書には、温泉1kg中に含まれる物質の量が陽イオンと陰イオンで区別して記載されています。その記載の際の多くでは、「mg」「mval」「mval%」というものがあります。mgはそのまま温泉1kg中に含まれる物質の量ということになりますが、mvalは温泉1kg中に含まれるイオン当数を1000分の1にしたものです。ただ、これらは使いません。

問題はmval%で、全体のイオンの中でその成分のイオンの持つ電気の素単位の数がどのくらいの比率を示すかを表したものになります。この数字が20%以上の物質名を%が高い順に並べることになっています。

例えば、陽イオンはナトリウムイオンが30%、カルシウムイオンが22%の場合には、

「特殊成分ーナトリウム・カルシウムー陰イオン」という名前になります。

③陰イオン

陰イオンも陽イオンと同じようにmval%が20%以上の物質名を%が高い順に並べることになっています。また、ここで記載する場合は塩類泉(塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉)の名称で書きます。

例えば、陰イオンは塩化物イオンが30%、炭酸水素イオンが23%の場合には、

「特殊成分ー陽イオンー塩化物・炭酸水素塩泉」という名前になります。

④温度

最後に温度のルールです。泉質名の最後を「泉」ではなく、「温泉」「高温泉」「冷鉱泉」というような表記が見られます。これらは温度によるものです。

温度は次のように区別します。

高温泉…42度以上
温 泉…34〜42度未満
低温泉…25〜34度未満
冷鉱泉…25度未満

ただし、これについては、温泉施設というか分析した人によって表記が異なるようで、温度に関係なく〇〇泉とされているところもあります。

ちなみに

泉質名は上記以外にもさまざまな表記があります(単純硫黄泉、強塩泉など)。そこはとても深い世界で、ルールを学んでいくと本当に面白いものです。ぜひ興味を持ってくださった方は、泉質名の付け方を調べてみてくださいね!

名前のない温泉にも名前がある!?

最後に、名前のない温泉にも名前がある話をします。確かに療養泉でない場合には泉質名がつかないことになります。その場合でも、泉質名の部分には表記があります。例として、武田尾温泉元湯の泉質名表記を記します。

温泉法第二条の別表に規定するふっ化物イオン(F-)の項により温泉に適合する。ただし療養泉には該当しないので泉質名はない。

長い!!でも、こういうことになります。

温泉法で定める温泉の定義に必要な条件のどれを満たしているのかを明記にすることになっています。ただし、これを見られるのは相当レアケースかと勝手に思っています。確かに泉質としては療養泉に敵わないところはあるかもしれませんが、このような泉質名を見つけられたあなたは相当ラッキーなのではないでしょうか。

まとめ

ということで、今回は温泉の名前(泉質名)の付け方を書かせていただきました。いかがでしたか?内容がマニアックで難しかったかもしれませんが、温泉の名前がこれだけ深いということは知っていただけたと思いますので、今後温泉に入る際にはぜひ、脱衣所等に掲示されている温泉分析書の泉質名の欄をご覧いただければと思います。

それではまた次の記事でお会いしましょう!ご覧いただきありがとうございました。

温泉入浴指導員、YouTube動画クリエイター

温泉入浴指導員、温泉ソムリエ、温泉保養士、温泉観光士の温泉バカです。YouTubeチャンネル「温泉旅バカひかさ」「マイ政経予備校」で活動しています。温泉については、温泉分析書を正しく読み、その人にあった入浴法をアドバイスできるように勉強中です。

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