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嫌われ者が今や絶滅危惧種!? 貨車駅舎の「ダルマ駅」

清水要鉄道ライター

国鉄末期、北海道・東北を中心に全国各地に設置された貨車駅舎。木造駅舎を追いやった存在として鉄道ファンからは嫌われた存在であったが、老朽化や駅の廃止で数を減らした近年はその貨車駅舎だけを取り扱った本が出版されるなど、注目を集めている。

宗谷本線 上幌延駅(廃止)
宗谷本線 上幌延駅(廃止)

昭和50年代後半、国鉄では老朽化した駅舎の建て替えに際し、貨物列車の廃止・合理化で余剰となった貨車を駅舎に転用することで経費節減を図った。転用にあたっては線路を走行するための車輪や機器類などが取り外されたほか、一部の駅では便所の設置が行われている。

飯山線 信濃平駅
飯山線 信濃平駅

貨車駅舎の設置が最も多かったのが北海道で、確認できているものだけでも30駅にのぼる。他県では、青森県で4駅、秋田県で7駅、岩手県で1駅、山形県で1駅、福島県で1駅、群馬県で4駅、千葉県で5駅、長野県で2駅、三重県で3駅、鳥取県で1駅、山口県で1駅、香川県で1駅、愛媛県で1駅、長崎県で1駅、熊本県で1駅に設置された。

名寄本線 中湧別駅跡に保存されている車掌車
名寄本線 中湧別駅跡に保存されている車掌車

貨車駅舎の素材となった貨車には色々な種類のものがあったが、特に多かったのが車掌車だ。車掌車は貨物列車の最後尾に連結され、その名の通り車掌が乗務していた車両で、人間を載せることを想定していない他の貨車よりも、居住性が良いことから、駅舎の素材に選ばれたのであろう。

留萌本線 大和田駅(廃止予定)
留萌本線 大和田駅(廃止予定)

貨車駅舎の改造内容については北海道内でも地域によって差が見られるが、旭川エリア(宗谷本線・留萌本線など)に設置されたものの場合、デッキ部分の窓が正面を残して塞がれている。正面から見ると一つ目小僧のようだ。どの駅もベージュ地に緑の帯が入った塗装だったが、JRになってからいずれも帯色が緑から水色に塗り直されている。

宗谷本線 筬島駅 外側にサイディングボードが貼られて改装された
宗谷本線 筬島駅 外側にサイディングボードが貼られて改装された

このタイプの駅舎は宗谷本線では智東、智恵文、紋穂内、恩根内、筬島、歌内、問寒別、安牛、上幌延、下沼、芦川、勇知に、留萌本線では恵比島、幌糠大和田、礼受、舎熊に、函館本線では伊納に、深名線では幌成の19駅に設置されており、北海道全体の貨車駅舎の実に3分の2近くを占める。このうち半分の10駅が廃止され、6駅が改装されたため、一つ目にベージュと水色のツートンカラーというオーソドックスな姿を留める現役の貨車駅舎は幌糠大和田の2駅のみだ。その2駅も4月1日で廃止となるため、このタイプの貨車駅舎は現役の駅舎としては消滅することになる。改装された駅舎は今後も残るとはいえ、道北を中心に一大勢力を築いたダルマ駅ももはや絶滅危惧種なのだ。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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