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【冬キャベツ】はなぜ甘くなる?おいしさの理由とおすすめの食べ方を食育インストラクターが解説

racss食育インストラクター・調理師/菜園家
キャベツの旬のひとつが冬

冬はキャベツの旬!1月から3月の冬キャベツはとても美味しくなっています。

この時期のキャベツは葉が固く巻かれ、ずっしりと重たいのが特徴。寒い冬のシーズンも収穫が行われています。冬のキャベツが甘くて美味しくなるのはなぜ?

冬キャベツの糖度が上がる仕組み

冬キャベツは寒さに耐えるために体内の養分を糖に変えています。
キャベツは水分の多い野菜です。それで本来ならば0度を切ると凍り、細胞が破壊されて傷んでしまうはずです。しかし冬のキャベツは自らの中に蓄えた炭水化物を糖に変えることにより、凍結から身を守っているのです。
細胞内の糖度が高くなると凍る温度が下がるので、キャベツは凍らずにいられるというわけです。科学的には「凝固点降下」と呼ばれる現象です。
この現象は、ほうれん草や大根、人参などの冬の野菜全般で起きています。冬野菜が甘くて美味しいと言われるのはこういう仕組みだったのですね。
夏のキャベツの糖度が7度から8度に対して冬キャベツは糖度10度以上に。これは酸味の少ない果物でいうとスイカと同じくらい。甘さが想像できるでしょうか。

特別に甘い雪の下キャベツとは

ところで、冬キャベツの中でも美味しくなる特別なキャベツが「雪の下キャベツ」です。北海道や、新潟県、長野県、福島県など積雪量の多い地域で収穫されています。雪の中から掘り出すのは農家の方にとって重労働ですが、貴重な甘さを味わえるキャベツとあって大人気。お店に出すたびに売り切れ必至なんです。

北海道の越冬キャベツとは

北海道の雪の下キャベツは、晩秋に収穫したものを雪の中で保存してから掘り出したキャベツで、和寒(わっさむ)町の「和寒越冬キャベツ」が有名です。
雪の中は0度前後が保たれ、ぎりぎり凍らない状態をキープできる天然の冷蔵庫。外側の葉に蓄えた養分が内側に送られるため、内側に行くほど甘い、というのが雪の下キャベツの特徴です。さらに、雪の中で保存すると旨み成分のグルタミン酸が70%も増えるという美味しさの秘密があります。

長野県の雪中キャベツとは

長野県小谷(おたり)村の「雪中キャベツ」も有名です。こちらは根を切らず雪の下になっても栽培を続けたキャベツ。この場合は生育しながら低温に適応し徐々に糖度を上げていきます。そしてキャベツの苦味や渋味の原因となる硝酸イオンが抜けていくことにより、同じ糖度でもより甘みを感じやすい状態になっていきます。

糖度が高い雪の下キャベツはおつまみにもぴったり
糖度が高い雪の下キャベツはおつまみにもぴったり

雪の下では湿度が保たれるので、雪の下キャベツはパリパリとみずみずしい状態です。だから千切りキャベツはもちろん、おつまみにもなる「ちぎりキャベツ」にしても最高なんです。よく噛んで味わってみてください。

雪の下キャベツをお店で探してみよう

雪の下になったキャベツを食べてみたい!と思ったら、「越冬キャベツ」や「雪の下キャベツ」または「雪中キャベツ」として販売しているキャベツを探してくださいね。この記事では北海道と長野県のキャベツを紹介しましたが、他の地域のものも流通しています。
これらのキャベツは、外の葉がちょっと傷んだりしおれていたり、「新鮮なキャベツのイメージより随分色が白いな」と感じるかもしれません。でもそれはすべて内側に糖分を蓄えたキャベツの証拠です。とても貴重なこの時期ならではのキャベツです。見つけたらぜひ手にとってください。

固い冬キャベツのおすすめの食べ方は千切り

キャベツの千切りは生の甘さを味わえる
キャベツの千切りは生の甘さを味わえる

冬キャベツはギュッと葉が詰まっていて、春キャベツと比べると調理するときも食べるときも固いと感じるかもしれません。でも、この詰まったキャベツこそ、千切りキャベツにするのに最適なんです。
冬キャベツは外側の傷んだ葉を取り除くだけでよく、内側まで洗う必要はありません。それで葉をばらばらにせず固まりのままでキャベツの千切りができます。
冬の甘さが詰まったキャベツをぜひ生で味わってみましょう。ごま油と塩だけのシンプルな味付けはキャベツの味がよくわかっておすすめです。

冬キャベツの千切りのコツ

キャベツの繊維を断ち切る方向でカット
キャベツの繊維を断ち切る方向でカット

ただし、ひとつだけコツがあります。冬キャベツをふんわりと食べやすい千切りにするためには、カット方向をまちがえないようにしましょう。
上のイラストのように、キャベツの芯に対して直角に切ります。キャベツの繊維を断ち切ることで固めの冬キャベツでも食べやすい食感になります。

キャベツスライサーがあると便利

我が家の特大スライサー。キャベツを切るのに最適
我が家の特大スライサー。キャベツを切るのに最適

冬キャベツを丁寧にカットするのは大変ですが、スライサーで行えばスピードアップ。均一に細いカットができます。固い芯の部分を簡単に薄くスライスできるメリットも。スライサーでカットする際も、前述のカット方向を意識してみてください。
わたしは幅が14cmの大きなスライサーを愛用しています。これはキャベツにも大きな大根やカブにも使えて、出番が多い調理器具なんです。
でも、キャベツを小さく切ってから使うなら幅が10cm以下のスライサーでも大丈夫です。スライサーの幅に合わせてキャベツの幅を調整しましょう。

まとめ

糖度が増して美味しい旬の冬キャベツ。雪の下になったキャベツはさらに美味しく貴重な味わいです。加熱する料理はもちろんですが、シンプルな千切りで生でいただくのもおすすめですよ。

最後までご覧いただきありがとうございました。

***【大人の食育】***

「冬キャベツが甘い理由」についてのこの記事、いかがだったでしょうか。食材の流通について知ったり、食材を育ててみる、食材を無駄なく使い切る工夫、栄養や美味しい組み合わせを知るといった取り組みは全て「食育」に含まれます。
調理師・食育インストラクターであるracssのコラムでは、健康的な食生活につながる「大人の食育」を意識したテーマで書いています。「へぇ~なるほど、やってみようかな」「子どもたちにも伝えてみようかな」と思っていただけたら幸いです。
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食育インストラクター・調理師/菜園家

癒やされる観葉植物にはまったのち、家庭菜園を初めて早15年。宿根草とハーブや野菜、野草、山菜系野菜や小果樹を庭で栽培しています。楽しみながら育て、味わい尽くす方法を、調理師・食育インストラクター(2級)の目線から発信していきます。 北海道での家庭菜園の様子はInstagramと公式サイト「racssblog (料理+菜園づくり 食育インストラクターracssの日々の暮らし)」にて公開中。

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