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「前と言ってることが違う…」上司に我慢してはいけない理由

太田章代新人育成トレーナー

東京のSMBCコンサルティング様のアサーティブ・コミュニケーション研修の講師をする機会がありました。「アサーティブ・コミュニケーション」とは、「自分と相手を尊重しながら、自分の意見や気持ちを表現する」コミュニケーション方法です。

研修の場で、20代後半の男性からこんな発言がありました。

「うちの上司は、その時によって言うことがコロコロ変わるんです。いつものことだと慣れてしまって、何も言わずに受け流しています」

実は、このような相談は珍しいことではありません。上司の言うことがその場によって変わると、「結局どうすれば?」と部下は困ってしまいますね。

そこで、今回は、「言うことがコロコロ変わる上司」に対して、どう対応したらいいのかをご紹介します。

前と言っていることが違うときに「NGな対応法」

まずは、「NGな対応法」についてご紹介します。

何も言わず、我慢する「我慢型」

「上司はそういう人」「言ってもしょうがない」と諦めてしまったり、衝突を避けるあまり何も言わないのはNGです。

自分が我慢すれば済むことと考えているかもしれませんが、知らず知らずにストレスを溜めることになります。そして、自分の考えを表に出さずにいるうちに、周囲からは「何を考えているのかわからない人」だと、思われてしまうのです。

感情的に考えを伝える「主張型」

「この前と言っていることが変わっています!」「以前は、こう言っていました!」と、自分の考えを感情的にそのままぶつけてしまうのはNGです。

自分自身のストレスはなくなりますが、上司の気分を害してしまいます。ストレートな物言いは、上司との人間関係を悪化させる危険性があります。

こうしよう!おすすめする対応法

それでは、上司の言っていることが変わったときには、どうすればいいのでしょうか。

そこで、有用なのが「アサーティブ・コミュニケーション」です。つまり、「自分自身と上司の気持ちを、どちらも尊重できるコミュニケーション」です。

ベストな対応は、相手の状況や心情も考慮に入れた上で、自分の心情も伝えることです。上司の話を受け入れた上で、自分の意見も伝えるようにすると、相互の理解が深まり、より良い人間関係を築くことができるのです。

下記のようにコミュニケーションを図ってみましょう。

・自分の気持ちを上司に伝えて理解してもらおう

・状況の変化で言うことが変わるかもしれないから確認しよう

・上司は何か理由があって言うことを変えたのかもしれない

・上司がこのように言う理由がわからないから聞いてみよう

・自分の理解が足りないのかもしれない

自分と上司の気持ちを尊重する「OKな対応フレーズ」3選

では、「上司が以前と言うことを変えた」場合に、自分と上司の気持ちをどちらも尊重して伝えるための具体的なフレーズをご紹介します。

これらのフレーズを伝える時は、感情的にならず、落ち着いて話をしてください。3つのフレーズを紹介しますので、状況に応じて選んでくださいね。

<想定ケース>

以前の朝礼で、「下半期は値引きをしない方針です」と話していた上司。その方針に則って営業をしていたが、契約を逃した時に、「今後は値引きをして契約を取りなさい」と上司から言われた。

「私の聞き間違いかもしれませんが」

上司も人間です。「前に言ったことをただ忘れている」ということもあり得ます。このフレーズは、上司がもし忘れていたとしても、恥をかかせないように気を配った伝え方です。最初に「承知しました」と言うことで、上司は自分の意見を受け入れてくれたと感じます。

例:「承知しました。私の聞き間違いかもしれませんが、確か以前に値引きはしない方針だとおっしゃっていたと思います。今後は値引きも考えてもよいのでしょうか」

「理由を教えていただけないでしょうか」

特に理由もなく、言うことを変える上司もいます。上司を問い詰める必要はありませんが、考えの変わった理由を聞けば、自分でも納得して仕事に臨めるでしょう。

例:「承知しました。ところで、前に朝礼で下半期は値引きをしない方針と伺いました。現在の方針を確認したいので、値引きをしても差し支えない理由を教えていただけませんか」

「承知しました。ところで~」

接続詞として「でも」「しかし」を使ってしまうと、反論されたと感じるので、「ところで」を使います。

例:「承知しました。今後は値引きをして契約が取れるようにします。ところで、以前朝礼で値引きをしない方針だとおっしゃっていましたが、変更でよろしいでしょうか」

まとめ

言うことがコロコロ変わる上司に対する、「NGな対応」「OKな対応」は以下の通りです。

「NGな対応」…何も言わず、ストレスを溜める。

自分の意見をストレートに伝えて上司の気分を害する。

「OKな対応」…上司の気持ちを汲み取り、自分の気持ちも冷静に伝える。

上司に不満があっても、上司そのものを変えることは不可能です。自分の気持ちを上手に伝え、人間関係をスムーズにして、ストレス軽減に努めましょう。

アイキャリア株式会社

新人育成トレーナー 太田章代

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太田章代の『ビジネスコミュニケーション術』

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新人育成トレーナー

愛知県岡崎市出身。損害保険会社の事務員から広告代理店の営業職に転職。入社2年目から6年連続売上トップ。32歳で統括本部長に抜擢。50人の部下を指導する。35歳代表取締役に就任。その後、2006年人材育成事業で独立。現在まで研修&講演に2,000本以上登壇。離職率の低下や、職場のコミュニケーション改善などで成果を上げる。独自の体験型講演が好評をいただき、講師評価98.7%でリピート率も高い。研修&講演を通して【働くを楽しむ】社会創りに貢献するという使命のもと、日本全国で精力的に活動中。

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