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手の届く贅沢品「ミドルプレミアムニーズ」の高まりに注目! アイス業界に“ちょこ”っと変化が

シズリーナ荒井アイス研究家/リサーチャー

2023年の秋は全国的に30度を超えて厳しい残暑が続きそうです。東京は88日目の真夏日となり、最多記録をさらに更新しそうです。明日から秋の空気が流れ込み30度の暑さが和らぐ見込みのなか、アイス業界では秋の味覚に今年はチョコが仲間入りします。

■秋の味覚といえば、芋・栗・カボチャだと思いますが…

 実りの秋を迎える中、記録的な猛暑で秋の味覚も熟さず影響が出ています。受粉する6月に雨が続き、“不作”な状態と先月の降水量が少なかったことと夏の猛暑が追い打ちをかけており、栗や芋などを育てる農園では、熟しきっていないため栗拾いや芋掘りなどのイベントを開園目前の農園が延期に。

■アイス業界では新作 チョコアイスがゴン攻め状態に

 安納芋や紅はるかを使った芋アイスや栗を使ったモンブランアイスまで数多く出揃うのかと思われていましたが、今年から来年にかけては新作チョコアイス(※リニューアル品を含む)が出揃うようです。

■今年のチョコアイスのポイントは「食感」「口どけ」「贅沢感」

 チョコ関連の商品といえば、毎年2月に新商品が集中するイメージを持たれていますが、アイス業界では、9月から12月にかけて新商品が発売される傾向にあります。特に、9月・10月が秋冬商品の切り替え時期と言うこともあり、新作のチョコアイス(※リニューアル品を含む)が毎年出そろいます。

【新作注目チョコアイス】
▼9月18日発売/菓子とアイスのハイブリッドスイーツ「チョコホリックモンスター」

 チョコ!チョコ!!チョコ!!!のオンパレードがこのワンカップに詰まっており、味と食感(パリッ・ゴリッ・トロ〜リ・フワッ)が楽しめるなんとも贅沢なチョコづくしアイス。

森永製菓・渾身の新作チョコアイスについて取材してきました。

森永製菓(株)冷菓マーケティング部の中村望さん
森永製菓(株)冷菓マーケティング部の中村望さん

■大人気アイス「チョコモナカジャンボ」「サンデーカップ」などの担当者でもある中村望さんが考えるミドルプレミアムニーズとは

 秋冬にかけて濃厚系の新作アイスが各社から発売される中で、お客様のニーズが、コロナ禍を経て、今秋は「ミドルプレミアムニーズ」がキーポイントになってくると分析します。

 コロナ禍を経てお客様の生活が一変し、アイスの選好理由が「自分へのご褒美日や贅沢な気分を得られるため」が増加しているため、チョコの余韻がしっかりと楽しめ、食感が良く、あと切れは良いがしっかりと贅沢感が持続する商品を開発しました。

「チョコホリックモンスター」/9月18日より絶賛発売中
「チョコホリックモンスター」/9月18日より絶賛発売中

 つまりは、森永製菓が100年以上磨いてきたチョコの製造技術を駆使し、夜に食べても背徳感あふれる贅沢なチョコアイス「チョコホリックモンスター」が完成したとのこと

「チョコホリックモンスター」側面
「チョコホリックモンスター」側面

 アイスの側面を見るとパリパリ&ゴリっと強めのダブル食感のチョコが印象的で、カップ底に充填されたラム風味のチョコソースもおいしそうです。

 実際に食べるとチョコレートアイスもコク深い仕上がりになっており、天面のブラックココアクッキーもほろ苦くアクセントになっていました。

 正直な感想としては、これだけ物性の違う4つのチョコが集まると食べている途中で味に飽きてしまいそうですが、それぞれのチョコ系素材のパーツが見事に補完し合っており、濃厚な味わいだけど重たさを感じさせないまるでチョコづくしのパフェを食べているようです。

■チョコのアイスと具材を両方楽しめるようなアイスを開発したい

森永製菓(株) 研究所 冷菓研究開発担当 蓮池 舞香さん
森永製菓(株) 研究所 冷菓研究開発担当 蓮池 舞香さん

 開発は昨年の5月からスタートし、冷菓マーケティング部へ商品のサンプルを持ち込んでから1年間で「チョコホリックモンスター」を仕上げたという。チョコのアイスと具材を両方楽しめるようなアイスを開発したい。そう語るのは冷菓研究開発担当の蓮池さん。

▼「チョコホリックモンスター」の開発で一番苦労した点とは

 挙げたらキリがないですが、あえて難しかったポイントを挙げますと、最後までアイスと菓子の両方を楽しめるアイスとチョコの黄金比を探すのに苦労しました。さらに、具材の食感やサプライズにもこだわっていまして、チョコの濃厚な味わいを感じていただきたいのですが、濃すぎてしまうと途中で食べ飽きてしまうため、本当にバランスの調整が難しかったです。

 アイス部でチョコレートの味わいを強くしてしまうとアイスに充填されたパリッとしたチョコやゴリっとした塊のチョコの味わいが感じにくくなってしまいただの歯触りのいい商品になってしまいます。我々は、アイスとチョコの両方を味わっていただきたいので、計算されたバランスを探すため100回以上試作を重ねました。

 そこで、食感だけではなくアイス部の味わいやアイス部に含まれる空気の含有量も微調整し、自信作(「チョコホリックモンスター」)を9月18日(月)に発売することができました。

 実は、アイス(冷凍下)の状態だと感じにくいカカオ感を、当社の研究により開発できたカカオマスとカカオエキス(特許取得)で、従来アイスでは表現できなかった芳醇で濃厚なカカオ感を実現、といった当社技術が詰め込まれています。

■カカオエキス(特許取得)とはなんですか?

カカオエキス(特許取得)を見る冷菓研究開発担当 蓮池さん
カカオエキス(特許取得)を見る冷菓研究開発担当 蓮池さん

 弊社のカカオエキスは、独自性のある3種類のカカオ原料から、本来は水に溶け出ない“旨みや香りを抽出し、濃縮化したもの”です。その研究は2017年からスタートし、2019年に森永製菓独自のカカオエキスが完成しました。カカオエキスを配合したアイス製品は、すでに数多く発売されています。

 本来、アイスクリームやチョコレートシロップのような水分が多く入った製品では、チョコ感やカカオ感は出しづらく、ココアっぽく薄い味になる課題がありました。 その課題を解決したのが、今回のカカオエキスであり、少量添加することで、芳醇で濃厚なカカオ感を実現することができました。

 今回の取材で、開発メンバーの「チョコ」に対する飽くなき探究心が実を結び、「チョコホリックモンスター」が生まれたと知ったら、不思議と口の中でチョコと会話ができるようになりました。(※シズリーナ荒井個人の感想です)

 250円前後の価格帯でこんな贅沢感あふれるチョコアイスも珍しく、仕事終わりやお風呂上がりなど一日を締め括るアイスとして、夜アイス=「チョコホリックモンスター」となれるのか今後の販売動向にも注目です。

取材協力:森永製菓

アイス研究家/リサーチャー

1歳1ヶ月からこれまでに食べたアイスの数は、およそ6万個以上。(初めて食べたアイスは「ガリガリ君 ソーダ味」)「アイスは単なるデザートではなく冷凍食品」であることに気がつき東京藝術大学へ進学、年間4,000種類ものアイスの食べ方を研究しイートデザイナーとして「魔法のアイスレシピ」(KADOKAWA)を出版し話題に。様々なメディアを通じて独自の視点でアイスの魅力を発信し続けるアイス評論家としても活動中。

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